事業を作るCFOを目指せ−−元mixi小泉氏が語る「事業創造に必要なファイナンスとCFOの役割」

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起業家が率先してやるべきことは数多い。ビジネスアイデア、経営、サービスの運営。それらを発展に導くためには適切なチームビルディングが必要だ。特に必要な事業資金確保はその後のスケールにも大きな影響を与えるため、CFO(最高財務責任者)という存在の重要性は強く意識すべきだろう。

小泉文明氏は、証券会社で数多くのインターネット企業のIPOを経験した後、2007年にミクシィに入社。2008年に取締役CFOに就任し、同社の成長を支えた一人だ。現在は、非常勤顧問をしながら、ネットベンチャーのサポートなどを実施している。

同氏がMOVIDA SCHOOLで語った、事業創造に必要なファイナンスとCFOの役割についてまとめた。

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CFOによる事業成長4つのサイクル

CFOは企業の財務側面から事業推進をしていく存在だ。ここには必要な事業サイクルが存在する。

1)納得度の高いエクイティストーリーの構築
2)資金調達による必要資金の獲得
3)ROIの高い、キャッシュの効率的な使い方
4)結果で証明し、そこから次の資金調達へ

資金調達を活用した企業成長には、この4つのサイクルをいかに上手く回すかが重要となる。これは、シリーズAでもIPOでも同様だ。

エクイティストーリーの重要性

資金の活用でどれだけ事業全体のスケールを大きく描けるか。スタートアップであれば、まずはシリーズAでのエクイティストーリーを考えよう。そして、自身の事業が成功すると仮定し、IPOする際のエクイティストーリーも同時に考えてみることで、より未来を見据えて行動することができる。

よく言われているリーン・スタートアップは、場合によっては小さな規模で考えがちになる。そうではなく、より大きな事業を描くことで、大規模な企業へと発展していく可能性を持つことができる。

楽天のIPOの場合

楽天は、株式市場や融資を活用したM&Aによって、楽天経済圏と呼べる事業展開を作り上げた。そうした事業展開は、IPOで得た資金を元手に買収を繰り返すことで発展を加速させている。投資家に対して十分に納得させるエクイティストーリーと、ファイナンスを通じた企業価値の最大化の施策の重要性を楽天から学ぶことができる。

ミクシィのIPOの場合

証券会社時代にミクシィにIPOの提案をした当時、mixiのユーザは50万人程度。そうした中で、いかに企業価値を高めてIPOを展開するかが命題だった。そこで、2005年当時に「世界初のSNS上場」というストーリーを導き出し、上場提案を実施した。今後、SNSが集客プラットフォームとして、その中でいくつものビジネスが展開されると予測し、そのパートナーとなる企業のM&Aをするために必要な資金をIPOで獲得するストーリーで、2006年のIPOでは結果として1000億以上の時価総額となった。

mixiにおける資金を活用した事業創造

2007年に、SNSのオープンプラットフォーム化構想を策定し、プラットフォーム・エコシステムを作り始めた。ビジネス全体を、他社を巻き込んだ大きなムーブメントとすることで事業推進を図ったのだ。また、エコシステム構築のために、周囲のベンチャーに投資をするためのミクシィファンドを設立。アドブログラムというレベニューバックプログラムも作り資金を投入した。

その後VCやインキュベータとの協業による資金を活用し、複数のLP投資を実施。自社を取り巻く経営環境を総合的に分析し、レバレッジを効かせた投資とリソース配分の最適化によって、より効率的なエコシステムを作り上げることができた。

歴史は繰り返す

これまでにいくつものビジネスが生まれ、栄枯盛衰をたどってきた。そして、まだ日は浅いといわれているネットビジネスでさえも、歴史は繰り返されるという状況をいくつも見てきた。こうした過去から学べるものは多く、業界の歴史をぜひ勉強してもらいたい。プラットフォームにおいては、当時はi-modeの黎明期からの立ち上がりについてはとても参考になった。

事業を作るCFOを目指せ

CFOに必要な役割は、ファイナンスによる資金調達やキャッシュ・フローのコントロール、M&Aや大規模設備投資などの投資戦略が中心だ。必要となるスキルとしては、ファイナンスや会計、税制、リスクマネジメント、投資家対応などが求められる。

しかし、そうした能力以外にCFOに求めるものは、いかに企業価値を最大化し、継続的に評価される環境を作るかだ。そのためには、IRやPRによるコミュニケーションを通じて期待値をコントロールすることが重要。期待値は、上げすぎて痛い目にあうこともある。期待値のバランスを保ち、継続的なコミュニケーションによって信頼を獲得し、次につなげることが重要だ。

受け身のCFOではなく、事業を創造していく積極的なCFOであるべきだ。そのためには、事業を作れる人がCFOを担うことで事業全体が活きてくる。

事業創造の機会を逃すな

事業を創造し収益化するには、新しいチャレンジで新たにユーザに価値を提供すること、ユーザから要望が多いものを作り上げること、他社がやっているものを参考に事業を作り上げること、という3つのバランスを保つことが大事だ。経営者によっては、こうしたバランスの偏りは存在する。それらを把握し、事業機会を逃すことなく、事業ポートフォリオのバランスを最適化したプロダクトやサービスを作ってもらいたい。

スタートアップのチャンスは無限大だ。どんな会社も一台のパソコンから始まっている。ぜひ、大きな夢を持って挑戦してもらいたい。

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