ローンチ2年でZapierが買収、Makerpadの軌跡——プログラミングスキル無しで、イグジット可能な事業を構築

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Image credit: Makerpad

起業を夢見る人や革新的なアイデアを具現化したい人にとって、コミュニティやプラットフォームを構築することは一つの目標だ。しかし、テクノロジーの進化により、起業やアイデアの実現方法は大きく変わった。Makerpad の成功は、この新時代における興味深いストーリーの一つと言える。

Makerpad の創業者 Ben Tossel 氏は、技術的なバックグラウンドがなかったにもかかわらず、ノーコードツールを駆使してアイデアを現実にし、成功を収めた。彼はリッチなノーコードティーチングプラットフォームを築き上げ、さらにはノーコード自動化ツールとして知られるZapierに注目され、最終的に買収された。

Tossel 氏は、プログラミング素養のないビジネススクールの学生だったが、Product Hunt での勤務時に、自分のプロジェクトを構築している人々に触発され、自身のプロダクトを作りたいという願望を抱くようになった。また、Product Hunt で Bubble、Webflow、Zapier といったノーコードツールの成功と人気に気づき、これらを組み合わせて、プロダクトを作れると考えた。

Tossel 氏はその後、IndieHacker で「動画オンラインコース」の会社が成功したのを見て、そのビジネスモデルのヒントに、数年前にノーコードのチュートリアル動画をアップロードする web サイト「newCo」を立ち上げた。彼は Typeform を使ってサービスのアイデアを説明したところ、サービスローンチと同時に12人から料金の支払があり、手応えを感じたという。

滑り出しは順調に思えたが、事業を多目的プラットフォームへと急成長させようとしたとき、彼は困難にぶつかった。多目的プラットフォームでは、ノーコードのチュートリアルを提供するだけでなく、ハッカソンのようなイベントを開催し、一度にさまざまなタイプのユーザに対応しようとしていた。しかし、この多様化戦略でポジショニングがわかりづらくなり、結局、このサイトは閉鎖することになった。

Tossel 氏はこの挫折を経て、2019年に戦略を見直すことを決意し、提供価値をシンプルに集中することを選択した。彼は Makerpad を再スタートさせ、今度は明確で唯一の目標、つまりノーコードツールの使い方を教えることだけに集中することにこだわった。この戦略変更で、より質の高いコンテンツとユーザ体験を提供することができるようになった。

Makerpad ローンチ初期の頃、Tossel 氏はフルタイムの仕事を続けていたため、毎月メンバーに新しいコンテンツを提供し続けなければならないというプレッシャーを抱えていた。この課題を解決するために、彼は169米ドルの永年メンバーシップモデルを採用した。現在では、Partner、Basic、Professional、Team といった用途に合わせた複数の料金メニューが設定されている。

また、Makerpad の構築・運営には、Webflow(web サイトの構築)、Memberstack(メンバーシステム)、Airtable(コンテンツデータ管理)、Jetboost(フィルターと検索)、Zapier(自動化)、ConverKit(メールマーケティング)といった複数のノーコードツールが利用されている。

Makerpad がノーコードの領域で突出していること、そしてコミュニティで人気があることから、Twitter での議論が転機となった。あるユーザが「誰かが Makerpad を買うべきだ」と発言したところ、ノーコード自動化ツールで有名な Zapier の CEO が興味を持ち、Tossel 氏に接触した。2人は過去にノーコードのイベントで顔見知りだったため、話はトントン拍子に進んだ。

Makerpad は当時、約40万米ドルの ARR(年間定期収益)を出していたので買収されることは必須ではなかったが、Tossel 氏は Zapier に買収されることに潜在的価値を見出し、両社双方に大きな利益をもたらすと信じていた。2021年3月の Zapier による買収を受けて、Makerpad は短期的な財務課題を感じずに大規模なプロジェクトを実行できるようになった。

Makerpad 買収は Zapier にもメリットをもたらした。Makerpad の1万人を超えるユーザコミュニティにはノーコードプロジェクトやビジネスの創造に情熱を燃やす人々が多かったため、彼らは Zapier の潜在的ユーザにもなり得ることがわかったのだ。これは Makerpad のコミュニティドリブンのビジネスモデルが、Zapier がアプローチできる市場チャネルを広げることを意味する。

Makerpad の成功によって、ノーコードツールがいかに伝統的な起業家やビジネスモデルを破壊しうるかが明らかになり、技術的バックグラウンドを持たない人々がアイデアを具現化できるようになった。Makerpad がサービス構築のために使ったツールの数々も、アイデアの検証から製品の市場投入までのプロセスを加速させ、ビジネスの革新性を強化していることがわかる。

もはやプログラミングできないことは、テック系スタートアップを始められない理由にはならない。「車輪の再発明」は必要ないからだ。そして、全てを一からスクラッチで構築しなくても、それまでの他の人々が築き上げてきた叡智の上に乗ることで(もちろん彼らに畏敬の念を抱くことは忘れずに)、新しいバリューポジションを生み出すことができるのだ。

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