今週数回にわたり、日本のモバイル企業は迫り来る問題について公表した。それは、スマートフォン改革のためのネットワークが準備が整っていないことだ(こちらとこちらを参照、購読必要)。
いまだ、日本でのスマートフォンの利用率はモバイルフォン全体のわずかにすぎないが、 スマートフォンは、いわゆる「フィーチャーフォン」と比べると10~20倍のデータを使用する。2015年までに、スマートフォンのデータ・トラフィックは18倍に増えるとみられている。
日本で2番目に大きい通信会社のKDDI(契約者数3350万)田中孝司社長は、このままではKDDIのネットワークは過負荷になることを認めている。
スマートフォンのデータ消費が大きいために、ネットワークがオーバーロードしてしまうという問題は多くの国で見られている。2010年の中頃、AT&Tは極度のデータ利用に屈し、最終的にデータ定額プランを廃止せざるを得なかった。
使いたい放題のプランの代わりに、AT&Tはユーザーの利用量に基づいて料金を設定する従量制プランに変更した。わずか数ヶ月前の6月にも、ベライゾンがAT&Tと同じ決断をしデータ無制限プランを廃止した。
日本では、どこの携帯キャリアも一番初めに定額プランを廃止したくはないと思っている。廃止すれば、多くのユーザーにとっては料金値上げとなってしまう。初めに定額プランを停止する企業がどこであろうと、その会社は顧客を失うことになる。
スマートフォンユーザーが他の携帯キャリアに乗り換えできるシムロックの解除が進んでいる現状では、なおさらだ。日本の携帯キャリアは定額プランを廃止する代わりに、別の取組みを行なっている。
今週、KDDIはデータ通信の上限を超えるスマートフォンユーザーのデータ処理速度の制限を始めることを発表した。これは、一握りのユーザーが大量にデータ消費を行なうために、総合的なネットワーク速度が低下することへの対策である(日本の記者発表を参照)。
10月から、3日間連続で300万パケット(約366MB)を超えるデータ通信を行なうKDDIのスマートフォンユーザーは、4日目にはデータ通信の速度制限がされることになる。速度制限がされるのは24時間で、これによる影響はデータ消費者の上位3~4%のみであるとみられている。日本の最大手NTTドコモ(加入者5860万人)も、既にほぼ同様のシステムを実施し、拡張しすぎたネットワークの対策をおこなっている。
携帯電話会社は、データ通信の上限を超えるユーザーを抑えることに加え、スマートフォンユーザーを他の場所へ移すことの事前対策もおこなっている。携帯電話ネットワークの負担を大きくしないようWi-Fiアクセスポイントを拡大している。KDDIは、2012年4月までに10万ヶ所のWi-Fiアクセスポイントを設置・運用することを目指している。
LTEサービスも、オーバーロード問題に対し迅速に対応している。NTTドコモは、同社のXiネットワークの拡大に更なる資金を投入するため予算調整をし、また、このXiネットワークを利用することのできるスマートフォン4機種を開発中である。
未来のテクノロジーに注力すれば、加入者は長期的な恩恵をうけることになる。しかし、もっと身近な将来に関しては、この速度制限という対策は悪化する傷への応急処置にすぎない。携帯電話会社が講じるこれらの対策で効果が出るほどネットワークを長く維持できるかどかは今のところ分からない。どちらにしても、このバランスを取るという対策は、将来同じ問題に直面する国にとっては助けとなる試みになるかもしれない。
(Photo credit topics.or.jp, jornal.mycom.co.jp)
著者紹介:スコット・ハルコム
東京のインフィニタ社でモバイル関連のリサーチとコンサルティングをしている。モバイルや新しいもの好き。彼の Twitter アカウントは、こちら。メールは、こちら。
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