「パラダイムシフトを先取りし、ユーザに新体験を届ける」——Perplexity CEOに聞いた日本市場への期待と抱負

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Perplexity 共同創業者で CEO の Aravind Srinivas 氏
Image credit: Shun Sasaki

昨今、AI の進歩は驚異的なスピードで進んでいる。創業から2年足らずの期間でユニコーンに成長した Perplexity は、まさにその象徴的な存在だ。BRIDGE では、昨日ソフトバンクとの戦略的提携発表で日本を訪問していた Perplexity 共同創業者で CEO の Aravind Srinivas 氏にインタビューする機会を得た。

2年でユニコーンになれた理由

確かに私たちの成長は非常に速いものでした。しかし、AI の分野全体が指数関数的なペースで進化しているため、この速さは自然なことなのかもしれません。周りの企業も同じようなスピードで成長しており、私たちは特別なことをしているわけではありません。この変化のスピードに単に乗り遅れずに対応できただけです。(Srinivas 氏)

一体どのような体制で、この変化のスピードに対応できたのだろうか。Srinivas 氏によると、現在 Perplexity には約80人の従業員がいて、うち30〜40人がエンジニア、そのうち20人以上が AI 専門家だという。また、デザイナーが7〜10人いて、残りはビジネス、マーケティング、プロダクトマネジメントなどを担当している。

Image credit: Perplexity

製品開発に必要な多様な人材を確保し、AI プロダクト、デザイン、ビジネス、マーケティングの4つの柱を同時に極めることで、変化のスピードに対応できたようだ。AI の会社ながら、デザインを重視している点は興味深い。

AI は一つの技術に過ぎず、それ自体が製品になるわけではありません。ユーザが Perplexity を使う際、回答がどのように表示されるか、UI がどのように機能するか、回答後に何を尋ねるべきかを提案するかなど、そのユーザ体験全体をデザインする必要があります。

時間に関する質問には時間表示の仕方を、株価に関する質問には株価チャートを表示するなど、質問内容に応じて、回答のレンダリング方法を変える工夫もしています。このようなユーザ体験をデザイナーが担当しており、デザインの力が不可欠なのです。

「サーチエンジン」ではなく「アンサーエンジン」

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Perplexity の最大の特徴は、従来のサーチエンジンとは異なり、「質問への回答エンジン」を目指していることだ。ユーザがキーワードを入力する代わりに、自然な質問を投げかけると、AI がその質問に対する適切な回答を自動生成する。昨日のプレゼンテーションでも、Srinivas 氏は Perplexity を「サーチエンジン」ではなく「アンサーエンジン」と呼んでいたのは印象深かった。

確かに、従来の検索エンジンにも AI を組み込んだ機能を持っているものはあります。それらは、トップに要約を示したり、ナレッジグラフを表示したりと、AI 機能を応用する余地はあります。しかし、それでもその根底にあるのはキーワード検索という従来の概念です。私たちが目指すのは、質問に対して自然な回答を行うことで、ユーザがキーワードを入力する必要がなくなる、検索の概念自体を変革することなのです。

確かに、この新しい質問対話型の検索の概念は、ユーザの行動様式自体を一変させる可能性があるだろう。

かつては検索バーにキーワードを打ち込む必要がありましたが、音声対話が実現すれば、質問をするだけで必要な情報が得られます。将来的には、スマートグラスを使ってまわりの景色について質問したり、ヘッドセットを使って気になることについて質問することもできるでしょう。

このようにユーザが簡単に質問できるようになれば、従来の検索バーからリンクをクリックする形式は時代遅れになります。パラダイムシフトを先取りし、ユーザに新しい体験を提供することが、Perplexity の目指す姿なのです。

エンタープライズユースのカギ

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Perplexity はコンシューマ向けに加えて、エンタープライズ向けソリューションも展開している。実際のところ、昨日の発表にあったコンシューマ向けサービスの提携発表よりも前に、Perplexity が日本のソフトバンク、韓国の SK、ドイツの Deutsche Telekom などと発表したのもエンタープライズユースに関するものだ。エンタープライズ向けのアンサーエンジンとは、どういうものなのだろうか。

企業でも従業員が仕事中にサーチエンジンを使う機会は多いはずです。例えば出張前に訪問先の相手について調べる、業界の最新情報を探すなど、企業活動に欠かせない情報を得る際に使うでしょう。そういった企業のユースケースでも Perplexity は役立つと考えています。

ただし、企業は機密データの取り扱いには細心の注意を払う必要がある。エンタープライズ向けの Perplexity もコンシューマ向けと比べ基本技術は同じだが、そうしたデータ漏洩などセキュリティ面でのリスクを払拭した仕様となっているようだ。クラウド上にデータを出すことを望まない企業に対しては、オンプレミス環境で利用できるソリューションも検討しているという。

日本には、日本の AI ソリューション?

Image credit: Shun Sasaki

世界中の AI スタートアップがしのぎを削っている。もっとも AI スタートアップと一言で言っても、LLM のデベロッパも居れば、Perplexity AI のようにユーザエクスペリエンスを変えようとするプレーヤー、さらに、よりアプリケーションに近いレイヤーで革新を起こそうとしているスタートアップもいる。

そんな中で耳にする議論としては、欧米の AI ソリューションは欧米のビジネス文化やライフスタイルと親和性が高く、中国には中国の AI スタートアップがあるし(これは米中のデカップリングや Great Firewall が関係しているが)、日本市場の日本語を話す我々には、日本の AI スタートアップが開発するソリューションが有利なのではないか、というものだ。実際どうなのだろうか。

日本市場での展開については、Srinivas 氏は語気を弾ませながら、次のように語った。

質の高い情報ソースの確保や、言語の違いに起因する課題への対応が必要不可欠です。日本のユーザのニーズを汲み取り、カスタマイズを行うことが重要になります。AI にはさまざまな可能性があり、AI を使わないソフトウェアはどれも、AI で変革できる機会があります。

時代は、サーチエンジンから、質問に対して自然な回答を提供する AI アシスタントの時代へと移りつつある。キーワード入力に頼る従来の検索エンジンは従来のものになりつつあり、音声やスマートグラスなどを使った自然な質問応答インターフェースが主流になる可能性が高い。Srinivas 氏は、日本の起業家に対しても、AI ビジネスへの参入を後押ししたいと語った。

Perplexity は自社開発した AI モデルの API を公開しており、他の開発者やスタートアップがこれを活用して Perplexity に類する質問対話アプリを開発することも可能です。医療相談 AI や有名人の発言を元にした質問対話システムなど、さまざまな活用事例が考えられます。

AI ビジネスには無限の可能性があります。ユニークなアイデアがあれば、ぜひ実現に向けて挑戦してほしい。日本の起業家の皆さんにも AI ビジネスへの参入を期待しています。

AI は日々進化を遂げ、私たちの生活に新たな可能性をもたらしつつある。そんな中で、Perplexityは質問対話型の検索エンジンによって、ユーザ体験に一石を投じようとしている。AI がもたらす未来を切り拓く仲間となってくれることを心より願っている。

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