NearMe、社会・地域課題解決を念頭に〝シェア乗り〟重視にリブランド——企業や自治体との協業も

SHARE:
NearMe と協業する企業の皆さん。左から:日の丸交通 代表取締役社長 富田和孝氏、ウエインズトヨタ神奈川 まちいちばん支援部長 宮石真希子氏、秋田県観光文化スポーツ部インバウンド推進統括監  益子和秀氏、三井不動産ロジスティクス運営部運営グループ統括/前 ShareTomorrow MaaS 事業部プロジェクトリーダー 門川正徳氏、NearMe 代表取締役社長 高原幸一郎氏

AI でルート最適化し、同一の目的地への相乗り客を集めることで安価な輸送サービスを提供する NearMe は19日、都内で記者会見を行い、「〝シェア乗り〟構想」発表会と題した記者会見を開いた。この中で、これまでのモビリティスタートアップという範疇を超え、社会課題や地域課題に向き合うソーシャルデザインカンパニーを目指し(ビジョン)、遊休資産や潜在資源を未知への発見や未来資源に変換していく(ミッション)とした。これにあわせて、同社はコーポレートカラーとロゴを変更した。

NearMe の新しいロゴは、人々の移動を表す矢印を複数取り入れた、社名のアルファベットで構成されている。また、コーポレートカラーとしたすみれ色は、世界的画家モネが「全てを繋ぐ色」と評して好んで使った色とされ、ここから得られたインスピレーションをもとに、 NearMe が人や目的地などさまざまなものを繋ぎ、それによって、地域の豊かさを紡ぐことを実現したいという世界観を表現したかったとしている。

全国ハイヤー・タクシー連合会が6月に発表したデータによると、コロナ禍に需要が減ったことや高齢化が拍車をかけ、この4年間でタクシーの運転手は2割減った。都市部であってもピークタイムにタクシーが捕まらないことがあるため、政府はライドシェア(ここでは、営業認可を受けていない自家用車で営業する、アメリカなどで運用されている Uber のような、いわゆる「白タク」の状態を意味する)の導入を検討している

Image credit: NearMe

ここで懸念されるのは、ライドシェアが導入されることによりタクシー運転手の収入が圧迫され、さらに、営業稼働するタクシーの数が減るという事態だ。NearMe 代表取締役の高原幸一郎⽒の説明によれば、現在でもタクシーの絶対数が足りていないわけではなく、ピークタイムとアイドルタイムのギャップが大きいこと、また、東京でも平均的な実車率が5割程度と高くないため、テクノロジーを導入し需給を最適化することで、消費者の需要に応えられるだけのキャパシティは十分にあると指摘した。

NearMe が今回「〝シェア乗り〟構想」を謳ったのは、カーヘイリング、カープーリングなど相乗りの概念を表す言葉が複数存在する中で、同社が目指す方向を明確化する意図があったと推測する。これまで NearMe の記事には「AI ルート最適化&相乗りマッチングの……」という形容句をつけていたが、この「相乗り」という言葉の定義が極めて曖昧で、アメリカの Uber を呼ぶのも広義では相乗りと訳される。NearMe はおそらく、シェア乗り=タクシーなど交通事業者と組んだ展開を意味したいのだろう。

NearMe は今回、シェア乗りのマッチングをするプラットフォームをベースに、自社主導のサービス以外にも、地方自治体や企業との協業でのサービス展開も複数発表した。

NearMe 代表取締役の高原幸一郎⽒
Image credit: Masaru Ikeda

秋田県美郷町とは観光二次交通(JR 大曲駅からの移動)に NearMe を活用したシャトル交通の運用(今年6月10日〜8月12日)、三井不動産(東証:8801)や ShareTomorrow とは日本橋エリア MaaS「&MOVE 日本橋」の共同実施(今年9月4日から2回目の実証実験)、ウエインズトヨタ神奈川とは同社が今年買収したプロバスケットボールチーム「横浜ビー・コルセアーズ」の10月21日の試合に、会場となる横浜国際プールまでのシェアタクシーの仕組みを提供する。

NearMe は独自 AI を活用しタクシーをシェアすることで、安価でスムーズな移動体験を提供する「スマートシャトル」を展開している。2019年に開始した空港送迎版のスマートシャトル「near.Me Airport」では、全国13の空港と周辺都市をドアツードアで結び、これまでにのべ30万人が利用しているという。near.Me Airport 以外には、ゴルフ場送迎の「nearMe. Golf」、貸切送迎シャトル「nearMe. Limo」など用途に応じたメニューを開発している。

NearMe は、楽天グループ内でケンコーコム(現 Rakuten Direct)の執行役員、アメリカ OverDrive の副社長/取締役、フランス Aquafadas の CEO を歴任した高原幸一郎⽒により2017年7月に創業した。これまでに日本政策金融公庫からのデットを含め、累積で約23億円を調達している。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する