【ゲスト寄稿】日本でスタートアップが増えない10の理由 [前編]

この記事をゲスト寄稿してくれたのは、Adam Acar(アダム・エーカー)さん。現在、神戸市立外国語大学准教授、国際大学マーケット戦略講師。2005年からソーシャルメディアに関する執筆を開始、著書には”the antecedents of social networking behavior”や”Twitter usage during the Great Tohoku earthquake”などがある。また日本での競争に焦点をあてた、初めての全文英語の社会メディア、 Marketing Competition Japanの創立者。



Global Entrepreneurship Monitorの調査によると、日本での起業家精神の活性化は研究活動も含めて、37カ国中もっとも低くなっている。

起業家精神の活性化を予測する一番の方法は人口の成長推移を見ることである、と調査結果は示している。これはある程度理にかなっている。人口が増えると、a)事業機会が増加する b)雇用の保障と社会保障が低下する c)生き残りをかけ競争が激しくなる といったことが起こるからだ。

先進国で起業家の数が大きくないのは人口の成長率が低いから、と言える。しかし日本は、シンガポールや韓国よりも出生率が高いにも関わらず、アントレプレナー指数は低くなっている。

  • 実のところ、日本は以下の理由によりアントレプレナーにとって大変起業するにふさわしい国となる特質をいくつか持っているのだ。
  • 低い税率(アメリカやEUと比較して)
  • 高い職業意識と男性優位の文化(労働は重要であり、成長は必須のものといった考え方など)
  • 高度な教育を受けた労働力
  • 他国との高度な連携(他のアジア諸国、南アメリカ、アフリカ諸国と比較して)

日本にスタートアップが育たない10の理由

ではいったいなぜ日本ではスタートアップが育たないのか。理由には以下のことが考えられる。

1.リスクを負うという行為について、日本は調査対象の国の中でもっとも注意深い(2005年~2008年のWorld Value Surveyを参照)。わずかな予算で数人で起業することもリスクが高いと考えている。

2.日本は集団主義的社会であり、そのような社会にいると「個人での自己達成感」を必要としない。「自己実現」や実力者になろう、金持ちになりたいと言った強い願望を持たないと、起業しようとは思わないだろう。

3.日本は権力階層が厚い社会である。この社会構造により若い起業家は、サプライヤー、債権者、時に従業員相手でもやり取りに苦労する。それに加え、意思決定が難しくなり時間がかかる。

4.日本人はコントロールの意識が低い(外部要因によって物事が変化するという考え方、例えば政府、都市、大企業など)。

5.日本で一番良い仕事というのはもっとも安定した仕事であって稼げる仕事ではない。そのため、学生の大部分は仕事の内容をさておき生涯の仕事に就きたいと考える。

6.日本で最も迷惑だと考えられている行為は他人をガッカリさせることだ。スタートアップを始めて失敗したら、他人も意気消沈させることになる。

7.日本で一番大切なことは「真面目に働く」ことである。1つのことに取り組む姿勢が、その結果以上に重要だという考え方だ。このことがスタートアップ哲学に影を落としている。

スタートアップでは、わずかな労働力、少額の資金などごく短期間でとても多くのことをしなければならない。これらの制約のためスタートアップでは物事が「めちゃくちゃ」になる可能性があり、それは「真面目に働く」に背くことになる。

8.日本企業では取引上の安全のためにも、長い歴史がある大組織とビジネスをする傾向がある。つまり数人の若い技術屋がある企業を訪問して「こんにちは、新しいウェブアプリを開発したので無料で差し上げます」と言っても信用されない。話を聞いてくれる企業がいないのは、彼らがみな若く資金を持たず、会社に実績がないからだ。こういうことから日本企業では資本金はいくら、社員数は何人とウェブサイトに書いているのである。

9,日本の文化には「長期ビジョン」というものがある。西側では、小さな会社が急激に成長するというのは普通のことだ(今年は100パーセント、来年は500パーセントの成長など)。日本でスタートアップが急速に成長すると(毎年5倍の成長率など)それは不健康だと思われてしまう。さらに良くないのは、世界にユーザを求めようとするあるいは1年で5倍から10倍と大きく成長しようとするスタートアップは、日本ではとても鼻息が荒く大胆な企業と見なされてしまう。

スタートアップは素早く動く必要がある。Facebookのウォールでは「早く動けば状況を打破できる」や「とにかく手を打つことは完全を待つよりいい」などの引用文を見つけられる。しかし、日本人にとってこういったことは意味をなさない。素早く動いたり、取り組んでいることを確認しなかったりすると日本では失礼になってしまう。それ以上に、日本人は物事を完璧にしようとする。最初の段階では試行錯誤するよりも落ち着いて順序通りにする方が好ましい。

10.日本は社会的な繋がりの輪が小さいので、ソーシャルネットワークの利用率が世界で最も低い(たいていの場合、ある人の繋がりは同僚や高校の友人に限られている)。一方で西側の人たちはその輪がかなり広いのだ。

友人の輪が小さくなると社会資本が小さくなるということであり、日本人にとって手を組む人を見つけるのが難しくなってしまう。内容を見ていくと、たいていの場合は「リスク回避」や「長期間に渡る方向性」に関係があることだ。

後編に続く。

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