世界で台頭するご近所SNS、開始わずかで500のコミュニティが育まれる日本のご近所SNS「マチマチ」とは

by Yukari Mitsuhashi Yukari Mitsuhashi on 2016.7.5

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ご近所SNS「マチマチ」のWebサイト

都心部を筆頭に希薄化するご近所付き合い。海の向こうにいる人とはいつでも繋がれるのに、ご近所さんの顔は知らないなんてことが珍しくありません。物理的な距離の近さを活かした繋がり方があるはずだと、ここ数年で世界的に「ご近所SNS」ならぬものが登場しています。米国では「Nextdoor」、イギリスでは「streetlife」、オーストリアでは「FragNebenan」、中国では「考拉先生」など、「ご近所」の価値が再確認されようとしています。

日本のご近所SNSと言えば、今年6月頭に日本全国でサービスを開始した「マチマチ」です。先行して東京都渋谷区で3ヶ月ほど試験運用した際に手応えを感じ、全国展開に踏み切りました。渋谷区では、コミュニティ参加者の6割が2日に1度はマチマチを訪れています。既に、日本全国500の地域でマチマチのコミュニティが立ち上がっています。

近所の範囲を定める権限を持つ街の「リーダー」

どんなSNSにも健全なコミュニティが求められますが、参加者間の物理的距離が近いマチマチでは尚更それが当てはまります。安全を約束するためにマチマチが実施するのが、サービス登録時の本人確認。顔写真がついた免許証や保険証、またはマチマチが自宅にハガキを送付し、そこにある登録コードを入力する形。コミュニティの安全のために、全参加者を対象にバックグラウンドチェックも実施しています。

短期間で500を超えるコミュニティが誕生していることからも、ご近所SNSのニーズがあることは確か。せっかく誕生したコミュニティを盛り上げていくためには、地元住民の協力が欠かせません。そのためにマチマチが設けるのが、その街で初めて参加者登録することで「リーダー」になれる制度です。

街のリーダーには、最初の21日間で5人のご近所さん(知人や家族など)を招待することが課せられます。自分の街への思い入れを確認するだけでなく、ひやかしで登録する人を除外する効果も。5人集めることに失敗すると、そのコミュニティは一度閉鎖され、他の人がリーダーになるチャンスが生まれます。地元地域に対して情熱を持つ人が先導することで健全なコミュニティが育まれる工夫です。

近日予定するアップデートでは、このリーダーが「近所」の範囲を定められるようになります。現在は、半径800メートル以内の町名単位で「近所」が定義される仕組み。ただ実際には、地方の800メートルは範囲が狭すぎたり、逆に都心部では広すぎたりするため、そこに住む人の感覚で「近所」を定義できるようになります。

意外と多い独身層

マチマチのデモサイト
マチマチのデモサイト

ファミリー層の利用を想定していたと話す、運営会社 Proper の代表である六人部生馬さん。それはその通りだったものの、独身層の登録が多いことが意外でした。週末はどこかまで出掛けて、仕事が終わって飲むのもオフィス周辺だったりするため、自宅付近を探索する機会が少ないことが起因しているようです。

「独身層にも、地元に知り合いがいないから欲しいというニーズがあるようです。ユーザインタビューでは、3.11の地震の際に知り合いはみんな遠方にいる、またはオンラインにしかおらず心細かったからというエピソードを語ってくれた人もいました。地元だからこそ、行動範囲が駅から家までの直線だったりして、地域の情報を求めているようです」(六人部 生馬さん)

地域のコミュニティに参加すると、自ら投稿する、または投稿に対して返信をするというアクションが主です。投稿される内容を見てみると、不要な自転車を引き取ってくれる相手を探す人がいたり、引っ越してきて間もない人が近所のおすすめの病院を探していたり、ママが小学校や保育園の相談をしたりするなど、ご近所さんの助け合いが生まれています。

この助け合いを促進し、心地よい空間をつくるために設けたのが「ありがとう」ボタン。いいね!やハートのようなリアクションではなく、敢えて「ありがとう」にするのには、「ありがとうと言われるようなことを投稿してほしい」という思いが込められています。実際、渋谷で試験運用をした3ヶ月間のあいだ、参加者がネガティブな投稿をしたことは一度もなかったと言います。

マチマチ立ち上げたの背景

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マチマチ 代表の 六人部生馬さん

オーマイグラスを共同創業した後にマチマチを立ち上げた六人部さん。Ed Techの「Quipper」でエンジニアだった藤村大介さんと共に、2015年夏にマチマチ立ち上げの準備を開始し、同年10月に会社を設立しました。

六人部さんの父親が横浜で40年間不動産事業を営んでいる影響もあり、当初は不動産関連の事業を検討していました。リサーチする中で、現在の不動産サービスにある課題が見えてきたと言います。こだわりの条件で物件を探せるアプリなどの登場で、格段と物件が見つけやすくなっています。

一方で、実際に引っ越した後の満足度はどうかというと、まだまだ向上の余地があるように見受けられました。では、引っ越し先での満足度が高いのはどんな人たちか。それは、その地域に住んでいる友人などを持ち、住み心地やコミュニティの雰囲気を事前に把握した上で引っ越している人たちです。地域の「ソフト面」を理解していることが、満足度を左右することに気がついたのです。

「街のソフト面を誰が理解しているのかというと、当然、そこに既に住んでいる人たちです。それは主婦かもしれないし、そこに長年住んでいるおじいちゃんかもしれないし、その街で働いている人かもしれません。そこに住むご近所さんとの交流が、その街に住むことの満足度を高めてくれるだろうと考えてご近所SNSに辿りつきました」。(六人部生馬さん)

クローズドにとどまらない発信の場へ

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人々が地方を離れて都市化が進むことで、「近くに頼れる人がいない」という悩みを抱える人たちが増えています。家族や親族もいなければ、知り合いもいない。また、地方では高齢化、都心部なら育児や仕事との両立など、それぞれの地域に解決が急がれる課題があります。マチマチが、ご近所さんの繋がりを再び作り出すことで、地域における課題解決がしやすくなるはず。

まだサービス開始から間もないですが、今後は地方自治体などとも連携しながら「良い街づくり」を進めていくとのこと。具体的には、市町村の専用アカウントを設けるなどして自治体からの大事なお知らせが住人に届くようにしたり、防犯・防災情報を共有したりと、一昔前の掲示板に変わる役割を担うことができるのではないかと考えています。

現状のマチマチは、その地域に住む人のためのクローズドなコミュニティですが、将来的には外に向けた発信の場にもなる可能性も。例えば、その地域への移住検討者に対して地域の魅力をアピールしたり、観光客に対して情報を発信したりするようなメディアのような機能を構想しています。そうなれば、地域コミュニティの結束力を高めるだけでなく、マチマチが町興しにも一役も二役も買ってくれるかもしれません。

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