OMO支援から配達料4米ドル均一のフードデリバリまで、米国や台湾で飲食店オールインワンDXサービスが急伸

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新型コロナの影響で人々の消費習慣は変化し、デリバリプラットフォームの台頭により、高いプラットフォーム手数料が小規模飲食店の利益率を圧迫し、事業主は苦境に立たされている。

Owner.com はワンストップソリューションを提供し、こうした小規模店舗に web サイトのデザインや SEO を支援するだけでなく、オーダーメイドの食品注文アプリを作成することで、独自のオンライン注文システムと配送サービスを提供し、デジタルトランスフォーメーション(DX)のコストを削減している。

今年1月、Owner.com は3,300万米ドルのシリーズ B ラウンドを完了した。同社は創業以来、これまでに数千店舗の顧客を獲得している。

レストラン業界を変革するソリューションは数多くあるが、Owner.com はどのように他と一線を画し、路面店を成功に導くのだろうか。

小規模飲食店のためのワンストップマーケティングツール、手数料は無料

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消費者習慣の変化と営業コストの上昇という2つの課題に直面し、飲食店は集客を継続することが大きな課題となっている。チェーン店であれば DX は比較的容易だが、小規模、あるいは個人で経営する飲食店にとってはそうはいかない。

Owner.com の共同創業者兼 CEO Adam Guild 氏は次のように述べている。

小規模飲食店のオーナーは、DX のために少なくとも15種類のツールを使っている。彼らはは、Web デザインや e メールマーケティングツール、年間で数千米ドルにおよぶサブスク代金など、ツールに多くの時間とお金を費やしているが、結果は出ていない。

DX にかかるコストを削減するため、Owner.com は飲食店専用に設計された充実したツールの提供を開始した。

オーナーは月額500米ドルで、アプリや web サイトの開発、CRM ツール、SEO など、充実したマーケティングサービスを受けることができる。また、Owner.com は、飲食店のレッドオーシャンのスタートアップ市場で生き残るために、AI 技術を組み合わせた e メールマーケティングツールを最近発表した。オーナーが伝えたいメッセージを入力すれば、AI がブランドのスタイルやオーナーの口調に合った e メールを生成してくれる。

Order.com を導入した、アメリカのロサンゼルス郊外、サンタモニカにあるメキシコ料理のタパスレストラン「Samos Oaxaca」の web サイト
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デリバリプラットフォーム大手への依存を減らすため、Owner.com はサードパーティの宅配業者と提携した。これを使えば、オーナーは注文の大小にかかわらず、配送料として注文1件につきわずか4米ドルを支払うだけで手数料は不要となる。

この無料は、毎月最大30~35%の手数料を徴収する UberEats などのデリバリプラットフォームと比べ、明らかに手頃な選択肢だ。顧客にとっても、アプリを通じて注文することで、会員レベルをアップグレードしたり、さまざまな割引を享受したりすることができる。つまり、リピーターの可能性が高まるだけでなく、レストランの独立経営力も強化されるのだ。

Owner.com と提携する前、メキシコ料理のタパスレストラン「Samos Oaxaca」はデリバリープラットフォームに大きく依存していたが、高額な手数料のために毎月4,000米ドル以上の赤字を出していた。Owner.com のサービスを利用して以来、同店の経営は大幅に改善され、オンライン注文の売上高は月2,000米ドルから10,000米ドルに急増した。

18歳で学校を中退、母親の小さな店のリニューアルから起業

Adam Guild 氏

Owner.com は、Guild 氏と Dean Bloembergen 氏によって2021年に設立された。起業のきっかけは、Guild 氏が18歳で高校を中退した後、母親の店のリニューアルに成功したことに関係している。

Business Insider とのインタビューで、Guild 氏はこの経験から、小さな店のリニューアルを支援することが自分の使命だと気づいたと語っている。創業当初、Guild 氏は主にレストランオーナーの予約に関する問題を解決することに注力していたが、新型コロナの感染拡大で人々が外食をしなくなると、同社のビジネスは突如として大きな課題に直面した。

より多くのレストランと契約し、絶好調だと感じていた幸福感から、絶望の谷と極度のパニックに陥った。(Guild 氏)

Guild 氏は、危機を脱する新しい方法を見つけなければならなかったと言う。

何百人ものレストランオーナーと話をした後、Guild 氏はデリバリソフトウェアやサービスがレストランのマージンにどれほど影響を与えているかを実感した。

レストラン業界では、マージンは平均5%しかないが、GrubHub のようなオンライン注文プラットフォームは、注文額全体の30%を手数料として取る。

それだけでなく、レストランのオーナーは、デジタル化に対応するために、複数のフロントエンドやバックエンドの管理サービスに対して、年間数千ドルの高額な利用料を支払っている。

以前は、良い料理と良いサービスがあれば十分でした。今ではこれだけでは不十分で、より多くのサービスがオンラインに移行し、人々がレストランを見つける方法さえも変わってきている。(Guild 氏)

この状況を受けて、Guild 氏は、会社の事業目標をレストランの注文管理、マーケティング、デリバリ、オペレーション支援にシフトすることを決め、長年の友人である Bloembergen 氏と手を組むことにした。

2021年の創業以来、Owner.com は数千の顧客を抱え、顧客の数億米ドルの取引を処理し、毎年数千万米ドルの収益を上げるまでに成長した。過去1年間で、顧客数は3倍に増加した。

DX が世界を席巻する中、小規模店舗を大手チェーンと同レベルに

Owner.com は今年1月、シリーズ B ラウンドで3,300万米ドルを調達し、同社の企業価値は2億米ドルに達した。

このラウンドは既存投資家 の Redpoint Ventures、Altman Capital、Horsley Bridge がリードし、Activant Capital と Transpose Platform Management が参加した。現在、Owner.com の累積資金調達額は5,870万米ドルに達している。

Owner.com の投資家で取締役も務める Altman Capital の Jack Altman 氏は次のように語った。

こうした家族経営のレストランに大手と同じテクノロジーを提供することは、飲食業界に活力を与えることに貢献すると思う。

Guild 氏は今後の計画について、エンジニアリングチームとデザインチームへの投資を継続すると述べた。AI メールマーケティングツールに加え、多くの新しいツールを現在開発中だ。

私たちの目標は、こうした小規模店舗がデジタルの波を乗り切るだけでなく、彼らがビジネスをオンラインに移行させながら繁栄し続けられるようにすることだ。(Guild 氏)

アメリカでは飲食業界向けの DX ソリューションに事欠かないが、台湾でも小さな路面店が抱える DX のペインポイントを狙った新しいイノベーションが登場している。

DOTDOT GLOBAL(点点全球)の「QuickClick(快一点)」
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DOTDOT GLOBAL(点点全球)の「QuickClick(快一点)」は、小規模飲食店専用のオンライン注文システムを立ち上げ、顧客が店の LINE 公式アカウントに参加することで、オンラインで注文と決済ができるようにした。また、DOTDOT GLOBAL は昨年、新たな決済サービス製品「DDPay(点点付)」の提供を開始し、注文から決済、会員管理、帳簿記帳までワンストップで統合されたクラウドサービスを完成させた。

料理注文時の決済に特化した台湾の QuickClick と、デリバリサービスやあらゆる DX ツールを提供する アメリカの Owner.com の両社は、外食産業がプラットフォーム大手への依存を減らすことに貢献している。今後、飲食業界の DX は、より多様で独立したビジネスモデルを生み出し、市場に活力と可能性をもたらすに違いない。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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