AIの目がライフガードを支援、プールの安全安心を提供する「SAFE SWIM」

左から:ビジネスディレクター Junxian Liu(劉軍顯氏)、CEO Jingru Chen(陳靖儒)氏
Photo by Junwei Hou(侯俊偉)

ライフガードにとって最も見たくないものは、誰かが溺れている状況だ。誰かが水の上でバタバタと助けを求めて叫んでいたら、それは必ずしもその人が溺れていることを意味するのだろうか? もしかしたら、それはバシャバシャと水面を打つ初心者かもしれないし、ゆっくり泳ぐ高齢者かもしれない。しかし、ライフガードがそんな普段と変わった状況に注意を払っている間に、隣では息を止める練習をしていた人が沈んでいたり、本当に溺れていたりするかもしれない。

溺れる状況は予測不可能で、1人のライフガードが何十人ものスイマーに対応しなければならないため、安全上の盲点が多く発生する。そこで Fortune AI(富據智能科技)は、ライフガードが緊急事態にいち早く対処できるよう、AI を活用したスマートプール支援警告システム「SAFE SWIM」をローンチした。この製品はすでに台北市の大安スポーツセンター(大安運動中心)で導入されている。

台北市の大安スポーツセンター(大安運動中心)で導入されている「SAFE SWIM」
Image credit: (富據智能科技)

台湾には有資格のライフガードは3,800人しかいませんが、プールは何千もあり、多くのスポーツセンターはライフガードを見つけることができません。(CEO Jingru Chen=陳靖儒氏)

それだけでなく、ライフガードは複数の仕事を同時にこなさなければならないこともあり、常にプールの隅々まで目を配れるとは限りません。清掃をしなければならないこともあれば、人数を数えなければならないこともありますし、ドレスコードを守っていないスイマーに注意しなければならないこともあります。(ビジネスディレクター Junxian Liu=劉軍顯氏)

人手が不足する中、Fortune AI は画像を使って、本当に溺れているかどうかを識別するシステム SAFE SWIM を開発した。

私たちはライフガードに取って代わろうとしているのではなく、むしろ本当に重要なことに集中できるようにしようとしているのです。(Chen 氏)

3つの指標で危険を判断

SAFE SWIM の画像認識はどのように溺れているかどうかを判断するのだろうか

Chen 氏によると、このシステムは「泳ぐ姿勢」「継続時間」「移動速度」という3つの指標に基づいて、スイマーが危険な状態にあるかどうかを検知する。

まず、スイマーの泳ぎ方が異常かどうかを見極め、異常と判断された場合、その状態が続いている時間を計測する。さらに、異常な泳ぎ方が一定秒数以上続けば、スイマーの移動速度を検出する。最後に、スイマーの動きが遅すぎる場合、事故の可能性をライフガードに知らせるアラームが鳴る。

しかし、アラームが鳴っても、ライフガードがスイマーの位置を素早く把握できなければ、問題を解決することはできない。SAFE SWIM では、プールを2.5メートル区切りのブロックにわけている。アラームが鳴った時にライフガードが危険が起きている場所を素早く把握し、すぐに救助に向かうことができる。

SAFE SWIM では、プールを2.5メートル区切りのブロックにわけている。アラームが鳴った時にライフガードが危険が起きている場所を素早く把握し、すぐに救助に向かうことができる。
Image credit: Fortune AI(富據智能科技)

〝プール版ミシュラン〟制度を展開

こうして得られたリアルタイムのアラームデータの蓄積を、Fortune AI は無駄にするつもりはない。

SAFE SWIM は、すべての履歴データをクラウドベースのプラットフォームにまとめ、人流分布やリスク分布などの統計データを作成する。これにより、業界は危険の発生頻度が高い時間帯や場所を知ることができ、さらにライフガードの人員配置などを調整することができる。これらは、今後の施設のデジタルトランスフォーメーション(DX)に役立つ基盤となる。

リスクマップを生成すると、危険の発生しやすい場所を知ることができる。
Image credit: Fortune AI(富據智能科技)

SAFE SWIM はすでに台北市の大安スポーツセンターに導入されている。Fortune AI はサブスクでこのシステムを施設に提供している。プールに設置してある既存のカメラが1080P以上であれば、映像を直接システムに取り込むことができ、料金はプールの面積に応じて決まる。Fortune AI はパブリックセクターだけでなく、民間企業とも積極的に協力し、ホテルやクラブ、その他の施設への機器導入も進めている。

将来的には、Fortune AI は飲食業界におけるミシュランの認証に倣い、SAFE SWIM を通じて「安全なプール認証」を確立したいと考えている。

私たちの認証さえ見れば、大人も子供も関係なく安心して泳げるということを、泳ぎに来るすべての人に知ってもらいたいのです。(Liu 氏)

Fortune AI は SAFE SWIM を立ち上げる前にも、AI 画像認識を使って、バスケットボール練習時にゴールを判定しスコアを記録・分析するシステム「Bucket Analytics」を開発していた。将来的には、この技術をより多くのスポーツに拡大し、より多くのスポーツセンターの DX を促進したいと考えている。

起業に関する簡単な Q&A

Q: 顧客や投資家から最もよく聞かれる質問は何か? どのように答えているか?

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【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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