
かつて創業から2年で時価総額は70億米ドルに達し、ヨーロッパで最も急成長したユニコーンの一つ、イギリスのオンラインイベントプラットフォーム「Hopin」が2023年8月、2つのコア事業——「Events」と「Sessions」——を売却した。a16z(Andreessen Horowitz)が投資した、もう一つのプラットフォーム「Run The World」が今週、買収されたと報じられた。
人気のオンラインイベントプラットフォームは、新型コロナの感染拡大鈍化で息切れしたのだろうか。
かつてヨーロッパで最も急成長したユニコーン Hopin がコア事業の売却を発表
イギリスのスタートアップ Hopin は2019年、オンラインミーティングソフトウェアをローンチした。このプラットフォームでは、ユーザはバーチャル名刺を交換し、自動的に編集されたミーティングの要約を受け取ることができる。ソフトウェアのローンチは新型コロナの感染拡大と重なり、ユーザの増加にあわせて、10人未満だった Hopin のチームは徐々に拡大し、2021年末には800人を超えるまでに成長した。

Image credit: Hopin
シンプルで直感的なユーザインターフェイスを持つ Hopin は、収集した広範なユーザフィードバックを通じて、ユーザのニーズを満たす新機能を導入し続け、ユーザ中心の Hopinチームは2021年にヨーロッパで最も急成長した新興企業ユニコーンになった。しかし、このビジネスの奇跡は、新型コロナの感染拡大鈍化とともに徐々に失われつつある。

Image credit: Hopin
人々がコロナ前の生活に戻るにつれ、バーチャルとリアルの活動の融合がより広まり、Hopin は市場の需要減少を受けて2022年2月と7月にレイオフを発表した。創業者の Johnny Boufarhat 氏は2023年8月、クラウドベースのコミュニケーション統合サービスプロバイダー RingCentral との業務提携と、Hopin のコアサービスのうち、バーチャル会議の開催を促進する Events と、会議中のインタラクションの橋渡しをする Sessions の売却を発表した。売却額は発表されていない。

数百万人のユーザを獲得した「Run The World」には、変革が求められている
この業界の〝冬〟の影響を受けているのは Hopin だけではなく、同じくオンラインミーティングソフトウェアの Run The World も今年8月、買収されたと発表している。
台湾と中国出身のチームメンバーを擁する Run The World は、2019年のサービス開始時にユニークな動画プロフィールサービスで注目を集め、その後もオンラインミーティングテンプレートやミーティング参加者とのランダムマッチングによるインタラクティブセッションなど、ユーザに好評なオンラインミーティングツールを発表している。

Image credit: Run The World
総額1,400万米ドル以上を調達した Run The World は、需要の減少と多数のオンラインミーティング企業の出現という2つの向かい風を受け、オンラインイベント管理プラットフォーム「EventMobi」に買収されたと発表した。買収額は公表されていない。
今回の買収発表に際して、Run The World 創業者 の Xiaoyin Qu 氏は、コロナ禍のオンラインイベントへの関心は想像を絶するものだったが、オンラインミーティングの需要が減少する中、EventMobi 傘下に入ることで、バーチャルイベントの企画を支援することを楽しみにしていると述べた。
EventMobi の創業者 Bob Vaez 氏もまた、バーチャルイベントを将来のトレンドと見ており、同社は近年、オフラインとオフラインのイベント統合に進出していることから、イベント管理ツールを強化し、イベント主催分野での地位を確固たるものにする手段として、Run The World の買収に期待している。

Image credit: EventMobi
オンラインとオフラインが融合、柔軟なリアル/バーチャルイベントが主流に
2022年の Financial Times の報道によると、コロナ禍の2020年には Hopin のイベントページで登録可能なバーチャルイベントは15,000件以上あったが、2年後にはオンラインイベントは500件以下になっており、新型コロナの感染拡大が落ち着いた後は、イベントの種類をよく見ると、オンラインとオフラインの両方を組み合わせたハイブリッドイベントが徐々に主流になりつつある。
オンラインイベントの利便性とオフラインイベントの双方向性を鑑みると、リアルとバーチャルを融合させたイベントは、主催者の企画の自由度を高めることができる。ライブストリーミングなどオンラインイベント企画で使われるツールを使えば、スピーチを行うスピーカーから時間的・地理的制約を排除できるし、フィジカルな体験を重視する参加者にはオフラインイベント参加への門戸を開くことができる。聴衆に多様な参加方法から選択させることで、ブランド認知度やターゲット読者層の拡大という目標を達成することができる。
しかし、リアルとバーチャルを融合させたイベントを開催するのは、思っているほど簡単ではない。イベントの動機や目標によって最適な形式が決まるし、オンラインイベントに十分なハードウェアがあるか、オンラインとオフラインのイベントを同時にコントロールできる経験豊富なホストがいるかなど、準備段階で気をつけなければならない細かいことがたくさんある。
Hopin と Run The World の買収発表から、バーチャルイベントプラットフォームは変貌を迫られていることがわかる。オンラインとオフラインのイベントの区別が徐々に曖昧になる中、リアルとバーチャルの両方の特徴を併せ持つハイブリッドモデルがイベント主催者の大部分を占めるようになり、新しい日常が形成されつつある。
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