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ネット家電スタートアップのCerevo、IoT専門子会社のShiftallを設立しパナソニックに売却——創業者兼CEOの岩佐琢磨氏は新会社に移籍

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ネット家電スタートアップの Cerevo は2日、ハードウェアのアジャイル生産を手がける新会社として Shiftall(シフトール)」を設立し、その全株式をパナソニック株式会社へ売却したと発表した。これまで Cerevo の代表取締役 CEO を務めた岩佐琢磨氏は退任し、Shiftall の代表取締役 CEO に就任する。 岩佐氏は2007年に Cerevo を設立する前、パナソニック(当時は松下…

Shiftall の代表取締役 CEO に就任する岩佐琢磨氏
Image credit: Rick Martin / THE BRIDGE

ネット家電スタートアップの Cerevo は2日、ハードウェアのアジャイル生産を手がける新会社として Shiftall(シフトール)」を設立し、その全株式をパナソニック株式会社へ売却したと発表した。これまで Cerevo の代表取締役 CEO を務めた岩佐琢磨氏は退任し、Shiftall の代表取締役 CEO に就任する。

岩佐氏は2007年に Cerevo を設立する前、パナソニック(当時は松下電器産業)でデジタルカメラの「LUMIX」、レコーダーの「DIGA」などのネット対応家電の商品開発に従事していた。これまでにも、Cerevo はハードウェアスタートアップの支援などを通じて、パナソニックとの協業プロジェクトを実施していた。

一方、今年創業100周年を迎えるパナソニックは、組織の若返りを図り、継続的にイノベーションを打ち出せる体質づくりに向け、いくつかの活動を立ち上げている。昨年にはロフトワークやカフェ・カンパニーと共同で、スタートアップとのコラボレーションスペース「100BANCH」を開設し、大企業のオープンイノベーションを支援する creww とは Panasonic Accelerator を運用。先月オースティンで開かれた SXSW では、同社の新規事業「Game Changer Catapult」から生まれたいくつかの革新的なプロダクトを目にすることができた

パナソニックにとって、今回の Shiftall 買収と岩佐氏の〝招聘〟は、これらオープンイノベーションの活動を社内から加速するための切り札と見ることができるだろう。

<Cerevo に関する記事はこちらから>

CES 2018: Cerevo、誰でもソードアート・オンラインのキリトになれる「エリュシデータ」、バッテリー内蔵小型自動販売機「Qvie」などを公開

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東京を拠点にインテリジェント家電を開発するスタートアップ Cerevo は9日(現地時間)、ラスベガスで開催されている Consumer Electronics Show(CES)で3つの新しいプロダクトを公開した。「1/1 エリュシデータ」「Qvie(キューヴィー)」「Taclim」だ。 「1/1 エリュシデータ」は、アニメ「ソードアート・オンライン」の主人公キリトが使用する片手剣を再現したスマ…

1/1 Elucidator
©2017 REKI KAWAHARA/KADOKAWA CORPORATION AMW/SAO-A Project
©Cerevo

東京を拠点にインテリジェント家電を開発するスタートアップ Cerevo は9日(現地時間)、ラスベガスで開催されている Consumer Electronics Show(CES)で3つの新しいプロダクトを公開した。「1/1 エリュシデータ」「Qvie(キューヴィー)」「Taclim」だ。

「1/1 エリュシデータ」は、アニメ「ソードアート・オンライン」の主人公キリトが使用する片手剣を再現したスマート・トイ。2,000個以上の LED や6軸センサーでアクションに合わせて音と光を発するだけでなく、「スターバースト・ストリーム」と作中のソードスキル名を発声すると特定のアクションが始まる音声認識機能も搭載している。販売想定価格は6~9万円程度。

Qvie
Image credit: Cerevo

「Qvie」は、3G/4G やバッテリーを内蔵した小型の自動販売機。電子ペーパーのディスプレイから QR コードを読み取るか、NFC 対応のスマートフォンをかざして現金不要で決済でき、Airbnb といったシェアリングエコノミーで誰でも無人販売ができるようになる。販売想定価格は3~4万円程度。

Taclim
Image credit: Cerevo

「Taclim」は昨年発表時からコンセプトを一新し、グローブ部を小型のモジュールへと仕様変更することで、手だけでなく全身に触感をフィードバックできるだけでなく、簡単に VR コントローラを開発できるようになった。シューズ部も他社製トラッカーへの対応といったデザインリニューアルを行った。シューズ1足、通信ユニット1個、触感ユニット2個がついて、10~15万円程度の販売想定価格を想定している。

Cerevo では12日までこれらの製品を CES で展示している(Sands, Halls A-D – 43307)。販売開始時期については未定。

Cerevoが中文名「速鋭波」で中国進出、JD Crowdfunding(京東衆筹)でプロジェクタ搭載ロボット「Tipron」のクラウドファンディングを開始

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<ピックアップ> Cerevo(速鋭波)正式開始向中国市場進軍、在京東衆筹平台啓動項目 日本のスタートアップによる台湾・韓国や韓国への進出事例は多くみてきたが、中国への本格的な進出はまだ少ないかもしれない。そんな中、IoT 家電スタートアップの Cerevo が中文名「速鋭波(普通話発音では、〝スー・ルェー・ボォ〟」)」で本格的な中国進出に着手、E コマース大手 JD.com(京東商城)系の JD…

JD Crowdfunding(京東衆筹)上でクラウドファンディング中の「Tipron」

<ピックアップ> Cerevo(速鋭波)正式開始向中国市場進軍、在京東衆筹平台啓動項目

日本のスタートアップによる台湾・韓国や韓国への進出事例は多くみてきたが、中国への本格的な進出はまだ少ないかもしれない。そんな中、IoT 家電スタートアップの Cerevo が中文名「速鋭波(普通話発音では、〝スー・ルェー・ボォ〟」)」で本格的な中国進出に着手、E コマース大手 JD.com(京東商城)系の JD Finance(京東金融)が運営する「JD Crowdfunding(京東衆筹)」上でクラウドファンディングを始めた。現在、Cerevo の製品の中では唯一、変形する映像プロジェクターロボット「Tipron」が出展されており、8月末日のクラウドファンディング終了の向け、本稿執筆時点で34名から支持が集まっている。

