老朽化する水道インフラを、DAOの力で維持してゆく新発想——FRAME00と水処理大手メタウォーターが協業

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Image credit: Unsplash

<20日午前8時30分更新> メタウォーター中村氏の肩書を訂正。

このところ、水道に関わる事故をよく目にする。先月だけでも、沖縄・うるまで、沖縄本島を南北に結ぶ導水管が破裂し、一時は那覇の一部で断水が生じる恐れもあった。静岡・富士でも、水道管に穴が空いたことで、水が出にくくなる状況が生じた。いずれも、一般的に耐用年数が40年程度と言われる水道管の経年劣化が原因だ。日本の高度成長期に埋設された水道管が更新されることなく半世紀を迎え、長さで言えば、実に日本の水道管の約2割が耐用年数を過ぎているというデータまである。

一応先進国であるはずの日本で水道管が適切に更新できないのは、修理・維持に要する人手とコストが原因だ。高齢化と新規就労者の減少から人手不足の影響を受けているのは水道業界とて例外ではない。水道は社会の基盤インフラであるため、万人に安価で提供される必要があるが、設備更新の工事をすれば、そのコストが水道料金に跳ね返ることになる。かくして、水道需要が多くなく事業収入の増加が期待できない地方では、とりわけ水道インフラの老朽化が顕著なのだ。

こうした状況をコミュニティの力で解決しようとする動きが現れた。ノーコード DAO ツール「Clubs」を提供する FRAME00(フレームダブルオー)と水処理大手メタウォーター(東証:9551)が協業し、公共インフラに最適化された DAO を始められる SaaS を共同開発するという。メタウォーターは2011年から上下水道事業の維持・向上のための SaaS「Water Business Cloud(WBC)」を提供しており、共同開発する SaaS は、Clubs や WBC のいいとこどり、融合したようなものになるだろう。

Image credit: Frame00

Clubs は、OSS(オープンソースソフトウェア)開発者の収益化支援を意図した仮想通貨「Dev」と連携し、既存コミュニティの DAO 化を促す仕組みとして構築された。このクリエイターを大事にしようとする考え方に共感を持ったメタウォーター代表取締役会長の中村靖氏が、水道設備の維持・修理に DAO の力を活用できないかとの考えから FRAME00 に連絡を取り、今回の共同開発に話が発展したという。両社は、地域のコミュニティが自分たちの力で社会インフラを守っていく共助の動きを加速させる仕組み作りを目指す。

日本でも地域によっては、住民が自ら小規模な水道施設を維持・運用している例はある。メタウォーターが長年の経験を通じて得た知見やノウハウが WBC に蓄えられており、DAO に参加するメンバーはそれらを利用して、水道の専門家でなくても、インフラの維持に関われるようになるのが目標だ。もっとも水道業界にも法律はあるので、資格を持たない素人がいきなり全ての活動に参加できるとは限らないが、冒頭に書いた課題の山積を考えれば、アーリーアダプタのみならず、行政も国民も、このアイデアの先行きに一見の価値があるかもしれない。

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