ボットに質問できる外国語学習サービスから人気漫画のVRゲームまで7社登壇ーー浜松で開催のMonthlyPitch、全社ご紹介

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創業期の起業家向けピッチステージ「Monthly Pitch」は、8月24日〜25日に静岡県浜松市で、73回目となるイベントを開催しました。24日には、多数の有名投資家と起業家による1on1の壁打ち会を開催。25日のピッチでは、7名の起業家たちが、会場とオンラインで参加した投資家に向けてサービスのプレゼンテーションを披露しました。

MonthlyPitch へのスタートアップ登壇はこれまでで累計551社に達し、年内の600社到達が見えるまでとなりました。本来は投資家と起業家のみの招待制・非公開イベントですが、本誌BRIDGEはメディアパートナーとして参加しております。本稿では登壇したスタートアップの内、公開できる7社の情報をお届けいたします(一部のピッチ内容は非公開となっています)。

(執筆協力:園田遼弥)

日本の伝統工芸を世界に届けるブランド創出支援 by イキルカテ

大塚岳朗さん

イキルカテは『日本の伝統工芸をアップデートし「伝統の継承」と「誇りの回復」に貢献する』をミッションに事業を展開しています。2022年4月に創業しました。ボードメンバーの大塚氏と小林氏は職人家系で生まれ育った背景から、日本の伝統工芸が失われていく現状に危機感を抱いているといいます。

イキルカテは日本の伝統工芸に歴史やクラフトマンシップがあるにもかかわらず、世界的なブランドに成長しない問題を解決します。主なアプローチ方法は2つあり、デザインを含めたブランディングとビジネスモデルの刷新です。職人から技術や価値観、モノづくりに関するストーリーなどをヒアリングし、築いた唯一無二のブランドを国内外に発信します。

そんな事例の一つが、石川県小松市を拠点に、100年以上の歴史を持ち、現在では日本唯一のシルクジャガードメーカー小倉織物とともに立ち上げたファクトリーブランド「OGURA」です。今後は1年に1社以上との協業を増やすことで事業拡大を図り、海外展開も視野に入れられるブランドを創出し続ける計画です。

IT ツール学習&スキル可視化プラットフォーム「Pluski」 by Furahi

川口儀浩さん

Furahi が運営する「Pluski(プラスキ)」は顧客がプラスのスキルを身に付けるための、ITツール学習&スキル可視化プラットフォームです。川口氏は、ケニアでVCやサッカー選手として活動していたときに、ケニアの20代の若者の多くがスキルを身に付けられず、失業率が約20%ということに衝撃を受けたと言います。

そこで時代に合ったスキルを習得することを望む学生に向け、ITスキルを獲得するための Pluski を開発しています。プロダクトのβ版で、ユーザはオンラインでITスキルについて学習可能です。学習完了後にバッチやポイントを贈呈するなど、ゲーミフィケーション要素も取り入れることで、ユーザのモチベーションを高めています。

日本では、今後もDXやエンジニアなどのIT人材が不足する可能性が高いため、IT人材の育成とあわせて企業とのマッチングサービスも提供することで、ビジネスを拡大する計画です。川口代表は「IT スキルを理系人材だけのものにせず、日本人全員が IT 人材になれるプラットフォームを構築し、将来は世界中の人々の選択肢や可能性を広げていきたい」とピッチを締め括りました。

マイクラ活用の小学生向けプログラミング学習教材「クラスモールキッズ」 by YAGO

井上貴文さん

クラスモールキッズは小学生を対象に、マインクラフトを用いてプログラミングを教える「マイプロ」を提供しています。2020年度から小学校ではプログラミング学習が必修化されましたが、その内容は座学中心で、実際に手を動かしてプログラミングすることはほぼ無いそうです。プログラミングの知識がない保護者の中には、子どもが授業についていけるのか不安に感じる人も多いといいます。

「マイプロ」ではマインクラフトの中に独自のプログラミング教材をインストールしました。生徒はマインクラフトを楽しみながらプログラミング学習が可能です。競合優位性として、教材の中に物語形式のゲーム性が盛り込まれていたり、質の高い授業を提供できる約30名近くの講師が在籍したりしていることなどが挙げられます。

クラスモールキッズでは、月4回のオンラインライブ講義を月額約16,000円で提供します。小学生のプログラミング学習市場は2030年に1,000億円規模と、英会話学習に匹敵するものになる予測もあります。YAGO では、クラスモールキッズを通じ多くのスター先生が生まれ、生徒との出会いを創出し、経営理念である「テクノロジーを解放して個をエンパワーする」ことを体現するとしています。

バーチャル技術で人の繋がりや生き方の選択肢を多様化する「cocoro:id」by MOSHBIT.