中国国家工商行政管理総合局の商標データベースから

中国政府の商標管理組織である国家工商行政管理総合局の商標データベースによれば、Cerevo の中文名は昨年12月に申請されているので(同社によれば、登録完了は今年4月とのこと)、少なくとも半年以上前から、同社は着々と中国進出の準備を初めていたことがわかる。世界中のさまざまな国際カンファレンスに出展し、メディアに取り上げてもらうことで認知度を上げ、日本国外からも多くのファンを獲得するのが同社の戦略だったわけだが、中国向けのマーケティングチャネルにクラウドファンディングが新たに加わることになる。なお、同社はこれまでにも、スマート鍵スイッチの「Hackey」を Indiegogo に出展するなど、欧米向けにもクラウドファンディングを活用している。

via 鴕鳥創投媒体

「攻殻機動隊 S.A.C.」の人気キャラクター「タチコマ」、8分の1サイズのスマートトイとしてCerevoから登場

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アニメの中から現実世界に形あるものとして生み出されたのは、この製品が初めてではない。しかし、この製品は今までになく世界のジャパニメーション・ファンを魅了することになるだろう。 数々のインターネット家電や IoT を発明・販売してきた日本のスタートアップ Cerevo は、アニメシリーズ「攻殻機動隊 S.A.C.」の人気キャラクターである多脚戦車タチコマの8分の1モデルを発表し、自社ウェブサイト「C…

アニメの中から現実世界に形あるものとして生み出されたのは、この製品が初めてではない。しかし、この製品は今までになく世界のジャパニメーション・ファンを魅了することになるだろう。

数々のインターネット家電や IoT を発明・販売してきた日本のスタートアップ Cerevo は、アニメシリーズ「攻殻機動隊 S.A.C.」の人気キャラクターである多脚戦車タチコマの8分の1モデルを発表し、自社ウェブサイト「Cerevo official store」上でプリオーダーの受付を開始した。価格は157,400円(税別)で、商品発送は今年6月を予定している。

タチコマ8分の1モデルは、映画などの作品中に登場するアイテムを、家電のテクノロジーを用いて現実世界に可能な限り再現する Cerevo のプロジェクト「S2R(From screen to the real world)」から生まれた製品で、このシリーズではアニメ「PSYCHO-PASS」の「ドミネータ」に続くものだ。ユーザの問いかけを音声認識し、原作でタチコマを担当した声優・玉川砂記子氏の声で応答してくれる。

タチコマを操作するモバイルアプリの画面(開発中のもの)
Image credit: Cerevo

興味深いのは、タチコマが持つ物体認識機能と音声認識機能だ。例えば、タチコマにりんごを見せ(映像センサー部にカメラが搭載されている)、あるユーザが「りんごは甘いんだよ」とタチコマに対して言葉を掛けると、「りんごは甘い」という情報がクラウドに送信され、他のすべてのユーザのタチコマと情報共有される。ユーザが増え、時を経るに連れ、タチコマが徐々に賢くなっていくさまは、攻殻機動隊が映画の中で描いている世界観ともどこか似ている。

23日に東京・虎ノ門ヒルズで開催された SENSORS IGNITION 2017 で、Cerevo のブースにタチコマ8分の1モデルが展示されていた。展示会場が騒がしかったり、会場の Wi-Fi が混み合っていたりすることもあり、なかなかこの手の場所でユーザの音声認識やクラウドを介しての音声回答は求めるのは、タチコマにとって過酷な要求のようである。会場ではスペースの関係でブースに固定展示されていたが、タチコマの関節や脚部には21個のモーターが備わっているので、スマートフォンから姿勢コマンドを発行することにより、アニメの中でタチコマが演じているような動作も可能だ。

タチコマ8分の1モデルには、本体のバンパー部や砲身カバー部にアルミ削りだし部品を採用した、メタリックボディの「SPECIAL EDITION」も用意され、数量限定で発売される。こちらは177,400円(税別)で、通常版と同じく23日からプリオーダーの受付を開始している。

Image credit: Cerevo

MakuakeがCerevoと業務提携、クラウドファンディングでの新製品開発を開発段階からサポート

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サイバーエージェント・クラウドファンディングが運営するクラウドファンディングサービスMakuakeが、Cerevoとの業務提携を発表した。Makuake上でクラウドファンディングを予定している企業に対して、製品の製造パートナー企業としてをCerevo紹介し、製品化を後押ししていく。 Cerevoは、本誌でも度々プロダクトを紹介したことがあるハードウェアスタートアップだ。常に先進的なプロダクトの開発…

makuake

サイバーエージェント・クラウドファンディングが運営するクラウドファンディングサービスMakuakeが、Cerevoとの業務提携を発表した。Makuake上でクラウドファンディングを予定している企業に対して、製品の製造パートナー企業としてをCerevo紹介し、製品化を後押ししていく。

Cerevoは、本誌でも度々プロダクトを紹介したことがあるハードウェアスタートアップだ。常に先進的なプロダクトの開発を行っている。Makuakeはクラウドファンディングサイトの中でも、新製品の開発やテストマーケティングの目的でプロジェクトが掲載されることが多い。

Makuakeでは、過去本誌で紹介した「アルコールガジェット」のように、大手企業が製造部分を他社に受け持ってもらい製品をつくるというプロジェクトが増加しているそうだ。

テクノロジーで飲み過ぎとおさらば、パーソナライズされる学習型アルコールガジェット「TISPY」

だが、こうした製品は大量のロット数を確保出来なければ社内で製造ラインが確保できず、開発できないといった課題を抱える企業も多かったという。

Cerevoとの提携では、こうした新製品開発における課題を受けて製品の実現性、少量のロット数からでも製造を実現できるCerevoと協力し、新製品の開発に必要なノウハウ・技術面でのサポートを提供する。

ハードウェアに関するプロジェクトが多い一方、そのプロジェクトの実現可能性を判断することは難しい。そのため、クラウドファンディングにおいて資金集めが成功したにも関わらず、製品ができない、といったトラブルが発生することは珍しくない。Cerevoとの提携がプロジェクトの実現性判断等にも活きてくることにも期待したい。

