WebSummitの北米版「Collision」がトロントで開幕、カナダ随一の都市は北米を担うスタートアップハブになれるのか? #CollisionConf

SHARE:
前夜祭の基調インタビューに応じるカナダ首相の Justin Trudeau 氏。インタビュアーは、イラン出身でカナダで創業、世界最大のマルチプラットフォーム「BroadbandTV」を築いた Shahrzad Rafati 氏。
Image credit: Masaru Ikeda

本稿は、Collision 2019 の取材の一部である。

21日、カナダ・オンタリオ州の州都で、同国随一の都市であるトロントで、スタートアップカンファレンス「Collision」がスタートした。毎年、リスボンに参加者約8万人を集める、世界最大のスタートアップカンファレンス WebSummit が北米版として開催するもので、香港で開催する RISE やインドで開催する Surge と並び、同社のフラッグシップ的存在だ。

昨年まではアメリカ南部のニューオーリンズで開催されていた Collision だが、今年から拠点をトロントに移した。WebSummit が開催拠点をダブリン(アイルランド)からリスボン(ポルトガル)に移した際には、ポルトガル政府やリスボン市から相応の金銭的便宜が図られたことが明らかになっている。

今回、カナダ政府、オンタリオ州政府、トロント市などがそのような動きをしたのかは定かではない。ともあれ、オープニング前夜祭には、カナダ首相の Justin Trudeau 氏やトロント市長の John Tory 氏が登壇し、それぞれ、この国やこの街が持つスタートアップコミュニティの優位性、投資的価値、働く人々の多様性などをアピールしていた。

Image credit: Masaru Ikeda

今回、Collision が拠点をトロントに移す上で重要な役割を担ったのが、Techstars のマネージングディレクターで、トロントを拠点に活動する Sunil Sharma 氏の存在だ。WebSummit の CEO Paddy Cosgrave 氏によれば、Collision をニューオーリンズからトロントに移すことを発表して以来、彼の元には世界中から「なぜ、アメリカからいなくなるの?」「サンフランシスコでやるべきだ」などの意見が多数寄せられたようだ。

しかし、Sharma 氏は数年も前から WebSummit を口説いていて、一方で、カナダ政府や地方自治体政府にも太いコネクションがあり、その種のロビー活動が功を奏して、今回、晴れてトロントで Collision が開催されることとなった。ニューオーリンズで開催されていた際には2万〜2万5,000人を集めていた Collision が、新たなホームでどれだけの投資家や起業家を魅了できるだろうか(ちなみに、前夜祭来場者数は速報値で3,000人とされている)。

<22日深夜1時更新> 主催者は、今回の Collision 2019 参加登録者を25,000人と発表。

カナダの起業家と共に、開会宣言を行うトロント市長の John Tory 氏(中央)。前列左は WebSummit CEO の Paddy Cosgrave 氏、前列右は Collision Co-host で Techstars Toronto マネージングディレクターの Sunil Sharma 氏
Image credit: Masaru Ikeda

トロントやモントリオールを中心としたカナダ東部は、AI スタートアップの聖地でもある。これは、ディープラーニングなど AI に必要な基礎技術が、トロント大学やモントリオール大学で生まれたことが大きく関与している。また、ウォータールー大学に代表される起業の街ウォータールーもトロントから車で1時間半程度。距離的には、シリコンバレーの北端であるサンフランシスコと、南端であるサンノゼの関係に近い。シリコンバレーになぞらえて、トロントとウォータールーを結ぶ401号線(オンタリオハイウェイ)を「トロント〜ウォータールーコリドール(回廊)」と呼ぶ人もいる。

<関連記事>

筆者が話を交わしてみた限り、ニューヨークやサンフランシスコからの参加者も多く、依然としてスピーカーや参加者のプレゼンスはアメリカの VC や 起業家らによって占められている。私見であるが、アメリカのスタートアップカンファレンスは、アメリカ国内市場に特化しているものが多い中、拠点をカナダに移したことで、よりグローバルな視点で、起業家のマインドセットやスタートアップ文化のうねりが広まっていることを期待したい。

本日から3日間にわたって、Collision の模様を現地トロントからお伝えする。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する