樋田顕さん

MOSHBIT. は「バーチャル×テクノロジーによって人々の〝深い繋がり〟と〝生き方の選択肢〝〟を増やす」ことをビジョンに掲げています。主なプロダクトは2つです。

1つ目はアバターと通話・対話を掛け合わせた「cocoro:id(ココロイド)」です。MOSHBIT. が選考した多様な個性を持つキャストと呼ばれる人材がアバターとなり、利用者と通話形式でコミュニケーションします。ライブ配信と異なる点は、通話が主軸となるため、容姿やタレント性よりも相談に乗ることや傾聴が得意な人が活躍できるプラットフォームである点です。またキャストとファンの関係構築を促進する独自開発のゲームや診断コンテンツを楽しむ機能もあります。

2つ目のサービスはアバターとライブ配信を掛け合わせた「Xsta.(クロスタ)」です。「Xsta.」ではスマホ1台でバーチャルライブ配信が可能となります。最大の特徴は、サービスが用意するアバターに加え、Live2D や VRM などの外部のアバターデータをアップロードし活動することが可能な点です。これにより外部プラットフォームの人気配信者も活動可能となります。

将来的には2つのサービスの相互作用を生み出すことで、人々の繋がりや生き方の選択肢を多様化することを目指しています。

大人気漫画の VR ゲームやエコシステム開発事業 by UNIVRS

藤川啓吾さん

UNIVRS(ユニバース)は漫画やアニメ、映画などのIPを題材とした VR コンテンツを企画・開発するスタートアップで、VR ゲーム「進撃の巨人VR: Unbreakable」を開発しています。現在、日本の VR・メタバース市場は幻滅期にあり、展示会やイベントでメタバース空間を用意しても、ほとんど人が集まらない状況です。一方、北米を中心にメタバース市場は急成長しており、日本が誇る漫画やアニメなどの IP を VR ゲーム化することは、世界から求められているといえます。

UNIVRS はゲーム開発に加え、コンテンツのエコシステムの形成にも取り組みます。開発体制の盤石化や長期運営モデルを取り入れ、ファンコミュニティの創出などにより、持続的なエコシステムの形成を図ります。

2023年6月には Meta が主催した「Meta Quest Gaming Showcase」で「進撃の巨人VR: Unbreakable」の PV を初公開し、海外メディアだけでも48社に取り上げられました。Meta Quest のタイトルの中で最も注目される作品としても紹介される中、今冬に全世界に向けて発売予定です。藤川氏は「日本発の VR コンテンツで、世界中の人々を熱狂させたい」と語りました。

コンプライアンスチェック Web ツール「Risk Analyze」 by KYCコンサルティング

飛内尚正さん

KYC コンサルティングはコンプライアンスチェックを身近にすることで、個人や企業の被害を未然に防ぐことをミッションに掲げています。「Risk Analyze」は新聞記事やネット記事、SNSなどの情報をもとに「反社会的勢力との繋がり」や「犯罪や不祥事への関与」などがないか、コンプライアンスチェックができる Web ツールです。

データベースには、AI で選別したコンプライアンスに関する情報が毎月平均5万件ほど蓄積されていきます。Risk Analyze が解決する顧客課題は主に「タイムコスト」「属人化」「情報の正確性」の3つです。

Google検索や大手リスク調査サービスと比較すると、コンプライアンスに関わる情報に絞ったデータベースから検索するため、調査時間が1000分の1程度まで短縮されます。また、API 連携を可能とすることで、社内で業務の属人化やヒューマンエラーなどが発生する可能性を排除しています。

AI チャットボットで機能増強、外国語 Q&A サービス「HiNative」 by Lang-8

喜洋洋さん

Lang-8 は世界最大規模の外国語 Q&A サービス「HiNative(ハイネイティブ)」を提供しています。従来の HiNative は外国語に関する Q&A サービスで、外国語を学習したい世界中の人々が相互に質問に回答し合うものでした。語学に関するQ&Aとしては世界最大規模で、広告なしの検索流入から毎月6万人もの会員登録がありました。

日本では珍しいグローバルサービスで、ユーザの海外利用比率は94%、232か国からアクセスがあり、113言語に対応しています。ただ、他のユーザからの回答を待つ必要があるため、即時性が弱い課題もありました。そこで AI を活用した HiNative の新サービスとして「AI Chat」を開発しました。

英語に翻訳したいフレーズを入力すると、これまでに蓄積したユーザの回答と AI による回答があわせて表示されます。特徴はプロンプト不要の簡易な UI 設計や回答の精度が高いことなどです。AI の回答とあわせてネイティブスピーカーによる回答も表示されるため、利用者の満足度も高く、独自性が強いサービスとなっています。

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