Cerevo陣容の推移といつ何を「自前で」やってきたか

編集部注:本稿は(株)Cerevoの中の人が書く、様々な技術情報を発信するBlog「Cerevo TechBlog」からの転載記事。書いている岩佐琢磨氏は同社CEOであり、国内ハードウェアスタートアップを常に牽引してきた人物。彼の経験は後続する人たちにとって有益と考え、同氏に許諾を頂き転載させてもらった。その他の記事はここで読める。 CEOの岩佐です。最近スタートアップしたばかりの企業や、これから…

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DMM.make AKIBAオープン時にテープの代わりにチェーンをカットした岩佐氏の様子

編集部注:本稿は(株)Cerevoの中の人が書く、様々な技術情報を発信するBlog「Cerevo TechBlog」からの転載記事。書いている岩佐琢磨氏は同社CEOであり、国内ハードウェアスタートアップを常に牽引してきた人物。彼の経験は後続する人たちにとって有益と考え、同氏に許諾を頂き転載させてもらった。その他の記事はここで読める。


CEOの岩佐です。最近スタートアップしたばかりの企業や、これからIoT分野で起業してみたいというご相談を多く受けるようになった。

で、ナニをドコへ頼んでどこまでを自前でやって、どんな人員を採用してなにを担当してもらって、といった部分について相談に乗るのだが、ウチ(Cerevo)はこうやっているよ? という話をするわけなのだが、最近ウチは人数が80名近くに増えてしまったこともあって『今のCerevoの規模の話をされても参考にならん。起業したばかりで数人の頃どうやってやってたのか?』と返されてしまうことが増えた。

別に私の中ではそのへん大して変わっていなくて、今でもCADのデータを見てリブの位置微妙なんじゃねって話をしたり、金型工場に乗り込んでいってヲラヲラをやったりもするんだけど、アドベントカレンダーの締めくくりとして過去8年どのような人員パターンでやってきて、どこを外注に出してどこは内製にしていて、その理由はナニで、と言ったあたりについての話をしてみたいと思う。

創業直後 2008年

人員構成

  • 組み込みSWアルバイト学生さん×3名 + CEO+社外の協力者(株主になってもらった方多し)

委託/自前?

  • デザイン → デザイン会社に委託
  • メカ → 存在せず。メカ設計にツッコミを入れてきたVCは皆無だった
  • 調達・生産管理 → まだモノを作っていないので不要。VCからはよく聞かれた
  • 電気 → SeriesAの調達が終わるまで不要と判断し、調達後にJoinしてくれる人がいますと説明
  • バックエンド →  SeriesAの調達が終わるまで不要と判断し、調達後にJoinしてくれる人がいますと説明
  • 組み込みソフト→ バイトさんたちによって、アリモノのEVM(当時は京都マイクロのKZM-ARM11-01)の上にGNU LINUXをポーティングし、カメラ・通信・キー操作部・GUIあたりまではプロトを作りこむ。が、製品には程遠い完成度

説明

ハードウェアスタートアップはお金があってはじめて量産ができる。量産しないなら別に企業にする必要もない、と私は考えていたのでVCのみなさんが完成形をぼんやりとだがイメージできるよう、外形のデザインだけをデザイン会社にお願いして作ってもらい、モックを1つだけ製造(国内で作ったのでクッソ高かった!)。

今でこそRaspberry Piなど組み込みベースのプロトタイプ用コンピュータが多数出回っていっるが、そういったものがない時代だったので組み込みソフトがEVMのうえとはいえ動いているところは説得力があるだろうとソフトウェアはアルバイトさんに作ってもらい、結果として常勤メンバーはCEOの私一人という状態でシリーズAファンディング直前迄持っていくことができた。

もっとも、その間にリーマン・ショックがあって色々と大変だったのだが。最終的にVCからのシリーズA資金払込日の段階では私を含めて常勤メンバー数4名となっていた。なお、資金調達完了前にSoCの変更を決断し、これまで作ってきたソフトをほとんど全て捨て、TIのダビンチシリーズへと移行する。

結果、ソフトウェア資産の9割…は言い過ぎかもしれないけどほとんどを破棄することに。何で?というのはまぁ長くなるので割愛するw

シリーズA調達後~初代製品であるCerevo CAM発売まで 2009年

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CerevoといえばCEREVO CAM。2010年頃の同社オリジナル商品

人員構成

  • CEO
  • VCから派遣してもらっていた暫定COO
  • 組込SW 2名
  • 電気 1名(ソフトも書ける電気屋さん)
  • バックエンド(組み込みも書けるバックエンド屋さん) 1名
  • フロントエンド(Webアプリもスマホアプリもできる屋さん)1名

委託/自前?

  • デザイン → デザイン会社に委託
  • メカ → 存在せず。デザイン会社はメカ得意ではないので結局のところメカ設計はEMSのメカ担当とCEOの私が一緒になって何とかやっつけた。この経験からメカに明るくなったため、私はメカ面を今でも結構深く見ている。
  • 部品調達 → なし。ほぼ工場に丸投げ
  • 工場との調整→電気1名+CEOで担当。別に専門家じゃなくても製品1個なら何とでもなる。というかそもそもスタートアップにはここの経験豊富な人材は不要と感じる。なぜなら自社の工場コントロールにおける『色』を作っていくフェーズだから。
  • 電気 → 基本となる回路(ES1の回路)は外注の電気設計会社に委託。これをもとに電気1名の自社人員で修正修正を繰り返し、最後はEMSの電気担当に入ってもらいつつ仕上げ。
  • バックエンド →  バックエンド担当が自前で設計。サーバは自社設計シャシー(3000円程度)に自社設計サーバを載せ、サーバーラックは私(CEO)が設計して5000円以下に抑えてオフィスの片隅に設置。
  • フロントエンド →  コアコンピタンスとの認識で全てを自社設計。OpenSourceのライブラリは使うものの、一切社外のソリューションなどは用いず。
  • 組み込みソフト→ コアコンピタンスとの認識で全てを自社設計。OpenSourceのライブラリは使うものの、一切社外のソリューションなどは用いず。
  • EMS選定 → 元ジェネシスHDの藤岡さんに相談し、彼が色々とカメラを作ってきた工場(その後倒産w)を繋いでいただき、取引としては当時の藤岡さんがいた会社に、Cerevoと工場の間挟まってもらう形の契約でGo。トラブルも山のようにあったのでこの関係が100点だというつもりはないが、当時リスクマネーを投資していただいたVCの皆さんに安心していただくという意味でこの座組みは必要だった。また、この当時頼んだ工場がまたいい意味でも悪い意味でも『チャイナな』ところで、中華のちいさ目の(といっても数百人規模)工場ってこういう人たちで、こういうことが起きるんだねというのを沢山勉強させていただいた。

