ゲーム特化ブロックチェーンと通信キャリアが手を組んだ理由——Oasys 松原亮 × KDDI 舘林俊平(前編)

左から:Oasys Representative Director 松原亮氏、KDDI Web3推進部 部長 舘林俊平氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

2022年、ブロックチェーンゲーム開発スタートアップ double jump.tokyo 出身のメンバーを中心に、日本発のゲーム特化型ブロックチェーン「Oasys」のローンチが発表されました。日本を代表するセガ、スクウェア・エニックス、バンダイナムコなどに加え、gumi やNeoWizといった新興系のゲームパブリッシャーもがバリデータに名前を連ねています。

そして今年3月には、KDDIがOasysにバリデータ参画することが発表されました。ブロックチェーンゲーム(BCG)界隈では、ゲームパブリッシャーではないKDDIがバリデータ参画したことに驚きを覚えた人も少なくないのではないでしょうか。

6月の「Japan Blockchain Week」を前に、シンガポールから日本に帰国されたOasysのRepresentative Director 松原亮さんと、KDDIでWeb3時代のサービスを提供する「αU (アルファユー)」の展開をリードし、今回のバリデータ参画の立役者でもある舘林俊平さんをお招きし、両社の協力関係や、ブロックチェーンゲームの市場トレンドについてお聞きしました。

ゲームに特化したブロックチェーンを開発されているOasysさんから見て、ブロックチェーンゲームの現在の業界動向はどのように思われますか。

Oasys 松原:グローバルに見ると、今、日本に注目が集まっています。理由はFTX事件以降、アメリカでは規制が厳しくなり、ビジネスが難しくなってきていること。脱アメリカが進んできて、中国は盛り上がりつつあるんですが、中国政府はすぐに本土を解放するわけではなくて、香港を実験場にして6月ぐらいから始めようとしています。アメリカ、中国の次に大きい経済規模を誇るのは日本ですし、ゲーム会社が多くあることを考えれば頷けます。

ちょうど6月に大きいイベントである「Japan Blockchain Week(6月18日〜7月9日)」があるので、6月末にかけてたくさん日本に人が来ます。ブロックチェーンゲームとしては、日本に世界から注目が集まっています。

例えばスクウェア・エニックスさんは積極的に、新規事業でブロックチェーン事業を行っています。あとはソーシャルゲームで当てて、上場してるような会社さんたちが、こぞって皆さん作っています。また、CROOZさんが出した「PROJECT XENO」とか、1月に國光さん(元 gumi、現 Mint Town)、守安さん(元 DeNA、現 Mint Town)、真田さん(現Klab、Blocksmith)がサッカーゲームを出したりと、ソーシャルゲームを作ってきた人たちがどんどん出してきています。

そこでのトライアンドエラーがあるとは思いますが、どんどん良くなってはいるんだろうなとは思っていて、現在のフェーズとしては、ソーシャルゲームでいう「ドラコレ(ドラゴンコレクション)」のようなものがいつ出るかな、というぐらいだと思うのですよね。

まだモンスト(モンスターストライク)とかパズドラ(パズル&ドラゴンズ)ではないです。ドラコレです。グリモバ(GREE モバイル)が出したガラケーの時代です。今はブロックチェーンのコミュニティもすごく狭くて、まるで2ちゃんねるなんですよね。内輪のコミュニティですね。とはいえ、時代は進んでいるので、すぐリッチなものが作れてしまうとは思います。

Axie InfiniitySTEPNで体験した「もっとゲームは面白くあるべき」というのも、それがリッチな体験なのかというと必ずしもそうではないんですが、(その考えに基づいて)今一通りやってみて、改めて「本当は何がブロックチェーンならではの面白さなのか」という議論が進むフェーズだと思っています。今は真っ当な進化というか、普通に面白いゲームを作れる人たちが、試行錯誤でブロックチェーンゲームを出してきています。

Axie Infinity が出たときにはプレーヤーのギルドが生まれ、そのギルドのコミュニティがある東南アジアでブロックチェーンゲームが賑やかになったように思いますが、むしろ、日本が注目を集めているんですか。

Oasys 松原:Axie 型でいうと、稼げないと成り立たないのですよね。サステナブルにやり続けるには外からお金を入れ続ける必要があって、それができないのであれば、稼げる人も一部だけという状態になります。

