仕事の支払いまでやる自律型 AI エージェントが登場ーー今日のテックトレンドななめ読み【TechDaily】

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TechDaily は筆者が毎日実施しているテックニュースの斜め読みをまとめたもの。グローバルで気になる資金調達、テックトレンド、スタートアップニュースをまとめて共有する。しばらく不定期更新でお送りします。

ウォルター・アイザックソン著「イーロン・マスク」の中でも顛末が触れられている旧 Twitter こと「X」に関して興味深い話題が入ってきた。Wall Street Journal が報じているもので、Twitter 買収のために借り入れた 130 億ドルの融資が、銀行にとって 2008-2009 年の金融危機以来最悪の合併金融取引となっているらしい。Twitter の弱い財務状況により、銀行はこの負債を他者に売却できず、「ハングディール」と呼ばれる状況に陥っているという。インプレゾンビだらけのソーシャルメディア、そろそろ私も引っ越しの時期が近い。

では、今日もななめ読みしたテックトレンドを共有する。

AI 画像生成技術の進化

ビッグテックによる生成AIの活用で特にすぐ使える有益なものといえば「画像」と「テキスト」だ。これらの工数削減能力は筆者も実感しているが、すこぶる高い。

Adobe が発表した「Magic Fixup」 は、ビデオデータを活用して静止画像の高度な編集を可能にする革新的な技術だ。この AI モデルは、数百万のビデオフレームペアから学習することで、光、視点、動きの変化に対する物体やシーンの変化を理解し、ユーザの意図を保ちながら複雑な画像調整を自動化できる。 Adobe の研究者らによると、ユーザは単純な切り貼りスタイルの操作で画像内のオブジェクトの位置や大きさを変更でき、 AI がそれらの編集を驚くべき洗練さで調整する。動画がわかりやすい。

同時期に、 Ideogram は バージョン2.0をリリース し、テキストのレンダリング能力を大幅に向上させた。これにより、グリーティングカード、 T シャツのデザイン、ポスター、イラストなどに、より長くより正確なテキストを含めることが可能になった。また、カスタマイズ可能なカラーパレット機能も導入され、ブランドの一貫性や特定の雰囲気の表現に役立つとしている。

さらに、 Midjourney も ウェブサイトを一般に開放 し、新規ユーザに約25枚の無料画像生成を提供することを発表した。これにより、より多くのユーザが高品質な AI 画像生成を体験できるようになる。

バーティカル AI 調達

生成AI関連の周辺「ツルハシ」系ビジネスが増える

AI 関連銘柄の調達も続く。ソーシャルコマース分野では、 SleekFlow が 700 万ドルの資金調達 に成功し、アジア市場向けの会話型 AI スイートの開発を進めている。ソーシャルコマースは従来の e コマースよりも急速に成長しており、記事によればアジア太平洋地域だけでも 2028 年までに 8,940 億ドルを超える市場価値が見込まれているそうだ。

AI の発展に伴い、知的財産権の保護が重要な課題となっている。 Story Protocol は、この問題に ブロックチェーン技術で取り組む スタートアップだ。同社は8月に Andreessen Horowitz をリードに8,000万ドルのシリーズ B 資金調達を完了し、企業価値は22.5億ドルに達した。 Story Protocol のブロックチェーンネットワークは、 IP 所有者が自身の IP をプラットフォームに保存し、ライセンス料などの利用条件をスマートコントラクトに組み込むことを可能にする。これにより、 IP が使用された際に所有者が確実に補償を受けられるようになる。

同社の S.Y. Lee 共同創業者は、「ビッグテックは同意なく IP を盗み、すべての利益を独占している」と指摘し、現在の AI の状況が独創的な IP を創造するインセンティブを完全に破壊していると述べている。この資金調達は昨日もお伝えした OpenAI が Condé Nast との提携を発表した直後に行われた。これは、 AI 企業が多くのメディア企業からのコンテンツ利用に関する反発に直面していることを示している。

