導入対象は社員1万人規模、KDDIが1on1ツール「Kakeai」を採用するまで

SHARE:
KAKEAI取締役 皆川恵美さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

1on1支援クラウド「Kakeai」を提供するKAKEAIは5月、2023年度からKDDI全社員を対象にした導入実績を公表しています。業務の成果とメンバーの成長を最大化する目的で導入されたもので、対象となる社員数は1万人規模になります。Kakeaiは、上司と部下の成長や日常的な困りごとの支援を目的としたミーティングツールで、利用する数万人規模のユーザーデータを活用して、1on1ミーティングの質と頻度を向上させることを狙ったものです。同社によると世界47カ国での利用実績があり、KDDIと同様の数万人規模の企業や病院、学校、飲食店などで利用が進んでいるそうです。

KDDIでは2020年から「プロを創り、育てる」ことを目的にジョブ型人事制度を開始し、社員の成長を支援する施策として1on1を導入しています。本稿ではKAKEAI取締役で共同創業者の皆川恵美さんに今回の導入経緯や狙いなどをお聞きしました。(文中の太字の質問はMUGENLABO Magazine編集部。回答は皆川さん)

KDDI全社導入と規模が大きいですが、まずは導入に至る経緯についてお話いただけますか

皆川:ジョブ型の人事制度を導入されたという背景もあり、他のHRのシステムやサービスを導入されていたそうなのです。1on1を部下の成長支援のために非常に重要な施策として位置づけられていて、1on1に特化したシステムを導入することで、定着率や質の向上が図れるのではという考えに至ったと伺っています。

KAKEAI取締役 皆川恵美さん

どのように協議を進められましたか

皆川:まずはKakeaiで何が実現できるのかを紹介しました。その後は、ミーティングやQA表のやりとりを重ねました。全社導入に先立ち、部署を限定してトライアルを実施いただきました。半年ほどのの期間をかけて、Kakeaiをご理解いただき、それに加えて、こんなこともKakeaiで実現したいといったご要望もいただきました。

大手とスタートアップの取り組みとなると難しいところもあったかと思いますが、どのようなハードルがありましたか

皆川:大手企業様では、一般的ですが、セキュリティ面のチェックを受けることになりました。KDDI様でも性能のチェックは大変重要視されており、弊社のエンジニアも伴走する形を取りました。自社でもネットワークやアプリケーションサービスを提供されているため、従業員にも良い体験を届けたい、という想いを強く感じました。1on1の時間は一般的に「部下のための大切な時間」とされますが、その中でもKDDI様の目指したい「1on1」をKakeaiでどう実現するかを議論しながら進めていきました。

具体的にはどのような内容でしたか

皆川:一例としては、個別のトピックをカスタマイズしたいというご要望ですね。結果的に私たちもそれを汎用化する形で実装し、お客様が実現したい形でご提供しました。

SaaSの場合、特定のカスタマイズには応じられないことが一般的と思っていましたが

皆川:大手企業様ならではかもしれませんが、多くの社員の方々が利用する場合には、特定のポイントを丁寧にケアしたいというニーズがでてくるんですよね。私たちはSaaSとして提供しているため、ある程度のまとまりとしてカスタマイズする必要があります。個別のご要望を汎用化して実装しながら、KDDI様のご要望を実現できるよう取り組んできました。多い時期には、週に3回は両社のエンジニアも交えてディスカッションを重ねました。

Kakeai利用画面イメージ

最初はどういった形で受け取られたのでしょうか

皆川:KDDI様では既に2年ほど前から1on1を推進されていることもあり、2年いただいた1on1に関する要望は、すぐに他のユーザーにも役立つものが多くありました。対応する内容にもよりますが、実際、1週間から2週間程度で対応することもありましたね。

なるほど、通常の導入でありながらサービス全体にも活かせた仕様があった、ということですね

皆川:いただいた要望をどのように自社のサービス設計思想に組み込むかは慎重に検討する必要があります。上司との対話を推進するために具体的にどのようなことを実現されたいのか本来的な狙いや目的をしっかりと確認し、SaaSとして汎用化できるような仕様に落とし込む必要があります。

皆川さんは改めてKakeaiの強みをどのように考えていますか

皆川:まずはやはり1on1の定着や質の向上に効果があるかという点が非常に重要だと考えています。1on1は社員の方のための時間ですから、1on1ツールは社員のみなさんに使いたいと感じていただけるものではなくてはいけません。そのため、1on1の定着と質の向上に寄与しているかどうかは、社員のみなさんの声を集めていただくことも多いです。

継続希望が多いということで私たちとしては定着や質の向上に一定の寄与ができているのではと認識しています。大手企業様特有の視点として、自社として実現されたいことが明確なケースも多いです。ご要望の本質を一緒に考えてスピーディーかつ柔軟に対応していくことがご期待に添えているのではとも思っています。

導入後はどうコミュニケーションを取られているのでしょうか

皆川:そうですね、1on1の導入初期には、みなさんに1on1をどのように活用し、Kakeaiをどう使うかを理解していただくための説明会を実施したり、組織全体で円滑に導入が進めるよう担当者様と定例会を継続しています。

全社でKakeaiを使っていただいた場合、利用者の方々から「Kakeaiをこんなことに使えないか」といった提案が寄せられることもあるんです。極端なケースでは「販売したい」というお話をいただいたこともあります(笑)。一部の部門ではKakeaiをデータとともに活用し、育成施策に活用いただいている事例もあります。我々としてはKakeaiをいろんな形で使い倒していただけることが一番重要なんです。

今後の展望や、世の中自体をこうしていきたいといったお考えがあれば教えていただけますでしょうか

皆川:私たちは『あなたがどこで誰と共に生きようとも、あなたの持つ人生の可能性を絶対に毀損させない。』をパーパスとして掲げています。1on1を通じて上司と部下が本音で対話し、働く日々の現実がより進化するようご支援していきたいですね。

ありがとうございました

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する