説明

多分ここが一番スタートアップしようという人にとっては気になるタイミングなのかなぁと。勿論反省点も多く、これが正解だというつもりは毛頭ない。デザイン会社には入ってもらわなくても何とかなったと思うし、電気設計を外注に頼んだのはかなり無駄金だったなぁと思うところもあった。

頼んだ会社が良くなかったというわけではなく、中華小規模工場で量産する品の試作(量産試作)を頼むべきところではないところに私が頼んでしまったことが問題だった。でも、そんなのは正直経験者にしかわからない。外注するにしても、似たような品の量産品経験者に聞いてみることは大事だ。

….というはなしははるか5年も前のはなしなので、VCはもちろんEMSも当時とは様変わりしているのであくまで参考程度に。

シリーズB調達後~初代LiveShell時代~ 2010年

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製品は徐々にライブ配信へ。このころはUstream Asia進出など話題が豊富だった

人員構成

  • CEO
  • 組込SW 1名
  • 電気 1名(ソフトも書ける電気屋さん)
  • メカニカルデザイナー(メカもデザインもできる) 1名
  • バックエンド(組み込みも書けるバックエンド屋さん) 1名
  • フロントエンド(Webアプリもスマホアプリもできる屋さん)2名
  • スーパー総務(サポート、部品調達、人事、総務、秘書兼任)1名

委託/自前?

  • デザイン → 晴れてメカ・デザ人員を採用できたので自社に切り替え
  • メカ → 先のメカ・デザ人員による自社設計に切り替え
  • 調達・生産管理 → 実質EMS丸投げ。自社での部品購買などはせず、設計開発に集中。
  • 工場との調整→金型まわりはメカエンジニア、電気周りは電気エンジニアが一部フォローし、ここで電気・メカそれぞれの担当者において量産工場コントロールスキルが付いてくる。この2名は現在はPMとして直接工場のコントロールを担当している。
  • 電気 → 電気担当が外注コントロールしつつ、実際に回路図引いてAWするのは外部の委託会社という座組み。今ではOlasonicブランドで有名になった五反田の東和電子さん。元ソニーの屈強な電気エンジニアの皆さんに助けていただく。
  • バックエンド →  バックエンド担当が自前で設計。震災もあって自社内自作ラックにわかれをつげ、AWSに移行。
  • フロントエンド → 全て自社設計
  • 組み込みソフト→ 全て自社設計
  • EMS選定 → ここでは加賀電子さんにお世話になり、GroupSense Japan経由でGroupSense Limited(香港)の東莞工場にて生産という座組。日本を代表するEMSとして加賀電子さんに入っていただくことで、大手さんの進め方ってものを学ぶ。といってもGroupSenseの東莞工場は1千人程度(うろ覚え)の規模でそれほど超絶大手というわけでもなく、色々と教えていただく。

説明

シリーズAで1.3M、シリーズBで2.4Mというそれほど大きな調達ではなかったが、VC各位からのご指導もあって2発目は安心安全な座組みでいこうということで加賀さんをチョイス。

大手EMSに頼んだこと、メカデザイナーがメンバーに入ってくれたことで相当しっかりとした商品ができあがる。スタートアップとしてはほぼ100点….は言い過ぎだろうが、今から振り返っても相当うまく回ったなぁという印象。

EMS丸投げからの脱却 ~LiveShell PRO, SmartTrigger, EneBRICK時代~ 2011~2012年

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2010年頃の岩佐氏。

人員構成

  • CEO
  • 組込SW 1名
  • 電気 2名(ソフトも書ける電気屋さん)
  • メカニカルデザイナー(メカもデザインもできる) 2名
  • バックエンド(組み込みも書けるバックエンド屋さん) 1名
  • フロントエンド(Webアプリもスマホアプリもできる屋さん)2名
  • スーパー総務(サポート、部品調達、人事、総務、秘書兼任)1名
  • スーパーバイト 2名(部品調達、総務、サポート等)

委託/自前?

  • デザイン・メカ → デザメカ2名体制に増強し、2製品並行開発が可能に。当然全て自社設計
  • 調達・生産管理 → Alibaba砲に火が入り、私(CEO)がAlibabaで新しい業者を見つけてきては部品単位で調達をしはじめる。箱屋、ケーブル屋といったレベルで中国深センローカルの部品サプライヤーと付き合いをはじめた
  • 工場との調整→電気が基板・実装まわり、デザメカが金型・組み立てまわりをそれぞれ見る。私も現場に出て行ってラインの調整とか限度サンプルの評価をやる感じ。
  • 電気 → 当時オフィスをシェアしていた設計会社に設計を手伝ってもらいつつ、製品によっては自社で回路設計からアートワークまでやる方式に移行。
  • バックエンド →  バックエンド担当が自前で設計
  • フロントエンド → 全て自社設計
  • 組み込みソフト→ ほぼ自社設計。ソフトエンジニアで良い人がなかなか採用できず、一部製品は電気設計エンジニアがソフトも書くという形で乗り切る。どうしてもリソースが足りなくなり、先に述べたオフィスシェアしていた設計会社さんに手伝ってもらうことも。
  • 工場選定 → あえてEMS選定と書かなかったのは、LiveShell PRO以降はSMT工場、Assy工場、金型工場(Plastic Injectionは型工場でやることが多い)、部品サプライヤーをそれぞれ自分たちでみつけてきてハンドリング、Assy工場にそれぞれの部品を集結させて生産するという方式に移行。EMS丸投げは楽だけど、どこでどういう風にコストを乗せられていたのかがよくわかる。中国ローカルのサプライヤーで化粧箱を1000個作ったらいくらなのか? 化粧箱の型代とかいうけどローカルサプライヤーの箱型代原価はいくらなのか? 金型代って高いけど実際に金型だけを作ってるような工場(XX MOLDってなとこ)に頼んだら幾らなのか、プラスティックのインジェクション(射出成形)は実際にネゴったらどこまでMOQを下げられるのか? などかど、EMSにまるっとまるめて『XX円でMOQはYY個ですね、これ以下は受けられません』って言われていたところの裏事情というか、背景がどうなっているのかを丸裸にしていく。
screenshot
成長したCerevoの商品ラインナップはどんどん拡大

