UberのIPOへ向けた事業選択と、ロボット配達元年ーー6000万ドルを集めた「Shyp」や「UberRush」が撤退した3つの理由(後編)

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2018.4.3

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前編では大手配達代行サービス「 Shyp 」が倒産した理由を2つ述べてきました。後編では、同じタイミングでサービス閉鎖を発表した配車サービスUberが展開した小規模店舗向け配達代行サービス「 UberRush 」の撤退の意味を紐解いていきます。

上場へ向けた選択と投資家が求める安全経営

UberRush撤退の背景を説明するには、輸送企業Uberのミッションを語らなければいけません。同社は膨大な配車ビックデータを収集・分析することで都市交通の最適化を図ることをミッションに掲げて始まった企業です。最終的に都市の交通渋滞を完全に解消し、顧客が最短ルート・最短時間で移動ができる世界を目指しているわけです。

自社輸送データを活用することで生まれたのが、日本でも展開しているフードデリバリーサービスのUberEatsやUberRushなのです。都市輸送の最適化を軸に据えて、輸送に関わる全てのサービス領域へ横展開する戦略を採っていたからこそ始まったサービスであると言えます。しかし手広くサービス展開をしすぎた印象が否めません。

B2Cの配達代行では、競合サービス「 Postmates 」が大きく先行していました。加えて、1回当たり5〜7ドルの収益モデルでサービスを維持するにはそれなりの配達需要が必要となってきます。市場参入のタイミングに出遅れ、収益性や市場競合性において課題が山積したサービスであったといえるでしょう。このような状況の中、Uberは事業選択を迫られた背景があります。

UberのCEOであったTravis Kalanick氏の辞任以降、投資家からサービス黒字化や上場する声が高まりつつあります。事実、新CEOであるDara Khosrowshahi氏は 2019年までの上場を目指す と明言しています。こうした流れから戦略統一化を図る動きが活発化し、明らかに収益性の低いサービスを展開するのではなく、IPOに向けた黒字化への流れが加速することになったのです。言い換えれば、ミッションに忠実に沿った形でサービスを立て続けに立ち上げるフェーズから、収益性を重視した堅実経営のフェーズに移行したということで、UberRushが清算される結果になったのもこういった背景が要因と考えられます。
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ただ、UberRushがサービス閉鎖をする一方、ローカルフードデリバリーサービスのUberEatsは継続が見込まれます。Bloombergによれば、2017年度のフードデリバリー市場占有率でUberEatsが市場第2の15%を占めており、先行サービスのPostmatesやDoorDashを抜いていることから、未だ収益化余地のあるフードデリバリーに事業リソースを集中する戦略が予想されます。

このような投資家や市場から黒字化・上場を迫られる傾向は2015年後半から始まっています。例えばホームクリーナーを派遣するサービスで6000万ドル以上の資金調達を果たしたHomejoyが従業員への契約形態や低賃金支払いの問題により倒産したのは記憶に新しいところです。

同社の一件から、シリコンバレーの投資家は一斉にクラウドソーシング企業に対して安全経営ができるよう、早急な黒字化を求めるようになりました。実際、前述のInstacartは 2015年に配送料の値上げを行い、従業員に対しての賃上げと黒字化へ向けた措置 を行いました。クラウドを事業モデルの根幹に添えている大手スタートアップが、外部から厳しい目にさらされている点もUberRushサービス閉鎖の一因といえるでしょう。

自動配達を制する者が、ラストマイルを制する

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Image by  Elvert Barnes

では、ShypやUberRushがいなくなったラストマイル市場の今後はどうなるのでしょうか。中長期的に見ると、自動配達による活況が考えられます。

すでにPostmatesはロボット企業「 Starship Technologies 」と提携して ワシントンD.C.でロボットを使ったローカル配達の実証実験 を行っています。先日ソフトバンクが投資したDoorDashもStarship Technologiesと実証実験を行っていると同時に、大手レストラン検索サービスYelp傘下のロボット企業、Marbleを買収して自動配達の動きを加速させています。

おそらく1、2年ほどはローカル配達市場におけるスタートアップの登場は沈静化するでしょう。しかしラストマイルに代表される 米国のパーセル(小包)配達市場規模は96億ドル に及びます。堅調な需要を誇る市場において、自動配達ロボットが本格的に投入されるタイミングで市場が再燃することも予想されます。

筆者も何度か利用していたShypが倒産した件は非常に残念に思いますが、クラウドソーシング型のビジネスモデルには限界があることを暗示しているのかもしれません。視点を変えれば、自動運転・ロボットによる自動配達の需要が高まり、急速に市場再編・変革が起きる「ロボット配達元年」が近づいている兆しであるとも考えられます。

日本ではコンビニで配達物受取・発送ができる物流インフラが整っていることから、配達代行が大きなトレンドになってはいません。一方、UberEatsが日本上陸をして順調に成長をしている点を見ると、サービス領域によっては配達代行に対しての消費者需要は確実に眠っていると思われます。こうした点を踏まえて、5〜10年先の自動配達の未来を想像しながら事業を考えると、新たな業態に生まれ変わった配達代行市場が見えてくるかもしれません。

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