a16zも期待する「企業向け」AI検索のポテンシャル/GB Tech Trend

SHARE:
1億ドルの調達を発表した「Hebbia」
Image Credit: Hebbia

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

企業の「資料」の悩みをAIで解決

「生成AI検索」にさらなる注目が集まっています。先日、AIを用いたドキュメント解析および検索サービス「Hebbia」が1億ドル近くを調達しました。同社は、膨大な量の資料読み込みが発生する、金融や法律などの専門企業向けに生成AI検索サービスを提供しています。HebbiaのAIを活用することで、特定の質問に対してすぐに的確な回答を得られるようになります。

今回の約1億ドルにも及ぶ大型調達のリードを務めたのは、著名VCである「Andreessen Horowitz(以下a16z)」。a16zは以前から生成AI領域に張っていますが、Hebbiaへ投資をした背景には、企業向けだからこその市場ポテンシャルの高さが挙げられます。

検索市場が再注目される理由

一見、Hebbiaのようなサービスは、ChatGPTによって普及した生成AIによる検索体験を、単に企業向けへ拡張したように思えます。しかし、企業に眠るナレッジをいつでも検索できるようにする「ナレッジ検索」の市場はChatGPT以前より登場していました。

たとえば、2018年に2,500万ドルの調達を実施している「Guru」が挙げられます。同社はGmailやSlackで社内外の人とテキストでやり取りをしている最中や顧客との電話中やライブチャット問い合わせ中に、わからない内容が出てきた際、すぐに必要な情報を提案するエクステンション(SlackやChromeに導入できるアドオンサービス)を開発していました。社内のどこにあるかわからない情報をすぐに検索できる、企業向けの「ナレッジインフラ」を構築していたわけです。

これに限らず、企業が社内ナレッジを整理し、従業員に最大限活用してもらうニーズは既に存在していました。このニーズが生成AIトレンドによりさらに加速し、AIによる検索ユースケースが爆発的に広がったことで、企業ナレッジの検索市場が急拡大している印象です。この第一線でグロースを続けているのがHebbiaであると考えられます。

「企業向け」ならではの勝ち筋も

企業向けに振り切ることで、生成AI検索サービスは横展開もしやすい印象です。たとえば、各従業員のパフォーマンスと、希望のキャリアロードマップを分析した上で、足りていないスキルとのギャップを改善するための教育コンテンツを提案するといったユースケースも考えられます。

こうしたアップスキル領域では「Degreed」がすでにユニコーンになっています。社内ナレッジに従業員パフォーマンスを含めることで、企業研修・アップスキル市場も視野に入れられるようになり、成長戦略を多角的に描きやすくなります。

国内ではソフトバンクが6月、生成AI系の検索「Perplexity」と戦略的提携を発表するなど、世界的な規模で「AI×検索」に投資家たちが熱視線を送っていることがわかります。a16zも企業向けのHebbiaだけでなく、過去には「Rewind(現Limitless.ai)」という一般消費者向け生成AI検索サービスに出資しました。

Geminiが思った以上のインパクトを出せておらずGoogleが足踏みしている状況だからこそ、スタートアップや投資家はこの領域を一挙に獲得したいはずです。国内でもこうしたバーティカルの生成AI検索はまだまだ盛り上がるのではないでしょうか。

6月25日〜7月8日の主要ニュース

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する