ここからはさらっとものすごく重要なことを書くのでハードウェアスタートアップやる人は要メモ。

  • 箱はMOQ数百だとクッソ高い。1000個でも高い。3000~ とか作ってやっとマトモな値段になる。でも、別に100個でも作ってくれる。勿論日本で作るより数倍安いw
  • 箱の初期費を多く請求するEMSは疑え。箱の型代って高くても10万もしない
  • こんな箱はつくれないっていうEMSは箱屋変えろと怒鳴るべき。箱屋に行って交渉すれば本当に色んな箱がつくれる。
  • 電子部品のMOQは日本の商社経由だったり正規代理店経由のときに言われるモノ
  • 電子部品を香港ブローカー経由で買うってのはそんなに狂ったような行為じゃない。Cerevoは50%以上これでやってる。
  • 香港ブローカー経由だとMOQ100個とか300個で平気に電子部品が買える。
  • 稀に部品番号間違いで送ってきやがったりとトラブルは絶えないが、それも許せるぐらい安いw
  • 電子部品のMOQで困ったら、或いは正規代理店が相手してくれなかったら、Winsomeのミシェルちゃん(アイコンは詐欺w)にCerevoのCEOから紹介されたぜとAlibaba TradeManagerで連絡してみるといい http://www.winsome.hk/
  • 工場を探すならHongKong Electric Fair に行け。China global sourcing fair も同時開催されているので両方行くべし。ブースでいいなと思った工場があったら『We’d like to look around your factory and much more details of business discussion next week?』とその場で交渉。事前にWeChatを入れていくのを絶対に忘れずに。その場で『Could you exchange WeChat ID for factory visit?』だ。『Please take picture with me for remember』で写真一緒に撮るのも忘れずに。
  • これらのShowに行くときは翌週も中国で過ごす予定を入れ、ショウ終了後の週末(土日)に深センに移動し、翌週は先の会場でアポ取った工場をひたすら見学して回る。忙しい中相手してくれる皆さんへの敬意は忘れずに。CerevoとかUPQとか日本のハードウェアスタートアップの話題を出すと知ってる人も多いので話がはずむはず
  • 金型屋(金型だけを作ってる工場)はなかなか香港ショウに出てこないのでうまく探さないといけない。Alibabaで片っ端から当たっていくのも一つの手。日本のクライアントさんは居る? って聞いてまわって絞っていくのもいい。
  • 金型屋にはT1ショット射つときに必ず行くべし。現場でT1見ながらああでもないこうでもない、とやる。飲める人は中華料理と酒をご一緒して仲良くなっておきたい
  • 基板屋は深セン近郊(東莞・広州・中山など)にある必要性が薄い。Cerevoでは大連なども使っているが問題なし。
  • Assy工場と金型屋、箱屋は距離が近いほうがいい。Assyは上海、金型は深セン、箱屋は浙江省とかになると色々とたいへん。もちろんこれはあくまで教科書的なはなし。Cerevoでは深センの基板屋で作った基板をベトナムに送ってSMTし、これと深セン製のアルミ筐体をフィリピンに送ってAssyというLiveShell PROでやっているぶっ飛んだスキームもあるが、慣れないうちはトラブル時の対応に時間がかかるのでおすすめではない。

…….たぶんまだまだ100個ぐらいTips出てくるのだが、アドベントカレンダーは12/25中に完了しないといけないそうなので後日別途書くことにしよう

10名→70名体制として超多品種展開へ ~DMM.make AKIBAへ~ 2013年~現在

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小笠原治氏がCerevoに参加。

電気・メカデザ・組み込みソフト・フロントエンド それぞれをチームとして組織し、それぞれ15名前後の体制に。流石に全てのプロジェクトをCEOが管理監督するのは限界が出てきたので調整役となるメンバーもPMという名前をつけて(あくまで調整役といういち機能・職種であってプロジェクトメンバーの上司やリーダーではない)組織。

これらチームから1名づつ(PMいれて5名)を選出して1製品をつくるという開発スキームが確定。もちろん大規模プロジェクトには各設計パート2名づつが投入されて8+1=9名になるようなものもあるけれど、基本的には1製品多くて4-5名という体制を確立。

スーパーバイトが大手家電メーカーに出向するから一旦Cerevoを離れたいというので、じゃぁもっとスーパーなバイトを呼んできてくれと言ったら呼んでこられたスーパーx2なバイトくんがさらによんできたスーパーx3な中国語日本語英語ドイツ語なんでもいけるバイトさんx4が正社員となってくれたので彼(先日中国語Tipsを書いてくれたライ麦パンさん)を中心に中華サプライヤーの管理・開拓部隊を新設。

今やバイトさん含めると中華ローカルのサプライヤー対応する中国語ネイティブクラスのメンバーが5名もいるという状態に。これは強い。

もうこの状態になると、外注する要素は皆無。メカ設計、電気設計、アートワーク、サプライヤー選定、工場コントロール、などなど主要な設計は全て自社内で完結。EMSがへぼい見積投げてこようものなら、いらねぇと言えるのが強い。金型屋の選定から箱の設計製造、何なら付属品の調達まで、全部自分たちで回してしまえるので。

じゃぁEMSとはご縁がないのかというとそんなこともない。ローカルサプライヤーをダイレクトにコントロールしたほうがいい場合と、その手間を考えてこれぐらいのコストアップならEMSにお願いしちゃおうということも多分にある。

EMSのみなさんも、Cerevoはローカルサプライヤーの価格を知っているという前提で攻め込んだ見積を出してきてくださるようになったので、やりやすい。

また、大手のEMSさんも面白がってお付き合いしてくださることが増えてきた。Hackeyは小笠原治さん・孫泰蔵さんが手がけておられるABBALabからご紹介いただいたおかげでFoxconnで製造することができた。Foxconnとは別の大型プロジェクトも進めていて、CES2016で発表予定だ。

また、小回りの効くEMSとして(厳密にはEMSコントロール会社)、PARSの黒瀬さんにもお世話になり続けている。Foxconnはさすがにちょっと、ということであればCerevoのWebを見たといって相談してみるといい。Webサイトは昭和な香りだが、力になってくださるはず。

おっともう23時55分を過ぎてしまったのでここいらで公開しないと広報Teamにどやされるw

今日が納会というお会社も多いだろうが、深センに年末年始はない(笑) アメリカに正月もないw

ということで私は26日から中国に飛んで、正月からアメリカでCES。こんなドタバタを楽しめる人なら、ハードウェアスタートアップは向いているんじゃないかと思う。

では!

