来年発売待望の「GTA6」、予告編が2日間で再生1億回突破——ジェネレーティブAI導入で加速するゲーム開発

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「グランド・セフト・オートVI(Grand Theft Auto VI)」
Image credit: Rockstar Games

Rockstar Games が5日に公開した「グランド・セフト・オートVI(Grand Theft Auto VI)。以下、GTA6 と略す)」の予告編は、わずか2日間で1億回以上再生され、有名 YouTube チャンネル「MrBeast」の24時間再生回数記録を更新した(ミュージックビデオ部門を除く)。

前タイトルから10年以上が経過しているにもかかわらず、この再生回数は、ゲーマー達が長期にわたり、このシリーズを愛していることの証だ。2025年の正式発売まで、GTA6 にジェネレーティブ AI を取り入れるかどうかは未定だが、Rockstar Games の親会社 Take-Two Interactive のジェネレーティブ AI への投資は、AI がゲーム開発プロセスをどのように変えるのか、市場の注目を集めている。

開発費高騰の中、ジェネレーティブ AI 採用の動きを加速させる Rockstar Games

Rockstar Games は高予算、高品質の 3A タイトルを提供することで定評があるが、ゲーム開発費の高騰が続く中、Rockstar Games の親会社 Take-Two Interactive の CEO Strauss Zelnick(ストラウス・ゼルニック)は、11月に開催された Paley International Council Summit で、Meta の元グローバル報道関係担当副社長 Campbell Brown 氏とのインタビューに応じ、ゲーム業界におけるジェネレーティブ AI 技術の導入について楽観的な見方を示した。

Rockstar Games の親会社 Take-Two Interactive の CEO Strauss Zelnick 氏
Image credit: Take-Two Interactive

Zelnick 氏はまた、ゲーム開発におけるジェネレーティブ AI の最も可能性の高い分野は「NPC(Non Player Character、ゲーム上でプレイヤーが操作しないキャラクターのこと)との対話」であり、ジェネレーティブ AI を使用してキャラクターのダイナミックな対話をデザインすることで、キャラクターの位置づけをより立体的にし、ゲームの面白さを高めることができると語った。

Rockstar Games やその親会社である Take-Two Interactive は、AI 技術の導入にどれだけの資金を投入したかは明らかにしていないが、Rockstar Games が公式サイトで AI 技術を持つプログラマーを公然と多数募集していることは、今後ゲーム開発における AI の応用を加速させていくことを示唆している。

AI 技術はすでにゲーム開発者に深く根付き、ゲーム開発期間の短縮に貢献

「Aztec Spirit Run」
Image credit: Titan AI

ゲーム開発への AI 技術の導入は目新しいものではなく、GTA5 では AI が導入され、「Sentient Streets」と呼ばれるモジュールを使って、プレイヤーはミッション中に30人以上の AI を搭載した NPC と対話することができた。音声合成スタートアップの ElevenLabs との提携によりキャラクターの声が作られ、プレイヤーがキャラクターと音声で対話できるようになっている。

Titan AI は、Scenario の 共同創業者 Victor Ceitelis 氏と、SmartNews の元アメリカマーケティングアソシエイト Fabien-Pierre Nicolas 氏によって設立された、AI を取り入れたゲーム開発のもう一つの例である。

Titan AI は、ゲーム開発プロセスにジェネレーティブ AI を導入することに重点を置く Scenario の継続的な取り組みであり、開発者がゲーム情報を利用して AI をトレーニングし、ゲームの世界で特定の文化が十分に表現されていないことに対処するスタイル固有の要素を生成できるように支援する。

Titan AI の創業者はそれぞれ、LGBTQ+ コミュニティとラテン系コミュニティの出身であり、多文化的な背景から、ゲームにおける多様なキャラクター表現の重要性を認識している。例えば、Titan AI 初のデモゲーム「Aztec Spirit Run」は、これまで疎外されてきたコミュニティを主人公にしたパルクールゲームだ。これは、中南米が略奪や財宝を盗む場所としてゲームに登場することはよくあるが、その文化の人々がゲームの主人公として登場することはほとんどないことにチームが気づいたからだ。

「Scenario」
Image credit: Scenario

2021年に設立された Scenario は、同じスタイルのゲーム資産を自動的に生成する AI の能力に焦点を当てており、ゲーム会社はゲームスタイルの一貫性を犠牲にすることなく、限られた時間枠内でより迅速かつ効率的に新しいゲームを開発することができる。

Scenario は、AI が同じスタイルのゲーム資産を自動的に生成する機能に焦点を当てており、ゲーム会社はゲームスタイルの一貫性へのこだわりを捨てることなく、限られた時間枠内でより速く、より効率的に新しいゲームを開発することができる。

TechCrunch によると、Scenario の共同設立者 de Maistre 氏は、サービス開始から2年で、5,000人がこのサービスを利用するためにサインアップし、20,000人がまだこのプラットフォームへのサインアップを待っていると主張している。

研究開発の合理化と新 AI ツールの導入、どうバランスを取るか

AI 技術の導入は、新しい技術に対応するための新常識だが、ゲームの研究開発に新しい技術を投入することで、さまざまな議論も生まれている。

Zelnick 氏は、AI の導入がいかにチームが新しいゲームコンテンツをより早く作るのに役立つかを語る一方で、AI の導入によって他の競合企業も自社と同じような成果を生み出すことができるようになるとも指摘している。つまり、Rockstar Games のチームが新技術の可能性を見出している一方で、他のチームも新しい AI ツールを使って新製品を発表できるようになり、市場の競争が激しくなるということだ。

さらに、ジェネレーティブ AIは 、その導入以来、著作権の分野で多くの注目を集めている。AI が大規模な作品を生み出すまでには、大規模なデータ収集とトレーニングが必要なため、多くの AI イノベーションは、トレーニングに使用されたデータの出所を明確に説明していない。

例えば、今年初め、有名な画像ライブラリ「Getty Images」は、画像ジェネレーティブ AI「Stable Diffusion」を開発するスタートアップ Stability AI が、著作権で保護された何百万枚もの画像を違法にコピーし、自社の web サイトで使用しているとして著作権法違反で訴えたが、このようなケースは近年、さまざまな業界で発生している。

NPC のデザインからゲームコンテンツのパーソナライゼーションまで、新しいテクノロジーの導入はゲームの高度化に役立つ能力を持つが、ジェネレーティブ AI の使用はさまざまな欠点を生み出し、一夜にして開発者への好意に影響を与える可能性がある。

ジェネレーティブ AI がゲームの研究開発の状況を静かに変えつつある一方で、ゲーム開発者は新技術の導入に慎重になり、研究開発コストの削減と AI の活用のバランスを取りながら、プレイヤーにとってより魅力的なゲーム体験を生み出す必要がある。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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