音楽ファンから届いた収益をNFTでスマート分配ーー「Rights Bundler」の可能性/Sonic DAO × ACV中谷踏太郎・宮本明佳【ACVポッドキャスト】

Image Credit : Vishnu R Nair

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を取り合い、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト・シリーズです。旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

Sonic DAOはアーティストとファンを繋ぐプラットフォーム開発を手掛けるWeb3プレーヤーです。昨年の春に開催されたWeb3とエンターテインメントをテーマにしたハッカソン「WEB3 x Entertainment Creative Hackthon/Ideathon」にてテレビ朝日ミュージック賞を受賞。同時期に開催されたETHGlobal TokyoでもMetaMask賞を受賞するなど、実績を積み上げる注目株です。

このインタビューではSonic DAOのsuna氏(砂金優介代表)とyuk6ra氏に、web3エンタメハッカソンで披露された「Rights Bundler」を中心にお伺いします。

音楽業界のみならず、クリエイティブの世界で問題になるのが収益の分配です。数多くのステークホルダーに対し、ファンから届いた収益をいかに透明性高くスマートに分配するか。この課題に対し、Sonic DAOのRights BundlerはERC6551規格を使用してクリエイターや著作権、契約をそれぞれ「NFT」としてまとめ、無形資産の取引と管理を効率化するアイデアを提案しました。

ポッドキャストではアクセンチュアの中谷踏太郎・宮本明佳が、ハッカソン参加の背景や開発したプロダクトについてお二人に話を伺いしました。ポッドキャストから一部をテキストにしてお送りします。

ーーお二人ご無沙汰ですね(中略)お二人が参加されたハッカソンの内容についてお聞きしていいですか

Sonic DAO:僕たちが作ったプロダクトとしては、「音楽」がテーマで、内容としては、収益分配の構造にかなり興味あったのが大きかったです。音楽を購入した人が収益を支払ったうえで体験できるっていうような、その流れをもっと透明化するようなシステムっていうものを考えました。

デモとしては、音楽を購入した人じゃないと聞けないプレミアムな体験を提供するもので、具体的に言うとUnityでその体験をデモ的に表現しました。それが結果的に賞をいただいたっていうかたちです。

ーーお二人はまさに「音楽」をテーマにしたチームでしたが、(中略)他の音楽系のチームはどうでしたか

Sonic DAO:結構現場だとポツポツって感じだったんすけども、最終的に提出されたプロダクトを確認すると(中略)割と多かった記憶ですね。

ーー最近いろんな業種のハッカソンがまた盛り上がってきてるんですかね

Sonic DAO:めちゃくちゃハッカソンが多いと思います。Astarさん主催のハッカソンだったり、海外のプロジェクトが日本のエコシステムを広げろっていうことでハッカソンを用意したりだったり、乱立していると思います。(中略)

ーーお二人はいろんなハッカソンはに参加されたという感じだったんですか

Sonic DAO:そうですね。僕に関して言うと、今年2月から結構ちょっとずつ出てるっていう形で、(中略)今年入ってから継続的に出るようにしてますね。

Sonic DAO:僕は4月に開催されたたETH Global Tokyoに参加していました。Ethereum系の開発者たちが日本に集まって、日本人が多分半分ぐらいだと思うんですけど、まさにこのWeb3エンタメハッカソンの期間にETH Global Tokyo主催のハッカソンがありまして。実際Web3エンタメハッカソンでビルドをしてるプロダクトをETH Global Tokyoで提出し、MetamaskのUnity賞をいただきました。なので僕はもうETH Global Tokyoから徐々にやっていて、5ヶ月間ハッカソンに参加し続けていますね。

(中略)

ーーハッカソンを通してプロダクトを改善していくみたいな感じ

Sonic DAO:そうですね

ーー企業の方にはすごくWeb3に詳しい方とか、あるいは、既存の事業に詳しい方がいらっしゃるから直接フィードバックもらえる場というのはいいですよね

(中略)