【原文】
【Cerevo TechBlog】

(編集部注:転載にあたり、過去に取材で撮影した画像素材の追加をさせていただきました)

Cerevoがネットとつながる鍵スイッチ「Hackey」をリリース、Indiegogoでクラウドファンディングを開始

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※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから。 東京を拠点として、数々のスマート家電デバイスを開発する Cerevo は28日、スマート鍵スイッチの「Hackey」を公開した。このプロダクトは、Cerevo のウェブサイト上で9,980円で入手可能。また、この発表とあわせて、同社はIndiegogo 上でクラウドファンディングを開始した。クラウドファンディング支援…

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※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

東京を拠点として、数々のスマート家電デバイスを開発する Cerevo は28日、スマート鍵スイッチの「Hackey」を公開した。このプロダクトは、Cerevo のウェブサイト上で9,980円で入手可能。また、この発表とあわせて、同社はIndiegogo 上でクラウドファンディングを開始した。クラウドファンディング支援者は、59ドルと送料で予約注文できる。

Hackey は Wi-Fi 接続可能で、手のひらサイズの鍵スイッチだ。IFTTT に準拠し、ユーザは鍵を回すことにより、API 経由でさまざまなインターネット・サービスを制御することができる。可能性のあるユースケースとしては、

  • 子供が帰宅したら、鍵を回すことで会社で働く両親に Twitter メッセージで知らせることができる。
  • 鍵を回すことで、ホームセキュリティを制御できる。
  • 鍵を回すことで、タクシーを呼べる。
  • 出退勤にあわせて、鍵を回すことでタイムカードに時刻を打刻することができる。

など。

Hackey は IFTTT Maker Channel に信号を発信できるのに加え、他のウェブサービスからリクエストを受信することができ、ユーザ設定に応じて、側面にある LED を点滅させることも可能だ。ヤフーが展開する、さまざまなウェブサービスと IoT プロダクトと連携させるモバイルアプリ「myThings」にも対応する予定。

Cerevoが試作から量産まで対応するIoT開発モジュール「BlueNinja」を発表

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Cerevoが本日、Bluetoothや9軸センサなど各種センサを搭載したIoT開発モジュール「BlueNinja(ブルー・ニンジャ)」を発表した。 BlueNinjaは、ハードウェア開発者を対象としたCerevoの新ブランド「Cerevo Maker series」の第2弾であり、Cerevoが独自に開発した初のシリーズ製品となる。 BlueNinjaは、BLEと東芝の低消費電力SoC「TZ10…

BlueNinja

Cerevoが本日、Bluetoothや9軸センサなど各種センサを搭載したIoT開発モジュール「BlueNinja(ブルー・ニンジャ)」を発表した

BlueNinjaは、ハードウェア開発者を対象としたCerevoの新ブランド「Cerevo Maker series」の第2弾であり、Cerevoが独自に開発した初のシリーズ製品となる。

BlueNinjaは、BLEと東芝の低消費電力SoC「TZ1001」をメインSoCとして採用。加速度、角速度、地磁気などの9軸センサに加えて、気圧センサを搭載。リチウムイオン電池の充電・放電回路も搭載しており、BlueNinjaとリチウムイオン電池を組み合わせるだけで、アクティビティトラッカー等のIoT機器を簡単に設計・製造できるようになっている。

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「BlueNinja」は試作から量産まで対応しており、単体については100個、1,000個単位での大量購入も可能。単体販売に加えて、デバッガ付きブレイクアウトボードを搭載した開発キットも販売する。

「BlueNinja」は本日よりCerevoの直販サイト「Cerevo official store」で受注を開始し、8月上旬に順次出荷する予定だ。同製品は8月1日・2日に東京ビッグサイトで開催される「Maker Faire Tokyo 2015」に展示され、デモも見ることができる。

大企業とスタートアップの挑戦ーーListnrは「環境音操作」という市場を創造できるのか?

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Interphenomの「Listnr」というプロジェクトが今年初め、ラスベガスの地で産声をあげた。 このプロジェクトを推進するのは大手総合家電メーカーのパナソニックと国産ハードウェアスタートアップのCerevo。「環境音でデバイスを操作する」という少々理解しづらい分野に敢えて挑戦したのは、シンプルに新しいマーケットを創造したかったからだ。 大企業とスタートアップが手を取り合うメリットとは何か。彼…

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左から:Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏、Interphenomの江原理恵さん、パナソニックの飯田恵大氏

Interphenomの「Listnr」というプロジェクトが今年初め、ラスベガスの地で産声をあげた。

このプロジェクトを推進するのは大手総合家電メーカーのパナソニックと国産ハードウェアスタートアップのCerevo。「環境音でデバイスを操作する」という少々理解しづらい分野に敢えて挑戦したのは、シンプルに新しいマーケットを創造したかったからだ。

大企業とスタートアップが手を取り合うメリットとは何か。彼らの取り組みをご紹介したい。

自然言語ではなく環境音での操作という挑戦

まず、最初に「環境音で操作するデバイス」と聞いてピンとくる方はどれぐらいいるだろうか?Listnrについてはこちらの動画をご覧頂きたい。

この話を理解するために整理しておいたほうがいいのは、これからやってくるデバイスの操作方法についてだ。例えばPepperというロボットをソフトバンクが一般家庭に向けて販売を開始したが、多くの人にとってこれはあまりよく分からない出来事だったかもしれない。

給仕をしてくれるわけでもないロボットが家で何をするのか、その鍵はやはりデータにある。例えば人が家に帰ってくる時間、話し声、気分、いつ電気を付けて、いつ寒くなるのか。こういった自分を取り巻く「生活のデータ」を全てトラックされればどういうことが起こるだろうか。ーーそう、予測してサービスを提供できる可能性が出てくる。

