CyberAgent Pitching Arena 2024(5):人手不足なのに失業が多いタイで、ギグワーカーと企業をつなぐ「DayWork」

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Image credit: Masaru Ikeda

これは、CyberAgent Pitching Arena 2024年版の取材の一部だ。

サイバーエージェント・キャピタル(CAC)は20〜21日、東南アジアのスタートアップと投資家が参加するピッチイベント「CyberAgent Pitching Arena」の2024年版をタイ・バンコク市内で開催した。日本や東南アジアから10社が登壇し、数十名の投資家が参加した。

サイバーエージェント・キャピタルではかねてから国内スタートアップや投資家を対象に「Monthly Pitch」を開催しているが、その国際展開として、2019年にジャカルタで海外版 Monthly Pitch を開催。以降、2021年1月に第2回目となる東南アジア版では「Monthly Pitch Asia」として、2021年9月に開催された第3回から「CyberAgent Pitching Arena」として運営している(2022年のピッチの様子はこちら)。

イベントでは、サイバーエージェント・キャピタルの取締役・パートナーの北尾崇氏による開会の辞に続き、インドネシア、ベトナム、タイ、日本からのスタートアップ10社がピッチを披露。続いて、投資家から寄せられた質問に対して回答する Q&A セッションが展開された。投資に関心を持った投資家は今後、各スタートアップの代表らにコンタクトすることになる。

今回は、ピッチ登壇したスタートアップ10社のうち、DayWork を取り上げる。

DayWork(タイ)

Image credit: Masaru Ikeda

DayWork は、タイにおける深刻な失業問題と企業の人材不足のミスマッチに着目し、特にパートタイム労働者の需要に焦点を当てたプラットフォームを開発した。CEO の Sasiwimon Siangchaeo 氏によると、昨年タイでは81万7,000人以上が失業し、260万人が低賃金に苦しむ一方で、多くの企業が適切な労働者を見つけることに苦労したという。

この問題に対応するため、 DayWork のシステムは3つの主要機能を提供する。

  1. 位置情報技術を活用して近隣エリアの求職者と雇用主をマッチングし、労働者の通勤コストを削減するとともに、企業の人材確保の可能性を高める。
  2. 透明性の高い雇用履歴システムを導入し、欠勤や遅刻、無断欠勤などの情報を自動的に記録することで、雇用主は候補者の信頼性を容易に確認できる。
  3. 雇用主と従業員の双方向評価システムを実装し、プラットフォーム上の雇用コミュニティの質を継続的に向上させる。

DayWork の利用プロセスは簡単で、求職者は個人情報、学歴、希望勤務地、可能な勤務時間、興味のある職種などの基本情報を入力するだけでよい。その後、AI が適切な仕事を推薦し、ユーザはそれを受け入れるか拒否するかを選択できる。雇用主側も、数分以内に候補者リストを取得し、ワンクリックで希望する人材を選択できる。

Image credit: Masaru Ikeda

現在、DayWork は60万人以上の会員を抱え、これまでに8,500万バーツ(約3.7億円)以上の収入を労働者にもたらしてきた。2019年から2023年にかけて、同社の売上は8倍に増加し、昨年には黒字化を達成するという大きな節目を迎えた。この成長の背景には、パートタイム労働需要の増加と、 DayWork のユーザフレンドリーなプラットフォームが大きく貢献している。

さらなる成長を目指す DayWork は、150万米ドルの追加資金調達を計画している。この資金を活用し、東南アジア全域での事業拡大を図る予定だ。特に、病院向け人材サービスなど、より包括的な雇用エコシステムの構築を目指している。ただし、DayWork は各国の労働法の違いを認識しており、現地パートナーとの連携の重要性を強調している。

同社のビジネスモデルは、フルサービスと求人掲載プラットフォームの2種類がある。フルサービスでは、従業員の賃金に加えて15〜30%の成功報酬を課金し、求人掲載プラットフォームでは興味を示した候補者へのコンタクトに対して課金する仕組みだ。現在、フルサービスが収益の約80%を占めており、最も人気のある職種は倉庫スタッフと小売店員だという。

Image credit: Masaru Ikeda

DayWork は単なる求人マッチングプラットフォームではありません。私たちは人々のことを大切にし、企業と労働者の双方にメリットをもたらす効率的な人材ソリューションの構築に取り組んでいます。私たちのプラットフォームは、単に仕事を見つけるだけでなく、長期的なキャリア構築のサポートも目指しています。(Siangchaeo 氏)

タイの労働市場において、特にサービス業では従業員の約20%がパートタイム労働者であり、その市場規模は年間約50億バーツ(約218億円)と推定されている。さらに、ギグワーク市場は年率30%以上のペースで成長しており、 DayWork にとって大きな成長機会となっている。この成長トレンドは、アフターコロナの柔軟な働き方への需要が高まっていることも一因と考えられる。

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