本稿は、Collision 2020 の取材の一部である。
【26日朝8時更新】訂正線部を削除。
Collision は北米を代表するテックカンファレンスで、昨年、開催地をアメリカ・ニューオーリンズからカナダ・トロントへと移し25,000人の来場者を集めた。今年は新型コロナウイルスの影響でオンライン開催となり、3日間にわたって、パネルディスカッション、プレゼンテーション、記者会見などが繰り広げられた。
ピッチコンペティション「PITCH」には世界中の1,000チーム超からエントリがあった。24〜26日(日本時間)にかけ、複数ラウンドに及ぶ審査がなされた結果、ポーランド発の非侵襲型血糖値測定デバイス「GlucoActive」が優勝した。
本稿では優勝チームに準優勝の2チームを加えた3チームを紹介したい。審査員らは、プロダクトの可能性、ディスラプティブかどうか、財務面での評価、チーム構成、ピッチの品質の5点をもとに評価した。
決勝ラウンドの審査員を務めたのは次の方々だ。
- Eric Hippeau 氏(Lerer Hippeau Ventures)
- John Taht 氏(TD Bank)
- Prashanth Chandrasekar 氏(Stack Overflow)
- Stefan Heuser 氏(Hyundai Cradle)
GlucoActive(ポーランド)
世界保健機関(WHO)の推計によると、世界の糖尿病患者は4億2,200万人に上り、その数は増加の一途を辿っている。GlucoActive は非侵襲的で血糖値を測定可能なデバイスを開発。皮膚を透過しブドウ糖分子にのみ反応するレーザー光を使用することで、患者は痛みを伴わずに血糖値を調べることができる。
同社はこれまでにエンジェル投資家から少額の投資ラウンドを実施済。現在、ポーランド国内の糖尿病専門クリニックで、据え置き型1種類とウェアラブル可搬型2種類のデバイスを臨床試験中で、来年夏の販売開始を見込んでいる。
Sym(アメリカ)
Sym は、さまざまな業界のエンジニアがセキュリティやプライバシー要件に合わせた情報ワークフローを作成できるプラットフォームだ。GDPR(EU 一般データ保護規則)、CCPA(カリフォルニア州消費者保護法)などのデータコンプライアンス規制に対応。
インテリジェントルーティング、マルチチャンネルサポート、エビデンス収集を特徴とし、ユーザは予めシステム上に用意されたワークフローをカスタマイズ可能、企業はワークフローのレビューや内部メンテナンスのための時間や手間を削減できる。
Orai(アメリカ)
Orai は、人前でも緊張せずにスピーチやプレゼンテーションできるよう支援する AI トレーニングアプリだ。ユーザはインタラクティブなレッスンと単語練習で、いつでもどこでもスピーチを録音して練習することができる。すぐにフィードバックが得られ、ゲーミフィケーションによリ、説得力のあるスピーチを明確に、自信を持って伝えるという最終目標に到達することが容易になる。
Orai は、フィラデルフィアのドレクセル大学の工学部に在籍した、英語を母国語としない複数の外国人学生によって設立されたスタートアップだ。自分たちのプレゼンテーションスキルを改善するために Orai を開発した。これまでにプレシードラウンドとシードラウンドを通じて Techstars などから230万米ドルを調達している。
なお、Collision の主催者であり、例年秋にポルトガル・リスボンでテックカンファレンスを開催している WebSummit は、新型コロナウイルスの影響で今年の開催が危ぶまれる中、今年の WebSummit を通常より約1ヶ月遅い12月2~4日に開催することをと発表した。ポルトガルをはじめヨーロッパでの新型コロナウイルスの収束状況を見て、10月に最終判断が決定される予定。
また、WebSummit の CEO Paddy Cosgrave 氏 による記者会見では、WebSummit が香港で開催してきたテックカンファレンス「RISE」を、2021年に日本で開催することにも言及があった(香港情勢にかんがみ、今年の RISE は開催されていない)。Cosgrave 氏は昨年、大阪で開催された G20 の前には、EU コミッションのメンバーとして通称「HIRAI Pitch」で知られた IT 担当大臣(当時)の平井卓也氏と面会していた。
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