Sonic DAO:開発を中心にやっていくんですけど、逆にビジネス面は、Web3エンタメハッカソンでプライズをいただいた企業さんと一緒に話し合ったりしてます。そこの中で自分たちが課題感として聞いているのは(中略)事業アイディアをどうブラッシュアップしていくか(中略)。

ーーそのアイデアソンの中で、業界慣習とか、既存の音楽業界の課題みたいなものを吸い上げられてましたね

Sonic DAO:このチームはもともと誰も音楽業界の関係者ではなかったので。今は音楽関連のミュージシャンの方がチームにいるので、みなさんと一緒に業界のことを詳しく知り、それを基に事業化を目指すっていうところを中心にやっていたりします。

ーーどういう課題を解決しようとしたのか。プロダクトの中身をお聞きしていいですか

Sonic DAO:先ほどお話があったように、音楽業界において改善できるところが何点かあると思っており、特に一番課題に思ったのが、収益の分配っていうところはかなり不透明だと思っていました。例えばアーティストと一口に言っても、音楽を演奏する人だったりとか、作詞をする人だったり、CDジャケット作っている人だったり、様々な方がいます。そういった方々に対して、収益分配ってかなり不透明であり、もらう側からしても、その貢献に対してのリターンが返ってこないことでちゃんと打ち込めないであったりとか、変なとこに気をつけなきゃいけないというのが課題だと思います。

Sonic DAO:逆にユーザーからしても、そのアーティストにちゃんとリターンを直接返した方が、気持ちよくお金を払えるっていう側面があると思っています。そこらへんがブラックボックス化されてるので、スマートコントラクトがそこを解決できると思い、そこにまずフォーカスしたっていうところがありますね。

ーーエンタメとか音楽のハッカソンをしたりしていると、どうしてもファン目線のプロダクトを提出するチームが多いんですよ。(中略)ただフィジビリティやブランディングの観点から、ファンサービスってある程度制限しなきゃいけない部分もある。(中略)それに対してお二人のお話は、アーティスト側やその事務所レーベル側に沿ったアイディアで、それがとても素晴らしいなと思いました

(中略)

Sonic DAO:僕らが対象として見ていたのも新しい領域、既存のJASRACさんが分配しているところじゃなくてメタバースとか、AIとかが流行っていくにつれて、著作権がちょっと曖昧になったりだとか、メタバースで音楽のDJとかをやってたりとか、そこの著作権周りどうなんだっていうところからやっぱり疑問とかあります。実際、2019年にはフォートナイトでマシュメロさんという音楽アーティスト兼DJの方がFDJをするっていう音楽ライブがありまして。これが同時接続で1,000万人の人が集まりました。

ーーまさに、テクノロジーの進歩とともに、どんどん音楽の著作権が曖昧になってくるみたいなところがありますね

Sonic DAO:そうなんですよね。本来、一般的な音楽イベントでも1,000万人集めることはまずないんですけど、そこをメタバースが可能にする。新しい領域が可能にする一方、著作権周りどうなのってまだ定義されてないものを、私たちは定義から作っていきたいなという思いがあります。インフラを作るのであれば、音楽を作ってるアーティストが重要だと思うので、まさに実際に音楽を作られてる方と一緒にチームアップしたりとかっていうのを今やっています。(中略)

ーーヒットの要素っていろいろあると思ってるんですよ。僕もレコード会社に以前いたことがあったんですけど、ジャケ買いみたいに音楽を聞かずに、まずそのジャケット写真のクオリティとかを見て買う人もいる。(中略)最近だとダンスがいいとか。そういった人たちにしっかりと分配されるようなシステムがあったら、もっと業界的な盛り上がりができるんじゃないかなっていうのはありますよね

Sonic DAO:そこは解決したい課題であり、今後もっと透明化したり、見えやすくなる社会っていうのは、目指してきたいところだと思いましたね。

(中略)

