【ゲスト寄稿】日本でスタートアップが増えない10の理由 [後編]

この記事をゲスト寄稿してくれたのは、Adam Acar(アダム・エーカー)さん。現在、神戸市立外国語大学准教授、国際大学マーケット戦略講師。2005年からソーシャルメディアに関する執筆を開始、著書には”the antecedents of social networking behavior”や”Twitter usage during the Great Tohoku earthquake”などがある。また日本での競争に焦点をあてた、初めての全文英語の社会メディア、 Marketing Competition Japanの創立者。前編に続いて後編をお届けします。


これらのことは結局のところ「リスク回避」と「長期ビジョン」の考え方に関連している。しかし、日本のスタートアップの成功が非常に困難ないくつかの要素がある。

日本のスタートアップの成功を困難にする要素

1.現地の文化をほとんど理解していない。私が忘れられないのは初めて日本に来たときに、ほとんどの本屋で「FREE」という本を売っていた。この本にはなぜ無料のサンプルや販促商品を配ると効果があるのかということについて書かれている。

実際にこういったプロモーションは日本以外では世界中でごく当たり前のことである。日本人は「タダほど高いものはない」という諺を信じている。日本の文化に反しているとは思うものの、新しいトレンドであるためたくさんの人がこの本を買った。今でもこのようなことが続いている。

他の例もある。日本の文化ではfoursquareや他のSNSで自分の居場所を公開することは良しとされていない。a)危険である、「痴漢」を誘発するかもしれない。b)自分本位である、といった理由からだ。しかし現在、日本にはロケーションベースのサービスで勝負するデベロッパーも多い。

2.現地のソーシャルネットワークの動きを理解していない。例えば、日本でTwitterはFacebookよりもはるかに人気があり、過去の調査を見ると分かるがTwitterは新たな顧客の獲得や販促に使いやすい。しかし、日本のデベロッパーの多くはFacebookの開発に注力しているので、日本では独自のHootsuiteやTwitpicといったものがない。

3.マーケティングや顧客の動向を理解していない。マーケティング戦略を教えるときに最初のクラスで言うことは次のことだ。a)特別なコネクションがない限り、B2B企業には投資してはいけない。企業に販売していくことは個人に販売することの100倍難しいからである。

b) もし小さい会社ならニッチマーケット投資するようにしよう。無名のブランドにとり、大きな資金を持つ大手ブランドに喧嘩を売ることは不可能だからである。今日、多くの日本のデベロッパーがビジネスコネクションを持たないにも関わらず、ビジネスの為のアプリケーションを開発しようと躍起になっているのを目にする。更に悪いことに、これらのデベロッパーが世界を相手に開発を試みているところだ。世界で成功する為に必要なのは、まず、ホームグランドでの成功である。

日本のスタートアップは何をすべきか

そこで、日本のスタートアップたちは、何をすべきなのか?私の意見は以下のとおりだ。

1.ユニークなアイデアの新しいアプリケーションを開発する代わりに、成功しているアプリケーションやプラットフォームを取り入れ、日本に向けてローカライズする。Rocket Internetはこの方法で成功しているし、日本のRocket Internetがあったっていいはずだ。

2.即決力、迅速行動力を学ぶべきである。(例:一個人に緊急時の権限を持たせ、”緊急”または”半緊急”と判断された場合は彼/彼女がすべての決断を下す)

3.日本人は、西洋人にとって難しい(我々西洋人はエゴ志向が強い)集団における労働、協業が上手い。日本のスタートアップたちは、互いとの協業、コラボレーションを視野に入れるべきである。

4.節約の仕方、外部委託の方法を学ぶべきだ。例えば、特許のアイデアの為に30人、オフィスを借りる為に10人を費やす代わりに、プログラミングに40名を使うのである。基本プログラミングの為に、自給800円で働いてくれる”プログラムの専門家「VWorker」 や「odesk」 などを利用して、外注委託できるのだ。

5.製造するよりも販売することの方が重要もしくはより難しいということを学ぶべきだ。コードを書いたりアプリケーションを開発する以前に、市場調査をし、友人、親、親戚などがその商品に興味を示してくれるかどうかを知るべきである。

また、需要をこのようにシンプルに予測すべきだ。まずiPhoneアプリのマーケットに行き、そこにどれほどたくさん似通ったアプリがあるかを知る。それからどれだけレビューを得られたかを算出する。最悪の場合、200人中1人がレビューを残すと考える。5レビューしかなければ、最大で千回売れたことになる。最高によい場合でも、賃貸料を支払うのに十分な収入を得られない。

6. 日本にいるという利点に着目すべきだ。つまりスマートフォンの高い浸透率、ARやQR技術へのアクセス、確立された電器産業とアニメ産業などがあげられる。日本の長所に重点を置き、アプリに関係のあるAR、QR、NFCおよびアニメを開発する。日本はNFC技術でのリーディング・カンパニーであるにも関わらず、今日ではほとんどのNFCアプリが海外から入ってきていることは嘆かわしい。チャンスがある特別な分野は、下記のような新製品の「アプリケーション+機械装置」タイプかもしれない。 (日本発のアプリ「Beautecam」でスキンケアをソーシャルに

7.”革新の普及”の法則によれば、アプリケーションがどれほど面白く素晴らしいものでも、影響力のある著名人や有名人がそれを使ったりそれについて語らない限り、売れないという事を知る必要がある。

8.世界中どこを探しても、”オタク”が存在するのは日本だけであり、人々が実際にバーチャルグッズにお金を出すのはとても珍しいことであることを知る必要がある。

9.英語を勉強する代わりに、人とのコミュニケーションのとり方を学ぶべきである。優れたコミュニケーションスキルは、ネットワークを広げより多くのベンチャー・キャピタルに繋がる。

10.プログラミングを学ぶよりも、マーケティングや日本の消費者の特徴を学ぶべきである。そうすれば、成功するスタートアップとそうでないものとを見極めることが出来るようになり、日本人が本当に気に入るアプリケーションを開発することができるようになる。

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