α版が公開、自分の全端末でアプリやデータを完全同期できるクラウドOS「Space OS」の可能性

「Space OS」
Image: Deta

読者諸氏は、データをどこに保存しているだろうか? クラウドサービスの登場後、ほとんどのユーザはデータをクラウドに保存するようになった。しかし、クラウドプロバイダがサービスを停止すれば、データにアクセスできなくなってしまう。

そこで、スタートアップ Deta の創業者兼 CEO Mustafa Abdelhai 氏は、自分のコンピュータ全体を自分のクラウドにできないかと考えた。「コンピュータをクラウド化する」という一見矛盾したアイデアは、実際にはコンピュータの OS のクラウド化を指している。

今日どのコンピュータにログインしても、ログイン後に表示されるのは自分のデータとよく使うアプリケーションだけだ。Deta は、ユーザがコンピュータの OS を他デバイスと共有できるようにすることで、デスクトップデザインからアプリケーション内のデータまで、環境全体を共有し、さまざまなデバイスに同期できるようにしたいと考えている。

2023年10月、Abdelhai 氏はこのビジョンを実現すべく、Deta は MacOS と Windows に挑戦する製品「Space OS」を発表した。

一見矛盾したアイデア、個人向けクラウド PC

Microsoft の Windows も Appele MacOS も、完全にはクラウド向けに設計されていない。Windows のアカウントは異なるコンピュータ間で共有できないし、MacOS では Apple ID を設定でき、Apple 独自のサービスだけはハードウェアの制限無しに更新同期が可能だが、その他のアプリは再ダウンロードが必要だ。

確かに、Microsoft は2021年に Space OS に似たプロジェクト「Windows 365 Cloud PC」を発表している。しかし、これはビジネス向けに設計されたサービスで、ゲームなどの個人的なエンターテインメント環境には向いていない。

スペースOSが実現したいのは、よりユーザフレンドリーなプロセスだ。自分のアカウントにどこでログインしても、中のデータやアプリケーションが同期して更新され、データは自分のコンピューターのクラウドシステムに保管される。

これは全く新しい OS のエコシステムだが、Space OS を実現するために、Deta はクラウドサービスやクラウドベースのアプリケーションを含め、一から構築する必要がある。

Deta Cloud から Deta Space へ

Deta はまず「Deta Cloud」プラットフォームを立ち上げ、エンジニアがクラウドアプリケーションを開発できるようにし、Space OS に対応したソフトウェアシステムを共同で構築できるようにする計画だ。Deta はまた、これらのソフトウェアを監査し、ユーザが「検証済」と表示されたアプリケーションを安心して使用できるようにする。

「Deta Cloud」
Image credit: Deta

Discovery は Apple のアプリストアのようなもので、ユーザはここから得たクラウドアプリケーションをクラウドデスクトップに置くことができ、新しい Space OS の基礎を構成する。

「Discovery」
Image credit: Deta

Horizon は Space OS コンピュータデスクトップの制御インターフェース技術とも言える。ユーザはデスクトップ上にあらゆる種類のカードを直接置くことができる。Horizon ではアプリケーションのコードをダウンロードして個人の Deta クラウド上にインストールするため、データ漏洩を避けることができる。

Deta Cloud は、データを保存するための個人の暗号化されたクラウドスペースと、さまざまなアプリケーションを実行するためのバーチャルデバイスという2つの部分から構成されている。

つまり、Space OS によって、ユーザは個人用のクラウドスペースを提供され、コンピュータからこれらのアプリケーションを使用する時には、バーチャルデバイスを通じて暗号化された空間に接続し、アプリケーションの実行を開始する。

「Horizon」
Image credit: Deta

さらに、Deta はユーザが独自のアプリケーションを作成するための扉も開いている。プログラミングの知識があるユーザは、Horizon 上で直接コードを入力し、ニーズに合ったデスクトップを作成することができる。プログラミングの知識がないユーザは、プラットフォームの AI アシスタントツール「Teletype」を使用することができる。このツールは、テキストコマンドを対応するコードに変換し、アプリケーションを生成する。

「Teletype」
Image credit: Deta

将来的には、Deta はユーザがコンピュータの OS を共有できるようにすることで、デスクトップのデザインからアプリケーション内のデータまで、コンピュータ全体を共有し、異なるデバイスに同期できるようにしたいと考えている。

Space OS は、トレンドになるか

Deta はまだ発展途上で、Space OS もまだ試験段階だ。Windows や MacOS といった既存 OS と競合するコンピュータ OS のエコシステム構築は非常に難しい。

既存のアプリケーションをすべてクラウドに載せるためのコードを書くには、多数の技術者が必要だ。いったんソフトウェアが構築されると、ユーザは大量のデータをクラウド OS に転送する時間を惜しむかもしれないし、情報漏洩を恐れてクラウドベースの製品に疑念を抱く人もまだ多い。

コンピュータの OS をクラウド化するという Deta のコンセプトは、ユーザのハードウェアデバイス間で情報が同期されないという問題を根本的に解決することができるが、Space OS はまだ市場でテストされていない。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する