世界の水問題を解決するスマート農業センサー「SenSprout」が注目を集める理由

Takeshi Hirano by Takeshi Hirano on 2015.1.21

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資料提供:SenSprout

日本に生まれ育つとつい忘れがちなのが水資源のありがたさだ。国土の地形や高度なインフラ整備のおかげで、蛇口をひねれば飲めるレベルの水がすぐに手に入る。

一方で地球全体を見たときその大半は海水で、飲み水として使える淡水は全体の3%ほど、北極南極の水(というより氷)を除けば1%ほどになる。この資源を巡っては様々な課題があるようで、国家間の配分、汚染トラブル、気候変動による干ばつおよび水位上昇問題、そして人口増加による取水量の増加が挙げられるのだという。

この壮大な課題にチャレンジしようというのがSenSproutのチームだ。彼らは人間が使う水資源の70%とされる農業用水の非効率をインターネット、そしてものづくりの力で解決しようとしている。

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SenSprout代表取締役の三根一仁氏

「人間の使う水の70%は農業用水なんです。でも、例えば水撒きひとつとっても効率的な方法があると思いませんか?2014年、昨年のアメリカではカリフォルニアの大干ばつが発生しました。一方、ヨーロッパでは雨が降りすぎて農地が水浸しになっている。水の問題は多いんです」(三根氏)。

話をするのはSenSprout代表取締役の三根一仁氏。同社代表の他に企業育成投資、システム開発なども手がける彼が、東京大学の川原圭博氏、西岡 一洋氏らと共に取り組んでいるのがこの無線接続型の農業用センサー「SenSprout」になる。その動きはこちらの動画を見ればよく分かるだろう。

SenSproutは「葉っぱ」のような形をしたセンサーで、雨量と土壌の水分を計測、付帯する無線装置でその情報をスマートフォンなどの端末に送信することができる。このような農業用センサーは特に目新しい技術ではないが、大型農家であれば1000万円規模の投資が必要で、データ取得用にネットワークを構築しなければならないなど「非IT」業種にとっては敷居の高いものだった。

SenSproutはこの壁をいくつかの新興技術の組み合わせによって解決、まだ実証実験中でありながら高い注目を集めるソリューションとなりつつある。先日、飲料メーカーが主催するビジネスコンテストで優勝し、高額の賞金を手にしたところだ。

「技術的には銀ナノ粒子を含んだ特殊な導電性インクを使って、葉っぱ部分に直接回路を印刷しているという特徴があります。また、給電についても無線給電や太陽光など現在いくつか方法を検討中です」(三根氏)。

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資料提供:SenSprout

土壌に埋め込んだSenSproutが刻々と変化する水分量、雨量などの変動を情報として蓄積。例えば冒頭に出てきたスプリンクラーの水の撒き方のような人工的な動きについても、例えばヒートマップ状に散布状況を視覚化すれば、次回から水資源の無駄遣いがなくなる。

計測したデータはBLE(Bluetooth Low Energy)やZigbeeで飛ばし、スマートフォンなどのアプリ側で受信する。どれぐらいの範囲にどれぐらいの数量のセンサーが必要なのか実験を重ね、「今年の夏あたりを目標に実際の事業化を検討中」(三根氏)ということだった。ちなみに法人は既に設立済みとのことだ。

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資料提供:SenSprout

ビジネスモデル的には、センサー端末を低価格(現在検討している価格帯は1本数千円程度)に抑え、計測アプリなどのサービスで課金する方向を考えているということだった。なお、こういったハードウェア系のスタートアップには必ず「量産」という課題が発生するのだが、そこはあまり問題にならないかもしれない。三根氏は、あのCerevoの創業期を支えた一人でもあるからだ。

「川原さんと西岡さんがプロトタイプを開発して実験、ものづくりに関してはCerevoのファウンダーが3人いるのでそこで役割分担ができています」(三根氏)。

IoT(Internet of Things)という言葉がもてはやされ、ややもするとバズワードにしたがるのがメディアだが、その実態はこういった農業や漁業、製造業などの既存産業をいかに効率化し「新しいビジネス」へと変革させるか、という点に考察ポイントがあると思う。

サービス視点で見ても、このSenSproutのようなセンサーは、水の使用効率化だけでなく、取得できるデータから地域の天候予測、食糧問題など、より大きな課題に必要な情報をもたらしてくれる可能性がある。その情報は価値となり、事業スケールも大きくなることが予測されるのではないだろうか。

この小さな葉っぱが世界を変えるかもしれない。

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Takeshi Hirano

Takeshi Hirano

ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現THE BRIDGE)を共同創業。1977年生。(株)THE BRIDGE代表取締役

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