経営管理クラウド「Loglass」、Sequoia Heritageらから70億円をシリーズB調達——AI分析機能追加、奉行シリーズのOBCと提携も

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ログラス 創業者 兼 CEO 布川友也氏、オービックビジネスコンサルタント創業者 兼 代表取締役社長 和田成史氏

予算などの経営管理業務を効率化する「Loglass」を開発・提供するログラスは31日、都内で記者会見を開き、シリーズ B ラウンドで70億円を調達したと発表した。

このラウンドは、Sequoia Capital の長期ファンドである Sequoia Heritage と ALL STAR SaaS FUND が共同リードし、MITIMCo(マサチューセッツ工科大学の寄付基金を運営するファンド)、SMBC ベンチャーキャピタル、Moore Strategic Ventures、Angel Bridge、三井住友信託銀行、ニッセイ・キャピタル、住商ベンチャーパートナーズ、パーソルベンチャーパートナーズ、山口キャピタル、みずほキャピタル、三菱 UFJ イノベーション・パートナーズ(MUIP)、Spiral Capital が参加した。

このうち、ALL STAR SaaS FUND、みずほキャピタル、MUIP、Spiral Capital は以前のラウンドに続くフォローオンでの参加。これは、ログラスにとって、2022年4月に明らかにしたシリーズ A ラウンドの調達に続くものだ。今回の調達により、同社の累積調達額は100億円を超えた。

今回の記者会見では、CEO 布川友也氏が同社のこれまでの実績と今後の事業戦略について詳細な説明を行った。ログラスは、シリーズ A ラウンドの期間中に累計導入社数を6倍以上に増加させ、東証プライムやグロースの上場企業を中心に、KDDI、関西電力、味の素、凸版印刷といった大手企業にも導入が進んでいる。

「AI 実績分析レポート機能」
Image credit: Loglass

今回の資金調達を機に、布川氏は、多くの日本企業が抱える「経営のブラックボックス」問題に言及し、データと AI の力でこれを解決する「経営のクリアボックス化」を推進する新たな戦略を打ち出した。

その一環として、同社は31日、生成 AI を活用した「AI 実績分析レポート機能」の提供を開始した。この機能により、企業は多角的かつ正確な経営分析を瞬時に行うことが可能になるという。布川氏はデモンストレーションを交えて、この新機能が経営者や財務担当者の意思決定をいかに支援するかを具体的に説明した。

ログラスの事業戦略は、短期的(2〜3年)には「XP&A 戦略」、長期的(10年程度)には「AI ERP 戦略」の二本柱で構成されている。XP&A戦略では、経営計画の立案から分析までを様々な部門や業界向けに展開。一方、AI ERP 戦略では、AI を活用した統合的な経営管理システムの構築を目指している。

布川氏は2027年4月までの目標として、複数カテゴリでのNo.1獲得、導入社数1000社超、製品・サービス数20以上、社員数500名超を掲げた。これらの目標達成に向け、今回調達した資金は主に二つの分野に投資される。

一つは開発の強化で、新規事業開発やAIエンジニアの採用、海外(ベトナム、インド)での開発拠点設立などが計画されている。もう一つはデリバリの強化で、関西支社の開設、マーケティング・PR 活動の拡充、M&A の実施などが予定されている。

Image credit: Loglass

共同リード投資家の一つである ALL STAR SaaS FUND マネージングパートナーである前田ヒロ氏は、ログラスへの投資理由として、市場の魅力と同社の成長ポテンシャルを挙げた。前田氏によると、グローバルの EPM(エンタープライズ・パフォーマンス・マネジメント)市場は2029年までに118億米ドル規模に成長すると予想され、特に日本市場は年間21.6%という高い成長率が見込まれているという。

また、ログラスの強みとして、顧客からの圧倒的な支持、速い開発スピードと優れた製品品質、常に進化を続けるチーム力を挙げた。前田氏は、「お客様との会話で『なくてはならない』という言葉を耳にするほど、強い支持を得ている」と評価した。

さらに、ログラスは国内大手のERPベンダーであるオービックビジネスコンサルタント(OBC)とのパートナーシップ契約を発表した。OBC の「奉行V ERP クラウド」との連携を通じて、予算策定と実績管理をシームレスに行える環境を提供していく。また、提携により、OBC が持つ全国約3,000社の販売パートナー網を活用した事業拡大も視野に入れている。

布川氏は、この提携について「Fit to Standard」というコンセプトを強調。カスタマイズによるシステム障害リスクを軽減し、標準的なプロセスに基づいた効率的な経営管理を推進していく考えを示した。

今後の展望として、ログラスと OBC は段階的に連携を深めていく方針だ。まずは会計領域での API 連携から始め、将来的には AI を活用した監査業務や予測分析など、より高度な機能の実現を目指すとしている。

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