ウクライナ拠点、世界1,400万ダウンロードを誇る生産性向上アプリのスタートアップ「Readdle」にインタビュー

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Readdle

ウクライナを拠点に、iPhoneとiPad向けのユーティリティアプリを開発する「Readdle」。2007年の創業以来、生産性や実用性をテーマに7つの主要アプリを展開。「Scanner Pro」や「Calendars 5」など、グローバルの総ダウンロード数は1,400万を上回る。来日中のマーケティングディレクター、Denys Zhadanovに会って話を聞いた。

Readdleの始まりは、まだiPhoneにアプリが搭載される前にさかのぼる。初のプロダクトは、Safari専用のリーダーだった。プロダクトがAppleにも気に入られたこともあり、iOSアプリとして開発することに。その後いくつものアプリをリリースするが、最初のヒットは「Scanner Pro 2009」だった。レシートから書類まで、スマホを使って紙をスキャンするという発想は当時まだ新しく、グローバルのビジネスアプリNo.1の座を1年半にわたって維持し続けたと言う。

半数を占める有料ダウンロード

総ダウンロード数1,400万のうち、半数はライト版や限定プロモーションで無料ダウンロードしたユーザーだが、残り半数は有料版ユーザーだ。Readdleのアプリは、約7ドルから10ドルの価格帯で決して安くはない。しかし、人は時間やお金を節約してくれるアプリにはお金を払う、とDenysは話す。同社のアプリの中でも一番人気は、iPad向けPDF管理ツール「PDF Expert」だ。10ドルの値札のついた同アプリが一番の売れ筋で、日本でも50万ダウンロードを記録している。また、高まる需要に応えるため、今年4月には法人向けのPDF Expert Enterpriseもリリースした。

最近日本語版がリリースされたのが、カレンダーアプリ「Calendars 5」。ユニークなインタフェースで、スケジュール管理とタスク機能を併せ持つ。また、RemindersやGoogle Calendarもサポート。メールを打つように文章として予定を入力すると、自然言語処理でイベントの時間や場所、相手を自動入力してくれる。この機能はまだ日本語未対応だが、対応に向けて動いているという。

小さすぎる自国のアプリ市場、外を目指すしかない

Readdleの共同ファウンダーは、Denysの兄や、その友人数名から成る。ウクライナを拠点としているものの、ユーザーのほとんどを米国ヨーロッパが占める。

「そもそもウクライナのアプリ市場は小さいんだ。スマートフォンは普及しているけれど、iPhoneはまだまだ高額で手が出ない人も多い。ましてや、Readdleの立ち上げ当初、アプリにお金を払う感覚は皆無だった。」

また、スマートフォンを購入したユーザーは自らアプリをダウンロードすることはせず、10ドル程の追加料金を支払って購入店舗におすすめアプリを一括インストールしてもらうのが一般的。これは、ほんの数年前までローカライズされたApp Storeが存在せず、ウクライナのクレジットカードにも対応していなかったことに起因すると言う。そんな背景から、Readdleは国外、特に米国やヨーロッパ諸国をターゲットに据えるしかなかった。

積極的にプロモーションなどをすることはしなかったが、その洗練されたプロダクトはハイプロファイルなインフルエンサーの目に留まり、利用者は自然と増えていった。例えばReaddleDocsは、AllThingsDの生みの親でもあるWalt Mossberg氏などを初期からのファンに持つ。その後、当時はまだコンセプトが目新しかったScannerProのリリースによって多数のメディアに取り上げられていった。

一つのアプリを使うと、他のアプリも試してくれる

全てを内製で作るReaddleのチームメンバーは45人。13人のエンジニアに加えて、マーケター、デザイナー、テスターなどがいる。また、有料のユーティリティアプリを提供しているため、カスタマーサポート部隊も抱えている。日々届くユーザーからのメールには全て目を通し、返信する。丁寧なサポート体制を含むユーザー体験が、人々をReaddleプロダクトのファンにしている。

「Readdleのプロダクトをどれか試すと、他のプロダクトも使ってくれるユーザーが多い。実際、アップデートなど最新情報を配信するメルマガの購読者数は100万人以上いて、一つのプロモーションチャネルとしても機能しているよ。」

Readdle-team

Readdleが次に控える大きな発表は、PDF管理ツールの「PDF Expert」のアップデート。ここ数週間で、iOS 7に対応した新アプリとして誕生する予定だ。PDFを読むことはもちろん、署名したり、注釈をつけるといったさまざまな機能を搭載している。最新バージョンではインタフェースも改良され、他の類似アプリにはない独自機能も追加される。内容はリリースされてからのお楽しみだ。

「僕たちは、人々の生活や仕事の効率や生産性を上げるプロダクトを有料で提供している。対価に対して十分に満足してもらえるよう、最良の製品をリリースすることを最優先しているんだ。それでもバグが見つかれば、即座に対応する。これを徹底することで、国外で少しずつReaddleのブランドが出来上がっていったんだと思う。今後は、日本にももっとユーザーを増やしていきたい。」

これまで静かに、でも確実に自社プロダクトの根強いファンを獲得してきたReaddle。日本での展開が楽しみだ。PDF Expertの最新版のリリースについては、またお伝えする。

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