電気・水・CO₂でジェット燃料を合成、Twelveが1.3億米ドルをシリーズB調達——累積調達額は最大2億米ドルに

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Image credit: Twelve

話題のポイント:航空業界は、気候変動への対応として炭素排出を削減するための新しい方法を模索しています。国土交通省によると、2020年度の日本の CO2 排出量10億4,400万トンのうち、運輸部門の CO2 排出量は1億8,500万トンと全体の17.7%を占めており、航空分野は運輸部門の2.8%にあたる量を排出しています。排出量自体は大きくないものの、輸送量に対する排出量が一番多く、その非効率さが目立っています。

今回紹介する Twelve の技術は、この問題の解決策の一つとして注目を浴びています。

カリフォルニア州バークレーに拠点を置くスタートアップ Twelve は、化石燃料の代替としての低排出ジェット燃料の製造に注力しています。約2年前、同社は初めてこの燃料を製造し、今ではその生産量を大幅に増やすための取り組みを強化しています。

Twelve の燃料「E-Jet」は、電気、水、CO2 を使用して製造され、化石ベースのケロシンの代替として飛行機からの温室効果ガス排出を削減することを実現するものです。現在、モーゼスレイクにある旧砂糖ビート工場の敷地で商業規模の施設の建設が進行中で、2024年半ばに稼働を開始する予定となっています。

Twelve は、運用開始の初年度で年間約40,000ガロンの燃料を生産することを目指しており、すでに Alaska Airlines、Microsoft、Shopify との間で、新しい工場からの E-Jet の購入に関する数百万ドルの契約が結ばれていることが明かされています。

Twelve の技術は、CO2 と水素をジェットエンジン用の燃料に変換する独自の方法を採用しています。工業施設からの CO2 を「廃棄物」として調達し、独自の電気化学リアクターを使用して CO2 分子を一酸化炭素に分割します。その後、水分子を水素と酸素に分割し、得られる一酸化炭素と水素の混合物を「合成ガス」として使用して、フィッシャー・トロプシュ法(一酸化炭素と水素から触媒反応を用いて液体炭化水素を合成)によりガスを液体に変換するのです。

Twelve の共同創業者で CEO の Nicholas Flanders 氏は、このプロセスが  CO2、水、電気を使用して新しい製品に再結合する触媒を使用することを明らかにしました。また、Twelve のプロセスが既存の代替手段よりも比較的安価であることも明らかにしています。

Twelve は今年6月、シリーズ B ラウンドで1億3,000万米ドルを調達しました。同社は設立以来、最大2億米ドルの資金調達を行っており、DCVC、Capricorn Investment Group、Carbon Direct、Chan Zuckerberg Initiative、Microsoft Climate Innovation Fund、Breakout Ventures、Munich Ree、Elementum Ventures などの主要なベンチャーキャピタルが投資家として参加しています。

Twelve の技術は、伝統的な化石燃料を使用する製品の製造方法を変革する可能性があります。この技術により、航空業界だけでなく、さまざまな分野での炭素排出削減の新たな可能性が広がっていくことに期待をしたいと思います。

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