狡猾に戦い、顧客志向で突き進むこと−−GMOメイクショップ向畑氏が語る「競合他社との戦い方と徹底した顧客志向」

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GMOメイクショップ代表取締役社長の向畑憲良氏は、ネットショップ開業サービスの「MakeShop」を運営している。現在は、22,000店舗に導入され、ASPサービスで流通総額1位を獲得するなど、業界を牽引する事業を展開している。

同氏がMOVIDA SCHOOLで語った、競合他社との戦い方と徹底した顧客志向について、まとめた。

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4C分析をもとに自社の強みを把握する

経営においては、企業や事業の競争力を分析する指標である4C分析という枠組みを使う。4Cとは競合(Competitor)、顧客や市場環境(Customer)、自社(Company)、協力者や提携相手(Cooperator)を指す。この4つを分析し、自社の立ち位置と強みをどう活かすかを考えなければいけない。当たり前だが、こうした分析のお勉強で終わるのではなく、これらの分析した結果を武器にして経営戦略を考え、ビジネスとして勝つことが求められる。

No1を目指し、勝つための戦いをすること

資本主義においては、オンリーワンは現実とは相容れない。ビジネスは戦いだ。No1を目指さないといけない。新しいマーケットでない限りは、そこには競合である既存の強者がいる。暫定的であれ、その強者がNo1だ。

No1以外は、すべて弱者だという意識を持たないといけない。だからこそ、弱者は弱者なりの戦いをする。それは、ゲリラ戦だ。目立つのではなく着実に動き、気付いた時には相手を窮地に追い込み、自分たちが勝つための手法を取らなければいけない。

日々の情報収集を欠かさないこと

例えば、競合の情報を事前に察知し、それに打ち勝つためのアクションを経営者は考え、マーケティングや広報や開発などの部隊が一斉に動き出し、相手の動きを封じ込める行動をする。業界初、といった謳い文句を自社が出していくことで、競合優位性を高めていく。

そのためには日々競合の情報収集を行ない、世の中のトレンドを読むなど、あらゆる情報を事前に察知してすぐに動き出せる体制づくりをしていく必要がある。例えば、メイクショップではSNS、掲示板、競合サイトのキーワード、コンテンツ、お知らせを日次で3回チェックして報告するソーシャルチェック体制を敷いている。

徹底した顧客志向を

徹底した顧客志向を持たなければいけない。ここでいう顧客志向とは、単純な分析などではない。顧客のことを見ているつもりになっていないか、聞いてるつもりになっていないかを、過去を振り返りながら検証していくことが大事だ。

新規ではなく、既存顧客を大切にする

立ち上げ期は新規顧客の獲得は重要だが、いつかは頭打ちが来る。いつまでも新規を考えるのではなく、サービスを使ってもらっているファンを大切にしたほうが良い。既存顧客を意識して関係を強固にしていき、そこから優良顧客へといかにつなげていくかを考えなければいけない。

5つの顧客分析

CPM分析(顧客ポートフォリオ・マネジメント)において、購入金額と継続購入期間の2つの軸で顧客を新規、入門、安定、流行、優良の5つに分けて分析していく。それぞれのカテゴリーの指標は各々の事業によって変わってくるが、メイクショップでは新規は初回購入、入門は3ヶ月以内に2回目を購入、安定は3ヶ月以上の継続、優良は7ヶ月以上の継続顧客で分類している。流行はマイブームで離脱する人たちで、その多くは7ヶ月以内の離脱だ。

RFM分析は、最終購入日や累積回数、累積金額で上位顧客だけをアプローチ、フォローする分析方法だ。この分析だと、流行客やすでに固定の優良顧客になった人たちばかりにマーケティングしてしまい、頭打ちになる。そうではなく、いかに新規から入門、安定、そして優良という理想的な顧客パスを作るための施策を考えるかが重要だ。そのためには、顧客にとって必要な情報やアプローチを考え、徹底した顧客目線の開発を実施しなければいけない。

既存顧客を優良化する顧客パスが成長の鍵

メイクショップの過去を振り返ると、既存顧客の優良化へに向けた顧客パスにフォーカスした結果、右肩上がりで成長を続けることが出来た。顧客目線で機能要望を伺っているからこそ、日々様々な機能追加が行なわれている。しかし、要望のすべてを採用することは難しい。だからこそ、何が本当に必要かを考え、取捨選択することも忘れてはいけない。

やるべきことを考え、限られた開発リソースを配分する

思いつきで開発を行うと、後で失敗する。社内の開発は、限りあるリソース配分をするという意味でも、重要な要素だ。社長の独断ではなく、民主的に投票で決めることで、すべての部署の考えや今後の展開を反映させることができる。

やりたいこととやるべきことは違う。社長はやりたいことをやりがち。やるべきことは何かを考え、顧客にとって必要なものをやりぬく強靭な自制心が必要だ。

徹底した現場主義を

徹底した現場主義でなければならない。プロダクト・アウトではなく、マーケット・インだ。そこに実利があるかどうかが大事だ。そのためには、経営者は誰よりもECの現場を知ることが求められる。事業規模が大きくなっても、時間を見つけて顧客訪問を欠かしてはいけない。

創業当時はカスタマーサポートを自分が対応していたが、次第にメール共有だけにし、今ではメールも受け取っていない。なぜなら社内におけるカスタマーサポート体制とフィードバックの仕組みが整っているからだ。だからこそ、コールセンターやオンラインのヒアリングは組織に任せて、自分は現場に足を運び、生の声を聞くことで五感で顧客が考えていることを感じることができる。

狡猾に戦い、顧客志向で突き進むこと

ECは、商品が手元に届くまでのトータルエクスペリエンスが大事だ。MakeShopは単なるカートではなく、商品の仕入れや流通といった川上から、集客や決済などの川中、物流やPOS、印刷や梱包といった川下といったコマースの流通経路すべてを網羅するECトータルプロバイダーを目指している。

いかに、競合環境の中で狡猾に戦い、勝っていくか。そして、徹底した顧客志向で既存顧客を知るための努力をしていくか。これらをもとに、経営者は自社の事業を成長させていくことが大事だ。

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