実際、自然言語で操作を実現するAppleのSiriなんかはその典型例だろう。クラウド上で大量の自然言語を解析し、音声コマンドを極めて自然に実現している。今はやってないが、もし、自分に関わる定性的な情報まで分析し、毎日ヒーリング音楽を聴いてる人に、このアロマオイルはどうかとコマースの提案をされたらどうだろうか。

音声による操作というのは単なる操作ではなく、ビッグデータとその先に続く「サービス」というドル箱の可能性を感じさせるものなのだ。Listnrはそれを自然言語ではなく「環境音」というカテゴリから挑戦しているところに面白みがある。

企業の社内コンテストから始まったプロジェクト

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「就業時間の10%を使って自由に考えろ、というのがあって出したアイデアがListnrの出発点でした」

そう語るのはパナソニックのスマートハウスグループで主任技師を務める飯田恵大氏。前述の「自然言語」などを含むR&Dの研究現場で働いている。社内コンテストで30作品が揃う中、飯田氏のアイデアは上位につけた。

「元々は現在のListnrとは全く違う、幼児向けのプラレールに速度計を付けたものでした。加速が可視化できるという簡単なものです。それをみながら親子でコミュニケーションできるかなって」(飯田氏)。

このアイデアは採用されることはなかったが上層部の若手を育てなければならないという考えの元、飯田氏に一定の予算が与えられる。そして飯田氏がひとり開発を続ける中、外部の開発協力パートナーとして見つかったのがCerevoだった。

「実際に試作品等を作るにあたって、開発力のある外部パートナーを探していたんです。しかも販路はやはり海外にも広げたいということで何社かリストアップしていたら、Cerevoにあたりました。ただその時点では私、Cerevoのこと知らなかったんです。(Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏が元パナソニックということを)知ってる人は上層部の一部だけで。現場の所員はそんなに知らないんじゃないかな(笑」(飯田氏)。

こうして大企業と秋葉原の小さなスタートアップは静かにプロジェクトを開始した。2014年1月のことだ。

研究で終わらせない、製品を世に出すという「目標」

岩佐氏が4年ぐらい前から注目していた考え方がある。それが「ゆるく」人とデバイスを繋いでくれる、アンビエントな機器の構想だった。そこにあることも忘れてしまう、けれど人の動きに寄り添って、アクションを理解し、次の操作、動きに繋いでくれる。

「アンビエント・デバイスのことって話したことなかったかな。スマートデバイスって『うるさい』のが多いんですよ。ボタンが多かったり、検索結果をここに入れてね、みたいな。ユーザーが構えちゃう」(岩佐氏)。

ボタンもないし、入力もない。勝手にアクションを収集して、たとえば100ある動きの内、ひとつを何かのきっかけで出してくれる。

ボタンを押したから電源が入る、これまで当たり前だった「操作」という概念をもう少し拡大させて、より人間的な反応を返してくれる。そんなデバイスがあってもいいんじゃないか。そんな会話が岩佐氏と飯田氏の間で進んだ。

「赤ちゃんの声に反応する特化型のベビーモニターって北米などで需要があるんですよ。泣いたら台所のスピーカーが鳴り出して教えてくれる。広い家がある海外ならではのデバイスですね」(岩佐氏)。

元々のアイデアにも近く、子供との生活を安全に楽しくしてくれるベビーモニターは北米での需要を背景に一大マーケットを築いている。ここなら勝負ができるかもしれない。ーーそして何より二人が目指したのは「本当に世に出す」ということだった。

岩佐氏も企業での経験上、プロダクトを世に出す難しさは痛感している。大企業の若手教育のテストで終わってはいけない。そのためにも必ずこの商品は世に出す。しかし、実際は曖昧な状況だったという。

「世に出すのをどうするか、そこはふんわりとしていた。実際大企業の中で例えば1万件アイデアがあったとして、世に出るのは10件とか。ここの座組だけでは(本当に出すのは)無理かもしれないって考えてました」(岩佐氏)。

それを大きく変えてくれるきっかけとなったのが、ボタニカルアートで活動を続ける江原理恵さんとの出会いだった。

きのこロボットを作りたかったアーティストとの出会い

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江原理恵さんは植物をモチーフにした作品を作るアーティストであると同時に、クラウドファンディングでニューヨークスタートアップの取材に向かうなど、テクノロジーとアートの世界を行ったり来たりしている「ハイブリッド」な人物。彼女もまた全く別の軸で「アンビエント」なデバイスを模索していたひとりだった。

「最初はね、きのこだったんです。きのこってね、植物と人間の間なんです。人間が感知できないものを教えてくれるきのこ型デバイス。乾燥してるとか寒いとか。いちいちアプリを立ち上げてチェックするのも面倒だし、きのこがすぼんで乾燥してるって教えてくれたらかわいいじゃないですか。そういうソフトロボットを作りたかったんです。愛くるしいやつ」(江原氏)。

知り合いのエンジニア達とどうやったらこのロボットが実現できるのか議論を重ねていると、あるチャンスが彼女の元にやってくる。ーーDMM.make AKIBAの誕生だ。Cerevoはここを新たな拠点としていた。

「きのこの話とアンビエント・デバイスの考え方って似てたんですよね。同じ思いを持った人たちを繋げるとモノができる。そう感じて紹介しました」(岩佐氏)。

こうして江原さんを加えた連合チームは方向性を明確にし、具体的な製品化への道を歩み始める。しかし問題は製品化の予算だ。プロジェクトとしては確かに興味深い。しかし、一般の人たちが使えるレベルかというとまだチャレンジするにはリスクが高すぎる。当然、飯田氏も上司の説得にあたるが芳しい回答は得られなかった。

「本当の製品にするには予算が足りませんでした。この(環境音認識による操作)分野に自分たちが率先して入っていくイメージがどうしても持てなかったんです。これ以上の投資は無理だと」(飯田氏)。

岩佐氏も大企業の事情についてこう語る。

「いろんなところで話してますけど、売れることが分かってる分野というのは大手はものすごく強い。50インチのテレビを販売した翌年に52インチを出したら、どれぐらい売れるか予想ができるし、一気に100分の1に下がることはないんです」(岩佐氏)。

Interphenomの立ち上げ、そしてクラウドファンディング、CESへの出展

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大企業とスタートアップの取り組み、しかもこれだけリスクの大きなチャレンジ領域に挑戦してきたからこそ、どうしても製品を世に出したい。そこで3社は話し合い、新たにInterphenomというプロジェクト(現在法人化準備中)を立ち上げ、クラウドファンディングでこの製品を世に出すことにした。