Sonic DAO:音楽業界の関係者の方々やWeb3系の弁護士さんに、著作権や収益分配のところをまさにヒアリングしていて、チームとして将来的なビジョンをおきつつ、収益分配のシステムがやはり(中略)課題解決のソリューションになるんじゃないかっていうところを今目指してます。

Sonic DAOは現在10人ぐらいですが、みんなで話し合った結果、やっぱり収益分配だよねって話はしてるのでそこは軸として今後も活動、開発していきたいなと思ってます。

ーーせっかくなので技術的なところに関してもお聞きしたいと思います。ハッカソンの中で、例えばどういう技術やツールを使ったか、推しポイントがあればお聞きしたいです

Sonic DAO:今回のハッカソンでいうと、ひとつの音楽に対してNFTを定義しています。音楽の権利について、実際の法律においてもいろんな種類が存在します。例えば(中略)一口に権利と言っても、それに付随する権利をどう扱うかが、課題だと思っています。

Sonic DAO:我々はそこをもう少しわかりやすく、かつひとつの作品に対して「契約NFT」という形で定義しています。例えばYouTubeでカバーしていい権利やお店で流してもいい権利であったりとか、そういったものを分解してわかりやすく使えるように形を示したのが工夫した点だと思っています。

(中略)

ーー収益の分配先のプレーヤーってどんな方々が想定される感じですか

Sonic DAO:最初の例でいえば作詞者や作曲者、演奏者、ジャケットを描く人、マネージャー等がいるかと思います。収益のパーセンテージを、NFT発行した時点でメタデータに書き込むことで、収益分配するコードを走らせ分配することを想定しています。

(中略)

Sonic DAO:ただ(中略)リアルとデジタルの紐づけが今後、分配のシステムを作っていく上では課題になっていくと思っています。まさに弁護士さんともそこをお話しています。World Coinのようなリアルとデジタルの紐づけで頑張っていらっしゃいますけど(中略)ソリューションもどんどん出てくると思っています。

(中略)

ーー収益の分配の仕組みを透明化するところにブロックチェーンを使う話だったと思うんですけど、その分配が透明化されていることを、エンドユーザーにも見える状態になるのか、それとも業界の中でのビジネス向けソリューション的な立ち位置になるのか、どっちになるんですか

Sonic DAO:消費者向けを想定しています。例えばある有名な曲を使いたい時、まずはその曲に紐づく契約NFT(中略)を購入したっていう履歴がブロックチェーン上に残る。1万円払ったときに1万円がスマートコントラクトで処理されて、作詞作曲者、アーティストの方に分配することを想定して作っておりましたね。

(中略)

Sonic DAO:いろいろ作っていく上で、結構UIUXな部分を気にしなくちゃいけないところもやっぱりありますし、アーティストがブロックチェーンに接続するためにウォレットアドレスを持ってるかって言われたらそうとも限らないと思ってまして。(中略)アカウントアブストラクションという技術も必要になってくると思います。

ーーアカウントアブストラクションとはなんですか

Sonic DAO:アカウントの抽象化っていう技術なんですけど、シームレスにユーザーにウォレット与えていける技術でして(中略)それをベースにウォレットを自動生成してあげて(中略)選択肢を増やしてあげる。

ーーブロックチェーンの分散性を損なわない形でユーザビリティを上げるための取り組みだと理解しました

Sonic DAO:そうですね。この辺がやっぱり思想の違いみたいな形にはなると思うので、どこまで分散化を求めるのかとか、僕らはやっぱり提供したい人っていうのは確実にアーティストさんっていうところがあるのでそれに寄り添った思想を持ちつつ、実装も技術もそれに寄せたものを使っていくようなプロダクトを目指したいなって思ってます。

ーー引き続きお2人の活動を楽しみに、また別の形でお会いできたらなと思ってます。受賞おめでとうございます。Sonic DAOメンバーでした。

 

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する