UB Ventures、地銀9行とコンソーシアム設立——バーティカルSaaSスタートアップの地域展開と地方DX推進

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Image credit: UB Ventures

UB Ventures は3日、全国9つの地方銀行と共同で「地域課題解決 DX コンソーシアム」を設立したと発表した。同コンソーシアムは、バーティカルスタートアップ(特定産業に特化したスタートアップ)の地域展開を支援し、地方の生産性向上と経済活性化を目指す。

コンソーシアムには、鹿児島銀行、佐賀銀行、山陰合同銀行、四国銀行、静岡銀行、常陽銀行、中国銀行、福岡銀行、山口銀行の9行が参加する。

これらの銀行は先ごろ発表された UB Ventures の2号ファンドにも出資しており、地域経済の活性化に強い関心を示している。偶然かもしれないが、参加銀行の多くが西日本に位置しており、明治維新時代の中核地域と重なる点は興味深い。

BRIDGE のインタビューに対し、UB Ventures 代表取締役の岩澤脩氏は、人口減少に伴う地域の基幹産業の空洞化を危惧し、「今の人口推計では、これから10〜20年後には5人に1人の労働力が失われる」と指摘。その上で「テクノロジーを活用して1人当たりの生産性を上げていくことしかできない」と語った。

岩澤氏は、これまでバーティカル SaaS スタートアップの地域展開が難しかった背景として、資金調達の課題や地域事業者との信頼関係構築の難しさを挙げていた。今回のコンソーシアム設立には、そうした課題を解決する狙いもある。

講演するリクルートワークス研究所の古屋星斗氏。コンソーシアムでは、アドバイザーを務める。
Image credit: UB Ventures

コンソーシアムでは、3ヶ月に1回の頻度で会合を開催し、製造業や医療など、テーマ別に以下の3つのセッションを行う。

  • 産業の理解 …… 人口減少に伴う需給ギャップや将来予測についてマクロ面から議論
  • DX ソリューションの学習 …… 各産業課題に対する具体的な DX ソリューションの紹介
  • 地域実装事例の共有 …… 実際の導入事例やDX取り組みについてのパネルディスカッション

これらのセッションを通じて、コンソーシアムでは、地方銀行のデジタルコンサルティング力強化を図る。

単なるビジネスマッチングを超えて、銀行がデジタルコンサルティング力を強化し、バーティカル SaaS スタートアップを地域に展開するのを支援したい。(岩澤氏)

3日に開催された設立式には、各銀行の役員も出席し、リクルートワークス研究所の古屋星斗氏による基調講演も行われた。古谷氏は『「働き手不足1100万人」の衝撃――2040年の日本が直面する危機と“希望” 』の著者として知られ、今回、このコンソーシアムのアドバイザーも務めることとなった。

UB Ventures は今後2年間、このコンソーシアムの型作りを行い、その後、さらなる全国展開を目指すとしている。岩澤氏は「本質的にバーティカル SaaS スタートアップが地域に広がっていけるプラットフォームを作りたい」と意気込みを語った。

この取り組みは、地方銀行の新たな収益源となる可能性を秘めている。人口減少や低金利環境下で従来の銀行業務のビジネスモデルが行き詰まる中、地域 DX コンサルティングという新たな事業領域の開拓が期待される。

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