今年の3月末、Talknote(トークノート)という社内向けのSNSツールが5000社を獲得したことをお伝えした。先日、代表取締役の小池温男氏にたまたま会って近況を聞いたところ、その数は8500社(※)にまで増加し、なにより驚いたことに、有料課金が順調で売上はここ半年で3倍にも成長している状況なのだという。
現在、5名の正社員を抱える会社運営は黒字化を果たし、いよいよ本格的なスケールに向けて動き出そうとしている。
社内向けのタスク管理やコミュニケーションツールといえば、イントラネット系ソリューションが主流の時期が長く続き、ここ数年になってセールスフォース「Chatter」やYammer、Chatworkやこのトークノートなどのクラウド勢が力を伸ばしているのが大きな流れだろう。
ではトークノートが受け入れられている理由はなんだろうか。いくつかのポイントを小池氏に聞いてきたのでここにまとめてみたいと思う。
検索に向かない潜在的ニーズは口コミを活用
小池氏によればトークノートへのニーズは「社内コミュニケーションを改善したい」というものが多いのだそうだ。しかし社内でもっと意思疎通したいという代表や部門のもやもやとした問題はあっても、例えば「社内SNS」のようなキーワードに置き換えて解決策を検索する、という流れにはなりにくい。
そこでトークノートでは初期のユーザーに影響力のある5社~10社の導入事例を作り、体験性を伝えることに注力した。また二週間に一回のセミナーなどで、積極的なポテンシャルユーザーへの接触を試みているという。
サポートに力を入れる
当たり前のように思えるが、少人数のスタートアップで数千社のユーザーを満足させるサポート体制を作るのは難しい。トークノートではZendeskと連動させたグループを作成し、問題の状況などから対応すべき情報を整理してサポートに当たっているそうだ。
また、対応完了時の満足度などを社内で共有することで、辛くなりがちなサポート業務のモチベーション維持にも務めているという。
納得感のあるストーリーを用意する
小池氏に企業がトークノートを導入すべき理由について聞いたところ、こんなエピソードを教えてくれた。
以前に成功報酬型アルバイト情報サイトをやって失敗した時なんかも生産性はアナログな会社より高かったように思うんです。でも、共通の価値観、共通の目標が浸透していなかったので、違った方向に向かってスピーディーに動いてしまい、結果失敗するということがありました。
なので、速度を上げる前に必要なのは「共通の価値観」や「共通の目標」が浸透した状態をつくることだと思ってるんです。その上で速度も上がったら最高だと。
共通の価値観が浸透していないと、社員が「一生懸命一日頑張ってやりました」と変なものをつくってしまったりして、結果的に1日頑張ったのに何も生み出してない状況を作ってしまうことがある。そんなことで何時間も無駄にしてしまうぐらいなら、しっかりとしたツールを導入して価値観を浸透させた方が結果的にコストを無駄にしないことになる。
可能な限り合理的な理由がなければこういったツールは導入が難しい。トップダウンで始まっても現場が導入の理由を理解できないからだ。なので、このようなストーリーがあれば理解が進むし、内容が創業者の経験に基づいているのも共感しやすい箇所だ。
信頼感を作るためにしっかりと有料で提供する
トークノートは一週間のトライアルはあるものの、全てのプランを有料化している。小池氏によればシンプルな話で、しっかりとしたリソースを投入しなければ質は上がらないし、質が上がらなければ新しいユーザーが付かない、ユーザーが付かなければ売上も上がらずリソースも投入できない。そういうサイクルがあるだけのことだという。
無料で当然と思われがちなウェブサービス時代に、有料であるべき理由を内外に対して用意することも重要なポイントだと感じた。
ユーザーとの対話で人(他社)との違いを見いだす
以前にも書いたが、トークノートの原型はYammerに似ていた。しかし、現在は全く違うサービスに進化している。小池氏はユーザーとの対話の中で改善すべき箇所を見つけてブラッシュアップしたことが現在の状況に繋がったと話してくれている。
今度は類似のサービスが出てきているトークノートだが、この改良フローがなければ、問題が発生した時にどのように改善してよいかが分からなくなる。結果的にその差は縮まることはない。
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さて、こういった業務効率化のツール、エンタープライズ向けのサービスは携わるプレーヤーも限られているが、それだけにノウハウが共有されることも少ない。もちろん、実際はこれ以上の積み重ねがあっての躍進だが、参考になれば幸いだ。
※注:トークノートのサイトでは8000社となっているが、これは1000社刻みでの表示となっているため。
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