商談数を2倍にするセールスエンゲージメントSaaS「シナリオリード」が正式公開、インキュベイトFから1億円のシード調達も

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Image credit: Logport

東京に拠点を置くログポートは30日、セールスエンゲージメント SaaS「シナリオリード」を正式ローンチした。また、これとあわせて、シードラウンドでインキュベイトファンドから1億円を調達したことも明らかにした。同社では調達した資金をプロダクトの改善、事業拡大のための採用に使うとしている。

ログポートは2021年10月、リクルート出身の松原史典氏により設立。松原氏はこれまでの経験から、セールスの領域では、頑張って成果が出ている人と、頑張っているのに成果につながらず苦しんでいる人の差が激しく、この課題をテクノロジーを使って解決できるのではないかと考え、シナリオリードの開発に着手したそうだ。

近年、セールスやマーケティングの領域にもテクノロジーが普及していないわけではない。典型的なものとしては、MA(マーケティングアナリティクス)や、SFA(営業効率化)/CRM(顧客管理)が導入されている会社も多い。しかし、これらのツールの間を繋ぐ部分、つまり、営業に向けた準備作業や連絡アプローチといった商談獲得のための作業は、相変わらず人の手に依存している。

テクノロジーが発達しているのに営業活動は進化しておらず、担当者は作業に忙殺されている。会社としては、売上を上げるために営業担当者を増やすという選択肢を考えるかもしれないが、人を増やすのは簡単なことではない。つまり、今いる人たちでどれだけ売上を伸ばすか、ということが重要になってくる。(松原氏)

ログポート創業者で代表取締役の松原史典氏
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MA がリード獲得、SFA/CRM が受注獲得を支援するのに対し、シナリオリードが支援しようとしているのは、それらを繋ぐ間の部分、商談獲得だ。セールス活動全体の中では、商談獲得のフェーズが最も自動化されておらず、属人的で煩雑で手作業に依存している。属人的なので、成績が十分にふるわない担当者に、ベテランが体系的にスキルトランスファーするというのも容易ではない。

シナリオリードを使えば、商談獲得の自動化で、セールス担当者の作業ボリュウムを下げることができるので、彼らは劇的に顧客と対峙するために時間を費やすことができるようになる。松原氏はシナリオリードのことを、「MA や SFA/CRM に続く、第3のセールスツール」だと呼ぶ。この分野では、海外では OutreachSalesloft などの成長が顕著だが、日本ではまだ競合は見られない。

シナリオリードという名の通り、このツールの特徴は、シナリオに沿って、やるべきタスクが自動的にポンポンとサジェストされる点だ。営業活動の進捗に応じて、メールする、電話する、といったタスクが画面に現れるので、担当者はそれに応じて行動すればいい。メールの作成には、状況に応じてテンプレートを利用できるので、文面を一から考える手間も不要だ。

いささか、セールスにおけるクリエイティビティを否定されている気もするが、おそらく、クリエイティビティの労力は受注が決まってから発揮すればいいのだろう。シナリオリードをクローズドベータで利用したユーザからは、導入したことで活動量が最大2.7倍に増えた、商談数が2.6倍に増えた、という例も報告されているという。

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既存ツールがカバーしきれていない隙間を埋めるツールであることから、シナリオリードは他のツールともシームレスに連携できるようにしている。例えば、Salesforce を利用しているユーザであれば、リードの見込み客のデータは Salesforce から取り込まれ、シナリオリード上で自動的に情報が入る。相互連携しているので、進捗状況を別途、Salesforce 上に書き込む必要もない。

フィンテックの話題を取り上げる時に、この業界で顕著なアンバンドルの傾向について論じることがある。つまり、既存の金融機関は堅牢な仕組みが求められるバックエンドを中心に機能し、ユーザが接するフロントエンドは柔軟なデザインが得意なフィンテックスタートアップが担うというものだ。シナリオリードの話を聞いて、この傾向は、セールステックの領域にも伝播しつつあるのかもしれないと感じた。

シナリオリードはセールス担当がエンゲージメントのために使うフロントエンドに特化していて、伝統的なプレーヤーである Salesforce などを見込み客やセールス進捗などの情報を管理・保存するデータベースとして使っている。例えば、インサイドセールスでの顧客とのやり取りを AI が自動的にまとめるサービスが市場では人気だが、シナリオリードはこうしたサードパーティとも積極的に連携していく可能性が考えられる。

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