普通のゲームと違い、最後やめるときに「売ったらいくらか回収できる」ぐらいじゃないと(サステナブルには)できなくて。ギルドの要素を入れてもいいのかもしれませんが、今のところはユーザーに課金する形へ戻っている感じです。課金するということは、ある程度お金を持った先進国をターゲットにしているということだと思います。

日本のゲームパブリッシャーには、既に一定のファンを獲得しているゲームタイトルを Web3化するような動きがありますが、冒頭でご紹介いただいたゲームタイトルなどは、最初からブロックチェーンゲーム特化で開発されたものでしょうか。

Oasys 松原:IPは焼き直しが多いですが、ガラケーの時代も、既存のコンソールゲームのタイトルを何にも変えずにそのままガラケーに移植して失敗した経験があります。そこから学んで、Web3用に作っていることが多いです。

KDDI 舘林:IPの扱いでいうと、僕もスタートアップと一緒に協業するとか、新しいビジネス作ることを12年ぐらいやっていて、ちょうどガラケーのソーシャルゲームが終わってきて、スマホのゲームが始まるタイミングぐらいからこの辺の事業にいるので、さっき松原さんがおっしゃっていたドラコレの話とか、怪盗ロワイヤルがいつ出るかみたいな議論はすごくわかるんですよね。どこまで面白いを作れるかという実験が続いて、出るとみんな追随してくるみたいな流れだと思うんですけど。

松原さんから見て、各パブリッシャーが持っているIPの重要性はどうなりそうですか。スマホのゲームの出始めのときはドラゴンクエストはまだ出なかったし、FF(ファイナルファンタジー)も出なかったし、パワプロ(実況パワフルプロ野球)もちょっと後でした。

最初はやはりソーシャルのプラットフォームに乗っているパブリッシャーが強くて、その後、大手が自分たちの持っているIPを持ってきましたよね。

そんな動きを見ていると、今回はパブリッシャー各社が虎の子のIPを出してくるのが比較的早いのではという気がしています。ゲームデベロッパー、パブリッシャーのスマホゲームの対応のときと比べて、今回のブロックチェーンゲームへの各社の対応の勢いは早いのか、同じ感じなのかどちらですか。

Oasys 松原:ドラコレはコナミさんが作りました。しかも独自IPです。似たようなことが意外と起きているのかなと思っています。例えば、SEGAさんはいきなりソニックは出さないわけですよね。まずは実験で形を作るために、将来の怪盗ロワイヤルやドラコレを生むために試行錯誤する。

それが答えだと思っていて、だから最初から本気のIPは出ない。ただ、韓国勢は本気のIPをいきなり全振りで出して来ています。

KDDI 舘林:スマホゲームが立ち上がったと思ってから2年くらいかかった印象ですが、それと比べると速そうですか?

Oasys 松原:今年はみんな作ってるので、怪盗ロワイヤルとドラコレが出るんだと思います。その型を見て、来年ソーシャルゲームを作ってきたような会社、グリーさんとかgumiさんとかが、その後量産するんだと思います。低予算だしと、みんなボコボコ来年出してきて、それを分け目に大手のIPを持ってる人たちは、もう少し作り込んでくるんだと思うんですよ。2025年に本気のIPとして何かが出るのかは予想できます。

以前のソーシャルゲームのときに比べても、知見も溜まってる分、どういうタイミングで、どこにリソースを集中させれば早くできるかをパブリッシャーはよくわかってらっしゃるでしょうから、その知見を生かしてブロックチェーンゲームにも各社注力されるということですね。

KDDI 舘林:Oasysのバリデータに名を連ねているパブリッシャーには、ソーシャルゲームのパブリッシャーもいるし、コンシューマーから強いゲームパブリッシャーもいるのが、まさにそれだなと思ってます。波に乗り遅れたら、2〜3年は遅れるのがわかってるから、ちゃんと波に乗ろうとされている。

Oasys 松原:そうですね。また、モバイルゲームがきついという事情もありますね。何が当たるかわかりません。なぜ当たったのかも説明できません。当たったらすごいんですが、当たる確率は3%ぐらいと言われていて、そこに20億円かけなければいけない。それが割に合わなさすぎるので、パブリッシャーはこっち(ブロックチェーンゲーム)に来るしかないというのもありますね。

後編に続く)

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