京都の地で開催されたスタートアップ・カンファレンス「IVS KYOTO・IVS Crypto」。3日間にわたり数多くのアジェンダが語られ、著者が所属するアクセンチュアもまたいくつかのセッションでその経験を共有してまいりました。本稿では公開可能なセッションを中心に、その内容をレポートいたします。
生成AIの台頭により、企業のビジネスモデルやクリエイターの役割が大きく変化する中、人間の創造性とAIの効率性のバランスをどう保つべきかという論点に注目が集まっています。
このテーマについて「生成AI時代の画像事業化・デジタルマーケティング・クリエイティブの未来」と題されたセッションに登壇したのはアクセンチュア ソングでマネジング・ディレクターを務める久田祐通。
アドビ・シニアディレクターでCDOの西山正一氏、Fotographer AIの代表取締役、鈴木麟太郎氏、サイバーエージェントのジェネラルマネージャー、毛利真崇氏らと共に、生成AI時代のデジタルマーケティング・クリエイティブに関する課題と未来像について語りました。
生成AI時代のクリエイティブとマーケティング
生成型AIの火付け役「ChatGPT」の一般公開が始まったのは2022年11月。翌年の3月にその生みの親、OpenAIが公開したAPI(GPT3.5-turbo)によってサードパーティー系サービスがソーシャルメディアを賑わせたことも手伝い、ChatGPTが世界的なトレンドになったのは周知の事実です。
あれから約1年。
久田は、マーケティングを企業のビジネス活動全体を包括するものとして捉え、その中においてAIが重要な役割を果たすと次のように語ります。
我々は企業のビジネス活動を全部インクルードしたものをマーケティングだと思っていて(中略)その中でいかにお客様との関係性だったり、どうトランザクションを高速化していくのか、密を高めていくのかというところで、生成AIが重要なピースになると考えています。
さらに久田はAIの活用には企業が持つ様々なデータ統合の重要性にも触れました。「企業が持っているデータをどうインテグレートするか。基幹システムも含めて、どうデータをつなげていくのかというのが一番重要で、そのデータをエネルギーとして、企業のサプライチェーンやバリューチェーンを高速化するために、AIを活用していく」。
では具体的に各社は現在、どのような形で生成AIを活用しているのでしょうか?
アドビの西山氏は「以前からクリエイティブとマーケティングをちゃんと融合させて、パーソナライゼーションをしっかりしていきましょうということをずっと言っていた」と述べ、生成AIによってパーソナライゼーションという「理想」が実現可能になってきたと指摘していました。
また、サイバーエージェントの森氏は具体例として「極み予測」AIを挙げます。クリエイティブの効果予測をするAIで「作ったクリエイティブを予測していいか悪いかじゃなく、ワークフローの中に組み込んでいる」(森氏)というお話で、AIがクリエイターの意思決定をサポートする役割を果たしていると述べていました。
一方、AIの重要性が増すことで、改めて強調されるのが人間の創造性です。久田は次のように指摘します。「生成AIでいろんなモデルを作ったり、アルゴリズム作ったりとか、ターゲットのインサイトを抜いたりするんですけど、でもそれはそれでしかなくて。『ジャンプ』って人間で考えなきゃいけないじゃないですか。アイディアのジャンプだったり、クリエイティブのジャンプって。そこは人間がやらなきゃいけない」。
この点にFotographer AIの鈴木氏も同意します。生成AIによるEC・マーケティングの商品画像を生成するサービスを展開する同社もまた、AIの導入によってクリエイターの役割がより高度化すると予測していました。
「Technology Vision 2024」を語る
アクセンチュアではこのほかにも「Technology Vision 2024」を訪問者と語る2日間のサイドイベントも開催いたしました。京都の木屋町にある「Bar&Gallery COCOTO」を会場に、いくつかのフロアに分かれた形で「Technology Vision 2024」「Open Innovation」「Ventures Japan Podcast」を語るネットワーキングイベントです。
Technology Vision 2024は今年のCESで発表し、世界的な反響があったテックビジョンです。「ヒューマン・バイ・デザイン:AI は人間の可能性をどのように引き出すのか」というテーマの元、生成AIは人間の可能性や生産性、創造性を代替したり制御したりするのではなく、むしろ増大させる方向に動くことを示しました。
自律型エージェントやインテリジェント・インターフェイス、空間テクノロジー、ブレイン・コンピュータ・インターフェイスなど、こうした革新的なテクノロジーが人と融合し、「人間味のある」形で社会を変革させる、というビジョンです。期間中はアクセンチュア・ベンチャーズの日本統括を務める槇隆広らが来場者と共にこのテーマを語り、時間を過ごしました。
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