CyberAgent Pitching Arena 2024(6):企業の脱炭素化支援するCarbonwise、東南アジア全域へ提供を視野

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Image credit: Masaru Ikeda

これは、CyberAgent Pitching Arena 2024年版の取材の一部だ。

サイバーエージェント・キャピタル(CAC)は20〜21日、東南アジアのスタートアップと投資家が参加するピッチイベント「CyberAgent Pitching Arena」の2024年版をタイ・バンコク市内で開催した。日本や東南アジアから10社が登壇し、数十名の投資家が参加した。

サイバーエージェント・キャピタルではかねてから国内スタートアップや投資家を対象に「Monthly Pitch」を開催しているが、その国際展開として、2019年にジャカルタで海外版 Monthly Pitch を開催。以降、2021年1月に第2回目となる東南アジア版では「Monthly Pitch Asia」として、2021年9月に開催された第3回から「CyberAgent Pitching Arena」として運営している(2022年のピッチの様子はこちら)。

イベントでは、サイバーエージェント・キャピタルの取締役・パートナーの北尾崇氏による開会の辞に続き、インドネシア、ベトナム、タイ、日本からのスタートアップ10社がピッチを披露。続いて、投資家から寄せられた質問に対して回答する Q&A セッションが展開された。投資に関心を持った投資家は今後、各スタートアップの代表らにコンタクトすることになる。

今回は、ピッチ登壇したスタートアップ10社のうち、Carbonwise を取り上げる。

Carbonwise(タイ)

Image credit: Masaru Ikeda

タイの Carbonwise は、企業の脱炭素化を支援するプラットフォームを提供している。同社の AI ドリブンのプラットフォームは、企業が直面する脱炭素化の課題に対して包括的なソリューション——炭素排出量の正確な測定、効果的な削減計画の策定、グリーンファイナンスへのアクセス支援——を提供する。

CEO の Natalie Lerthatasilp 氏によると、アジアは世界の炭素排出量の60%を占めており、そのうち80%が企業活動に起因するという。しかし、多くの企業は脱炭素化の道筋を見出すのに苦労している。その主な理由として、現状把握の難しさ、具体的な削減計画の欠如、そして迅速な行動を促す財務的インセンティブの不足が挙げられる。

Carbonwise のプラットフォームは、これらの課題に対応するために、AI を活用した自動データ収集システム、サプライヤーの排出量を標準化されたフォーマットで集計、ダッシュボードでのデータ可視化、炭素排出ホットスポットの自動検出、ネットゼロ目標達成のための実現可能性の高い計画の生成(削減目標、予算、ROI の明確な見通しを含む)といった特徴を持つ。

Image credit: Masaru Ikeda

ビジネスモデルとしては、年間サブスクリプション方式を採用。また、顧客企業と銀行やパートナー企業を繋ぎ、脱炭素化ソリューションへの資金調達を支援する。そこから得られる手数料も CarbonWise にとっては重要な収益源だ。また、同社はタイ証券取引所と提携しており、Carbonwise を上場企業845社に導入する計画が進行中で、彼らのサプライチェーンへの展開も視野に入れる。

技術面では、2つの特許技術が同社の競争力を支えている。1つは企業識別番号のみで炭素排出量を即座に推定する機能、もう1つはタイ商務省のガイドラインに準拠した業界別テンプレート技術だ。これらにより、企業は迅速かつ容易に脱炭素化の取り組みを開始できる。同社のソリューションを利用すれば、企業は脱炭素化の取り組みで従来の3倍の効率化と40%のコスト削減を実現できるという。

現在の顧客基盤は35社で、約100人のユーザが利用中。創業から2年未満という短期間で30万米ドル相当の発注を獲得しており、急速な成長を遂げている。今後、75万米ドルの資金調達を目指し、東南アジア全域での事業拡大を計画している。既に一部の顧客がフィリピン、インドネシア、ベトナムなどでプラットフォームを利用しており、これらの国々のサプライチェーンを通じた拡大を期待している。

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