支払いまでやる自律型 AI エージェント

Skyfire のコンセプトは面白いが実現できるかどうか

これはとても興味深い話題だった。ついに AI が支払いまでやってくれる、というものだ。サンフランシスコのスタートアップ Skyfire は、「AI のための Visa」を目指し、 850万ドルのシード資金を調達 した。 Skyfire のプラットフォームは、ユーザが他社が作成した自律型 AI エージェントに対価を支払うことができるようにすることを目的としている。

一瞬、何を言ってるのかわからないかもしれない。

伝えている VentureBeat によると、Skyfire の共同創業者兼 CEO の Amir Sarhangi 氏は「AI のための FinTech インフラ」を作ろうとしているようだ(シードなので開発はこれから)。同社のプラットフォームは、 AI エージェントが自律的に支払いを行い、支払いを受け取り、残高を保持することを可能にする。これにより、 AI エージェントが買い物や飛行機のチケット予約、新しいアプリやサービス、ウェブサイト、ビジネスの構築など、より高度な活動を行うことが可能になる。

Skyfire のシステムは、エンドユーザが AI エージェントに一定額の資金を提供し、それを代わりに使用させることを可能にする新しい安全な支払いシステムを設定している。ユーザは AI エージェントの支出に上限を設定でき、エージェントに提供する金額も自由に決定できる、としている。

人間が AI に予算を与えてさらに別の AI に仕事をさせる。AI による二次請け、三次請けの話を考える時代がやってくるとは全く思ってもいなかった。

重量級ロケットの時代

話は変わって宇宙産業の話題も続く。TechCrunch に SpaceX の優位性に挑戦する新世代の重量級ロケットが紹介されていた 。 SpaceX は 昨年だけで記録的な96回の打ち上げ を行い、打ち上げ産業で圧倒的な地位を確立しているが、競合他社はこの状況に屈することなく、市場に必要な供給と競争圧力をもたらすことができると主張している。

現在運用中の重量級ロケットには、 United Launch Alliance の Vulcan Centaur 、 ArianeGroup の Ariane 6 、 NASA の Space Launch System 、 SpaceX の Falcon Heavy がある。一方、まだ軌道に到達していない新世代のロケットには、 SpaceX の Starship 、 Blue Origin の New Glenn 、 Relativity Space の Terran R 、 Rocket Lab の Neutron 、 Firefly と Northrop の MLV などがあるそうだ。

裸眼3Dモニターがそろそろ一般に登場

Samsung の Odyssey ゲーミングモニターは裸眼で飛び出す

ガジェットでも面白そうなデバイスがそろそろ一般にお目見えするらしい。 Samsung が gamescom で 新しい Odyssey ゲーミングモニターラインナップ を発表した。この新製品は、アイトラッキング技術を使用して 2D ビジュアルをメガネなしで 3D に変換する。没入型のヘッドマウントディスプレイは装着するタイミングでどうしても腰が重くなる。裸眼3Dは解決策になるか。

Odyssey 3D は 27 インチと 37 インチのサイズで展開され、「今年中」にグローバルリリースが予定されている。このモニターは 4K QLED パネルを採用し、 165Hz のリフレッシュレートと 1 ミリ秒の応答時間を実現している。また、 AMD FreeSync もサポートしている。

この技術は、特殊なレンチキュラーレンズと内蔵のアイトラッキングカメラ、そして深度認識を継続的に調整するビューマッピングを組み合わせることで実現されているそうだ。

話題は多くないがエンタープライズ関連もひとつ触れておく。Grafana Labs が 2 億 7,000 万ドルの資金調達 を完了し、企業価値が 60 億ドルを超えた。同社は、オープンソースのデータ可視化プラットフォームを提供しており、多くの企業の運用ダッシュボードを支えている。Grafana Labs は、インフラストラクチャサービスからのデータを視覚化および分析するためのホストされたサービスである Grafana Cloud と、自己ホスト型の Grafana Enterprise を提供している。同社の製品には、アプリケーションパフォーマンスを追跡するためのトレースシステム、ユーザモニタリング、インシデント対応および管理ツールも含まれている。

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