複数のHR SaaSに分散するデータを連携、大企業の需要にもフィット——パトスロゴスが19.5億円をプレシリーズA調達

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Image credit: Pathos Logos

HR SaaS の共創プラットフォーム 「PathosLogos(パトスロゴス)」を開発・提供するパトスロゴスは13日、プレシリーズ A ラウンドで19.5億円を調達したと発表した。このラウンドはグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)とジャフコグループ(東証:8595)がリードし、31VENTURES Global Innovation Fund(三井不動産とグローバル・ブレインによる運営)、農林中金イノベーションファンド(農林中金とグローバル・ブレインによる運営)。

これは、パトスロゴスにとって、2022年3月に明らかにした9.5億円の調達、2022年10月に明らかにしたシンプレクスからの3億円の調達(いずれもシードラウンド)に続くものだ。今回の調達を受けて、パトスロゴスの創業以来の累積調達額は32億円に達した。今回の投資家のうち、GCP とジャフコグループは、パトスロゴスの創業者である牧野正幸氏が以前に創業した ERP プロバイダのワークスアプリケーションズの創業時の VC でもある。パトスロゴスとは、ギリシア語で情熱と論理を意味する。

牧野氏は、ベンチャー黎明期(当時はスタートアップという言葉はなかった)の1996年にワークスアプリケーションズを創業し、5年後にジャスダック(当時)に上場した起業家として知られる。当時は〝赤字を掘る〟というスタートアップ的なアプローチは一般的ではなく、ワークスアプリケーションズは2011年に上場廃止し MBO(経営陣による買収)、その後、2019年に事業の一部をベインキャピタル系の SPC(特別目的会社)に譲渡し、牧野氏も取締役を退任していた。パトスロゴスはその翌年に創業した。

HR SaaS は数多くある。実際、ワークスアプリケーションズの OB の中にも、そういった HR SaaS を自ら立ち上げている人も少なくないという。HR を扱うソリューションが SaaS で提供されるのは、近年、法制度の変化が激しい人事分野においても理にかなっていると言えるだろう。何より、HR SaaS プロバイダの多くは、HR の中の特定分野に特化してプロダクトを作り上げていることから、痒い所にまで手が届く仕上がりになっていることがほとんどだろう。

Image credit: Pathos Logos

しかし、用途に合わせて HR SaaS を使い分けていくと、HR に関するデータが複数の SaaS に分散してしまうという弊害がある。必然的に HR 関連のデータ量が大きくなる大企業(従業員1,000名以上)が、とりわけ SaaS の利用に本腰を入れて踏み切りづらい理由もそこにある。SaaS プロバイダの多くは、市場投入時は中小企業向けの市場からアプローチを始めるものの、売上の観点から言って(多くの場合、SaaS の料金は社員数=アカウント数の規模に合わせて増える)、やはり大企業をユーザに取り込みたいのが本音だ。

パトスロゴスの共創プラットフォームは、こうした各種 HR SaaS の情報連携を取り合う中央データベース的な役割を持つ。人事担当者や社員が日常的に使うインターフェースは HR SaaS のものだ。共創プラットフォームを通じてデータの連携・同期が常時取れているので、ユーザ企業は追加的なインテクレーションは必要ない。仮に、その会社独自のシステムが必要になった場合でも、パトスロゴスの共創プラットフォームのデータベースを参照する形で開発を進めれば事足りることになる。

どんどんいい SaaS が出てきているのに、大企業はデータの連携ができないために、使うのを断念しているケースをよく聞きます。例えば、珍しいものでは、休職者管理の SaaS などというのもあるんです。休職者が復職する際にいろんなパターンがあるので、それらを全て管理する人事は本当に大変なんですね。共創プラットフォームを使えば、そういった SaaS とも連携できる可能性が広がります。(パトスロゴス コーポレート本部長 矢下茂雄氏)

「日本であまりいい HR SaaS が無さそうだった」という人事と給与の分野だけはパトスロゴスは自ら SaaS を作ることを選んだが、それ以外のタレントマネージメント、労務管理、勤怠管理、採用管理、BI ツールについて開発は行わず、SaaS プロバイダと連携する形を取る。これぞ〝共創〟プラットフォームという名前が付いているゆえんだ。SaaS プロバイダにとっても、スタートアップや中小企業だけでなく、もうワンランク上の大企業をユーザに取り込める機会が増すことになる。

パトスロゴスはこれまでに、カオナビ、クラウドキャスト、SmartHR、TeamSpirit、Panalyt、タレントパレット、スキルナビなど、誰もがよく知る HR SaaS と連携している。彼らをシステム連携だけでなく、事業共創するパートナーと位置付け、今後もレパートリーを増やしていく考えだ。こうして各社の人事に関するデータが溜まっていけば、例えば、それらを匿名化しビッグデータ分析することで、日本の労働市場におけるインサイトも得られるようになるだろう。

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