「元々、自然言語の音声認識による操作というのはメジャーな位置づけなんです。しかし、今回取り組んでいる環境音による操作というのも可能性は大きい」(飯田氏)。

未知数の可能性をスタートアップと一緒に取り組む。クラウドファンディングはマーケットの意見を取り込み、リスクを分散させるのに最も適したやり方だ。結果、飯田氏の提案はパナソニック側に受け入れられる。

「スピード感や柔軟性、ノウハウの共有。とにかく研究開発だけじゃなくてハードウェアをちゃんと世に出していこうよ、っていうのを大手企業と一緒にしっかり工数出して頂いて取り組めたのが大きかったですね」(岩佐氏)。

CESに出展して同時にキックスターターにて出資を募った結果、現在、半分ほどの支援が集まっている。環境音による操作という可能性を今後、支援者や外部の開発者と一緒に探っていくことになる。

さて、いかがだっただろうか。

オープンイノベーションとか大企業とスタートアップとか、最近、新産業開拓に色々なコラボレーションの話題が聞こえてくるようになった。

これだけモノやサービスが溢れ返り、新しいニーズ・マーケットを開拓することが難しくなった現代に必要な考え方である一方、どうしてもバズワード、形だけといった話もちらほら聞こえてくる。特に、小さなスタートアップの創業者と大企業の勤め人では、そもそも考え方も環境も「全く」違う。

文化の違う両者がどうやったらうまく協力し合えるのか。その鍵はお互いが「やれること」をしっかりと理解し、できる限り同じ視線を持つことだろう。よくある失敗例は単なる大企業の受託をスタートアップ側がやってるというものだ。「クリンチ」はやってもやられても受発注の関係以上にはならない。

彼らの取り組みの成否はこれからマーケットが決めることになる。しかし、そのチャレンジ自体の成否がどうあれ、今後の資産になるのは間違いない。大企業とスタートアップが共に協力し合い、一つずつこういった「現実的な」挑戦を続ければ、その先に新しい可能性が生まれるのではないだろうか。

Cerevoのスノーボード・バインディング「XON SNOW-1」、米Digital TrendのCESアワード(スポーツ部門)に輝く

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<ピックアップ>Digital Trends Top Tech of CES 2015 award winners 現在ラスベガスで開催中の世界最大エレクトリック・ショー「Consumer Electronics Show(CES)」でCerevoが大暴れです。 この時期になると米テクノロジーおよびガジェット各誌はそれぞれ特設で「誌上賞レース」を開催するのですが、そのうちのひとつ、米D…

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<ピックアップ>Digital Trends Top Tech of CES 2015 award winners

現在ラスベガスで開催中の世界最大エレクトリック・ショー「Consumer Electronics Show(CES)」でCerevoが大暴れです。

この時期になると米テクノロジーおよびガジェット各誌はそれぞれ特設で「誌上賞レース」を開催するのですが、そのうちのひとつ、米Didital Trend誌で開催中の「TOP TECH OF CES 2015」でCerevoの「XON SNOW-1」がSports & Fitness部門を獲得しました。

16部門あるうちのひとつですが、スポーツやフィットネスは特にマーケットがデカく、大量のガジェットが出品されている中での受賞は「やったね!」的賞賛が送られるべきでしょう。CES冒頭でMashableに紹介された際にも大きく反響を呼んでおりました。

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記事は「スノーボーディングを解析する技術は決して新しいアイデアではないが、Cerevoはユニークで全く違った手法でそこにアプローチした。それが私たちが彼らを今年のスポーツ&フィットネス部門のトップにピックアップした理由だ」と評価、バインディングにスマートに格納された「さりげなさ」がジャッジの心を鷲掴みにしたようです。さすがジャパンビューティー。

Using tech to capture snowboarding analytics definitely isn’t a new idea, but Cerevo has approached it in a unique and different way, which is why we picked them as this year’s winner for the Sports & Fitness category. The company’s XON Snow-1 snowboard bindings not only track things that other gadgets don’t (board flex, weight distribution), but they also do so in a seamless and unobtrusive way. The device isn’t an extraneous pod you need to mount somewhere — it looks and feels like a normal set of bindings, and just happens to have a bunch of tech under the hood.
– Drew Prindle

米Digital Trendにあまり馴染みのない方に簡単にご説明しておきますと、2006年頃から立ち上がった有力デジタル系総合ブログメディアで、2013年のfacebookのWhatsApp買収をいち早く報じたこの記事が大変な話題になり、大手メディア含め引用されまくっていたのが私の記憶にもあります。

ただ残念ながら私、ガジェット関連は門外漢であることは否めず、この方面で米Digital Trendブランドがどれぐらいの「具合」なのか、ニュアンスまではわかりませんが、普段からチェックしている米メディアで受賞している同胞の姿を見るのは嬉しいものです。

ちなみに世界最大ショーだけあって、主力賞レースもこれだけあります(こちらは米TIMEがまとめた2014年のものです)。Engadget、The Verge、Wiredあたりはみなさんも普段からご存知かもしれませんね。

Presenting our Best of CES 2014 Awards winners [Engadget]
The best of CES 2014 [The Verge]
We Pick the 10 Best Gadgets at CES [Wired]
The Best of CES 2014 [PCMag]
Best of CES 2014 [PCWorld]
Best Tech of CES 2014 [Mashable]
2014 CES Top TV Picks Awards [HD Guru]
CES 2014: Best Laptop, Smartphone and Tablet [LAPTOP]
2014 Best of CES Awards [Techlicious]
The 12 Best Products From CES 2014 [Popular Science]
2014 CES Best of Show Awards: iPad, iPhone, iPod + Mac [iLounge]
Best of CES 2014 [Pocket-lint]
12 Of The Best Ideas From CES 2014 [Fast Company]
Best of CES 2014: Top TVs, Smartwatches, Cameras [Tom’s Guide]
Best of CES Awards 2014 [Digital Trends]
Best of CES 2014 winners [TechRadar]

Cerevoは近年の日本のコネクテッド・ハードウェアを牽引してきたスタートアッププレーヤーなだけに、さらに大きく羽ばたいていただきたいと祈念しております。