Archesが4.1億円調達、専門家のインタビューをDB化した「エキスパートナレッジバンク」事業拡大へ

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Image credit: Arches

個人の専門知識や経験に基づく「知見」を効率的に共有するプラットフォームを手掛ける Arches(アーチーズ)は14日、直近のラウンドで4.1億円を調達したと明らかにした。ラウンドステージは詳述されていないが、シリーズ A〜B ラウンド前後と推定される。このラウンドは KUSABI がリードし、VISIONAL(東証:4194)、SMBC ベンチャーキャピタル、グローブアドバイザーズベンチャーズ、名前非開示のエンジェル投資家が参加した。

これは Arches にとって、2021年12月に実施した1.8億円の調達に続くものだ。今回の調達を受けて、Arches の累積調達額は6.4億円に達した。

Arches 代表取締役の加藤洋気氏

Arches は、企業や投資家などのクライアントが直面する経営課題やビジネス上の問題解決に向けて、高度な専門知識や経験に基づく知見を活用できるプラットフォームを提供している。主力の「エキスパートマッチング」サービスでは、クライアントが直面する具体的な課題に対し、関連する専門分野のエキスパートの知見を時間単位で〝借り受ける〟ことができる。売上の半分以上が海外クライアントからの収入となっており、同社ではアジア市場での存在感が特に強い。

一方、今回調達した4億1,000万円の資金は、この既存のエキスパートマッチング事業のさらなる拡大と共に、新サービスである「エキスパートナレッジバンク」の本格的な立ち上げ、展開に充てられる。ナレッジバンクは、これまでエキスパートへのインタビューを通じて蓄積してきた高度な専門知識や経験知を LLM などを使ってデータベース化し、サブスクリプション型でユーザに提供するものだ。他ユーザがヒアリングしたインタビューが了承を得てデータベースとして蓄積されているため、より手軽で安価に専門知識にアクセスできる。

Arches 代表取締役の加藤洋気氏は、エキスパートナレッジバンクの価値を次のように強調した。

デジタル技術が飛躍的に発達する中で、企業組織が外部の高度な専門知識をいかに効率的に取り入れ、自らの競争力を高めていくかが喫緊の課題となっている。エキスパートナレッジバンクでは、AI などの最新テクノロジーと掛け合わせることで、これまで手に入れにくかった専門知識を、低コストで効率的に獲得できるようになる。

Arches の最大の強みは、東南アジアを中心としたアジア市場でのエキスパートネットワークが非常に広範に及んでいる点にある。同社は創業当初から日本や中国に加え、東南アジアを重点市場と位置づけ、さらにはアフリカなどの新興国への事業展開を見据えていた。実際、現在では14カ国出身から成る多国籍の従業員を抱え、ベトナムなどにオペレーション拠点を設けるなど、グローバル体制を整えている。

Arches のベトナム拠点の皆さん
Image credit: Arches

この分野では、エキスパートマッチングに関しては、日本ではビザスク(東証:4490、2021年に Coleman Research を約112億円で買収)や LYNK が、また、エキスパートナレッジバンクに関しては、今週合併(買収)が報じられた AlphaSense や Tegus が競合になり得る。エキスパートの知見を活用したビジネスモデルへの参入企業が増加する中で、プレーヤー間での競争は愈々熾烈さを増しているが、この中で勝ち抜くために Arches はどのような戦略を取るのだろうか。

少なくとも、アメリカ発祥の大手プレーヤーは、英語圏を中心に事業を展開してきた。しかし近年では新興国を含むアジア市場の価値に目を付け始めている。我々は強みであるアジアをはじめとして、エキスパート知見のデータベース化を急ぐ必要があり、早期のグローバル展開が最重要課題だ。

企業は常に外部の高度な専門知識を求めており、デジタル化の進展によりそうした知の獲得競争が一層激化している。エキスパートナレッジバンクは、最新テクノロジーを活用することで、知の民主化、知の流通促進に寄与することができる。我々はグローバルでその基盤を整える。(加藤氏)

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