元Fond福山太郎氏らも支援、YC輩出「Fluently」は今までの英語学習アプリと何が違うのか

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Image credit: Fluently

ビジネスの世界でグローバル化が進む中、英語力の重要性はますます高まっている。しかし、すでに一定レベルの英語力を持つビジネスパーソンにとって、さらなるスキルアップの機会は限られているのが現状だ。この課題に挑戦しているのが、Y Combinator 出身のスタートアップ Fluently だ。

Fluentlyは、AI を活用して実際のビジネス会話を分析し、ユーザに個別化されたフィードバックを提供する英語学習アプリだ。英語はメジャーな言語だが、世界人口のうち、英語を母国語にするのは20%程度に過ぎない。非ネイティブスピーカーを対象にしたアプリ市場はレッドオーシャンだが、Fluently CEO の Yurii Rebryk 氏は、従来のアプリとの違いを次のように説明した。

初心者向けの英語学習アプリは数多くあるものの、英語力が60%から80%のレベルに達した人たちにとって、さらなる上達の手段が限られているのが現状です。そこで私たちは、実際のビジネス会話を分析し、個別化されたフィードバックを提供するアプリを開発しました。常に傍らで最高の英語教師があなたの話す英語を聞いて、その会話の後にフィードバックをくれるようなイメージです。

Fluentlyの特徴は、ユーザの実際の英語での会話を自動的に検出し、分析する点にある。ユーザは特別な操作をすることなく、通常の業務中の会話から学習機会を得ることができる。アプリは発音や語彙の使用、イディオムの適切さなどを分析し、改善点を指摘してくれる。

Fluentlyは2023年12月から本格的な開発を開始し、現在はベータ版として一般に公開されている。開発チームは、ユーザからのフィードバックを積極的に取り入れながら、製品の改善を続けている。最近の大きな変更点として、Rebryk 氏は日々のプラクティス機能の追加を挙げる。

エンジニアなど、毎日英語を使う機会が少ないユーザもいる。そこで、実際の会話に基づいた個別化された練習問題を毎日提供する機能を追加しました。この機能により、ユーザは継続的に学習を進めることができ、実際の会話での改善点を忘れずに練習できるようになります。

左から:共同創業者兼 CTO の Stan Beliaev 氏、共同創業者兼 CEO の Yurii Rebryk 氏
Image credit: Fluently

Fluently の差別化ポイントとして、Rebryk 氏は次のような点を挙げた。

  • 実際のビジネス会話に基づいた学習
  • 自動的な会話検出と分析
  • 個別化されたフィードバックと練習問題
  • 中級者以上のビジネスパーソンをターゲットとした設計

現在、Fluently は、特定の国や地域をターゲット市場には定めていない。しかし、ビジネスプロフェッショナルには英会話が求められるものの、英語を母国語としない日本は、Fluently にとって理想的な市場の一つとも言える。日本のビジネスパーソンにとっては、具体的な使用シーンとして通勤時間の活用なども考えられるだろう。

現在はデスクトップアプリのみだが、ユーザからのフィードバックを元にデスクトップアプリの完成度を高めながら、モバイルアプリの開発も進めています。将来的には、通勤中や休憩時間に、フィードバックを確認したり練習問題に取り組んだりできるようになるでしょう。

Fluently は2024年6月、シードラウンドで200万米ドルを調達した。投資家には、Y Combinator、Pioneer Fund、SID Venture Partners、Dropbox の共同創業者である Arash Ferdowsi 氏、それに、Fond (2023年に Reward Gateway に売却、その後、Reward Gateway を Edenred が買収)の創業者で、現在エンジェルとして活躍する福山太郎氏らも名を連ねる。以前のプレシードラウンドとあわせ、Fluently の累積調達額は250万米ドルに達した。

今調達した200万米ドルという金額は、ウクライナ出身の Rebryk 氏らのチームが現在のサンフランシスコに拠点を置き、サービスをブラッシュアップしていく上で当面必要とされる最適値ということのようだ。Fluently はこの資金を活用し、製品の改善とユーザ基盤の拡大を目指している。Rebryk 氏は現段階では急激な成長よりも、製品の質の向上に注力していると強調した。

現在は、ユーザに愛される高品質な製品を作ることに集中しています。その基盤ができてから、本格的な成長戦略に移行する予定です。私たちの目標は、ユーザの英語力向上を最大限サポートすることです。そのために必要な改善は、どんなものでも積極的に取り入れていきます。

Fluently の挑戦は、言語学習と AI 技術の融合による新たな可能性を示唆している。実際のビジネスシーンに即した、効率的で継続可能な英語学習方法を提供することで、グローバルビジネスの現場で活躍する人材の育成に貢献することが期待される。すでに一定の英語力を持ちながらも、さらなる上達を目指す中級者以上のユーザにとって、魅力的な選択肢となるだろう。

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