なぜ「北米版食べログ」は勝てないのか?ーーレストランレビューサイトの限界を突く会員サービス「SELECT」

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2017.12.27

北米のレストラン口コミサイトで有名なものに「 Yelp 」や「 OpenTable 」があります。

現地で暮らしていた筆者がディナー場所を探す際には、「まずYelpを見てみよう」とアプリを開き、口コミの高い順からレストランを探していました。先に挙げた2社はどちらもプラットフォーム形式を採用していますが収益モデルが多少異なります。

「Yelp」はレストラン口コミの確認用途で使われることが多いですが、「モバイル版電話帳」を目指していることもあり、レストラン以外の店舗情報も豊富に扱います。

課金ポイントは、ローカル広告検索サポートと店舗プロフィール内容の拡充の2点。2017年度第3四半期の財務レポートでは、2,000万を超えるローカル店舗の内、400万がYelpに登録しており、15.5万店がアプリ・ウェブ内課金をしていると 報告されています

一方、「OpenTable」は食に特化したサービスですので、多くのレストランを掲載しお客を集めるプラットフォーム形態です。レストランの検索から予約までをシームレスに提供するUXを作り出しており、収益モデルは店舗掲載料や予約手数料をレストラン側からもらう形です。

どちらもB2Bから収益化をしている点を見ると、日本で言うところの「食べログ」や「Retty」「ぐるなび」のようなレストラン口コミサービスと同じ構造と言えるでしょう。

口コミ/レビューサイトの課題 :クーポンの限界

Image by  Carol Pyles

口コミプラットフォームには大きな課題点が挙げられます。

よく見かけるのが新規顧客を獲得するために「最初の来店時に5%の割引クーポンを差し上げます」だとか、「飲み物1杯を無料にします」といったクーポンを使った謳い文句です。消費者から見るとお得な情報ですが、店舗にしたら身を削って顧客を集めているわけです。

これは「Yelp」や「OpenTable」に代表される大手口コミサイト上で競合店に勝つために、目を引くインセンティブがないとそもそも予約もしてくれない現状と、レストラン側がこのようなクーポン・割引情報を提供することで新規顧客の中からリピート顧客をなるべく多く作り出したい思惑が相まった結果の施策です。

しかし、消費者からすればクーポンのようなマネーインセンティブの店が行きつけになることはほとんどないのが現状と言えるのではないでしょうか?他人に紹介したくなるほどの行きつけの店となるのは店舗のサービスであったり雰囲気、食べ物の味を含めた総合的なポイントを判断して見つけられるものです。 つまり、消費者はクーポンを手にしただけで、そこが行きつけの店になる可能性は低いわけです。

消費者が探しているのは、ランチではオフィス近く、ディナーであれば自宅近くにある美味しくて毎回通いたくなるレストランであり、大都市に住む年収400-500万円以上ある企業に勤めるようなミレニアル世代は、商品を安叩きするレストランにはろくなお店がないと感じているかもしれません。

一方、レストランはリピート客を作る目的でクーポン提供し続けないと競合店となかなか差別化できず、しかも広告料や予約手数料でさらに収益が下がる負の連鎖に陥っています。

ここに消費者ニーズと店舗側の目的にギャップが存在すると考えています。クーポンが店側の本来の目的を果たさず、客引きのやり方に苦難している図式です。

低価格版ブラックカードサービス「SELECT」

そこで登場したのがニューヨークを拠点にしている「 SELECT 」です。年会費300ドルの低価格版ブラックカードサービスを展開しています。

ニューヨークやサンフランシスコ、ロサンゼルスなど、各地域の担当マネージャーがキュレートした高級レストランのVIPコースを「SELECT」のカード登録さえしていれば体験できるサービスです。

「SELECT」が満たすニーズは2点。行きつけのお店を探したい消費者ニーズと、リピート客を増やしたいレストランのニーズです。

「SELECT」のブラックカード会員になるには年収や職業、趣味などのプロフィール査定を通過しなければなりません。これは、質の良いサービスを提供するレストランを探したいという強いニーズを持った会員コミュニティを作るためのプロセスです。収入が少なく、毎回クーポンを片手にお店を渡り歩くような「一見さん」は弾かれます。査定を通過した会員は、ブラックカードを入店時に見せれば、VIPコースを楽しめます。

ローカルマネージャーは毎月必ず各会員にフォローアップメールを送り、強い信頼関係を築いていることもあり、会員が持つレストランのキュレート力への信頼性は高いです。そのため、口コミに頼らずとも「SELECT」が選んだレストランは全て高品質なサービスを提供してくれるものであると認識されるわけです。

筆者はローカルマネージャーと友人であったこともあり、何度か友人がキュレートしたシーフードレストランや日本料理店に連れて行ってもらいました。その際はレストランのオーナーが出迎えてくれたり、特別メニューを楽しめてかなり充実した内容でした。また、普段「Yelp」を使っても見つけられなかった、何度も通いたいと思わせるレストランばかりに出会えた点に口コミサイトとの大きな違いを感じました。

ブラックカードを持つ優越感と、各都市のローカルマネージャーが厳しく選定したレストランに年会費300ドルで通い放題できるサービスがウケて、「SELECT」は全米で急拡大しています。

創業から約3年でメンバー数は1万人を突破、月の平均カード利用回数は10回前後。利用回数を見ると、会員はほぼ毎週末キュレートされたレストランに通っていると言えるでしょう。

単なる口コミとクーポンだけでは勝てない。必要なのは「キュレート」

Image by  Herry Lawford

「SELECT」のビジネスモデルにおける大きなメリットは店舗側に発生します。これまで大手口コミプラットフォームに登録していたレストランは、SELECTを通じて良質な新規顧客及びリピート顧客候補の囲い込むことができます。メンバー審査では少なくとも年収500万円程度が必要なので、それなりの可処分所得を持っている顧客を獲得できるのです。

また、「SELECT」は年会費を直接集める収益モデルのため、予約手数料をレストランから徴収しません。

選び抜かれたレストラン・ネットワークを、選び抜かれた顧客に対して提供することで、大手口コミプラットフォームの欠点を補うような、消費者と店舗の両方にとってメリットのある、言わば「キュレート版食べログ」として成立しているビジネスモデルです。

このように、今後は単なるマスを狙った口コミプラットフォームではなく、「キュレート」や「パーソナライズ」に焦点を絞ったサービスの台頭が望まれるのではないでしょうか。

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