世界で1,800万DLされるフィットネスアプリ「Noom」のCEOが語る、チーム作り、コアバリュー、そして3年後

by Yukari Mitsuhashi Yukari Mitsuhashi on 2013.12.17

Noom-Saeju JeongNoomの共同ファウンダーでCEOであるSaeju Jeong氏

韓国発NY創業スタートアップ「Noom」については、The Bridgeでも過去何回かにわたって伝えてきた。Noomは、全世界で1,800万人以上がダウンロードする今注目のダイエット・フィットネスアプリだ。この度、今年8月末に日本でもリリースされたAndroidアプリ「Noomダイエットコーチ」に新たな機能が加わった。

ユーザー同士が助けあう「グループ機能」は、ユーザーが入力した目標体重、年齢、性別、居住地をもとに、Noomのシステムが自動的にグルーピング。プロフィールが類似したユーザーとグルーピングされることで、切磋琢磨し、励まし合うコミュニティが生まれるという。米国では今年5月に先行リリースされており、有料のPro版ユーザーなら誰でも利用できる。

今回の新機能追加に際して、Noomの共同ファウンダーでCEOであるSaeju Jeong氏に、起業、チーム作り、日本市場への展開、ヘルスケア領域の未来などについて聞いてみた。

起業までの道のりと、抱いた大志

韓国では、海外の大学や大学院に留学して1〜2年の就業経験を積み、母国に戻る若者が多いと言う。そんな中、大学を中退し、現地でのコネクションゼロで渡米したJeong氏。Noomの現在の拠点でもあるニューヨークで就いた最初の仕事は、ブロードウェイミュージカルのプロデューサーだった。

Q.バックグラウンドと韓国から渡米した経緯は?

A .Saeju Jeong氏と申します。1980年生まれの韓国育ちです。韓国の農村部で育ち、その後、弘益大学校で電気工学を学ぶためソウルに行きました。19歳のとき、最初のメディアビジネスを始めました。そのレコード会社は、ロックからジャズ、ニューエイジのジャンルを扱っており、すぐに国内の音楽マーケットで優位に立つことができました。その後、もっと大きなことを成し遂げたいと思い、大学を中退して、2005年にニューヨークへと渡りました。

私は田舎育ちなので、大都市への憧れを常に抱いていたのですが、ニューヨークはまさに世界でもっとも大きな都市のひとつ。経歴も人脈もなにも無い状態でニューヨークに行き、ゼロから人脈を築いてブロードウェイのミュージカル『Bye Bye Birdie』のエグゼクティブ・プロデューサーになったんです。そして、ブロードウェイの一流の人材を雇うことができました。2006年には共同創業者となるArtem Petakovに出会い、翌年からウェルネス分野における強いテクノロジー企業を少しずつ築いていきました。

Q.韓国で起業するという選択肢は考えなかった?

A. 考えませんでした。起業を始めた時から、韓国を拠点にして本当に力のあるグローバル企業をつくることを目指すのであれば、一流の人材を揃えることはできないだろうと考えていました。グローバル企業を築くのには、上海やソウルといった場所で一流の人材を集めるのは困難でしょう。ニューヨークは、最高の人材を雇い、企業を迅速に成長させるのには最適の場所です。どんな人材がニューヨークという世界最大の経済・ビジネスの拠点に集まるか。それを考えれば、簡単に分かることです。何の人脈も持たずにニューヨークに来ましたが、一度来てみれば何かを得られるだろうと考えていました。リスクを取って実行に移してみるまでは、何が起こるか分からない。私はリスクをチャンスと考えています。だから、ニューヨークに来たのです。

Q.起業家に望ましいクオリティーは?

A. 新しいことに常に好奇心を持っていて、問題解決が好きな人でしょう。ある課題を解決できると信じて、その後に直面する困難や障害を乗り越えるのは多大なエネルギーを使います。問題解決にマニュアルは存在しないのです。その人自身が解決策を見出さなければなりません。知恵を絞って、行動に移す必要があります。

超優秀で、まるで家族のようなチーム

世界中の優れた人材を集めるという意味でも、迷わずニューヨークを拠点に選んだJeong氏。人材探しを、まるでデートのようだと話す。

Q.Noomのチームを一言で表すなら?

A.Noomのチームは、賢くてオープンマインド、まるで家族のようなチームです。

Q.チームとメンバーに求めることは?

A. 今は、世界全体でフルタイムのスタッフが55名います。エンジニアが20名、デザイナーは5名。3つありますが、まず職務内容に必要とされる基本的なスキルを満たしていること。これは、エンジニア、マーケティング、ビジネスなど、どの職務においても共通します。次に、コミュニケーション能力。チームワークはコミュニケーション無しには成し遂げられません。最後に、誠実さを求めます。

Q.人材はどう見つける?

A. 最高の人材を手に入れるためには、あらゆる情報チャネルを使います。デートと一緒です。ある人とデートをしたかったら、その人を惹き付けるためにあらゆることをするでしょう。私たちは最高の人材を得るためにあらゆるチャンスを活用します。面接工程はとても長く、大変です。採用されるのは簡単ではありません。素晴らしい製品、カルチャー、企業、そして主力メンバーが良い人材を集めるチャンスをもたらすのです。

Noom-team

2年後の継続率40%、「コーチング」というコアバリュー

フィットネスやダイエットに求められるのは、日常的なコーチングと、挫折しそうな時の励ましやモチベーションだと言う。数ある選択肢がある中で、ユーザーはなぜNoomを選ぶべきなのか。

Q.Noom利用者とその継続率、ユースケースは?

A. 現状、Noomの利用者の大半が女性で、20〜30代です。40代の女性もいます。利用開始から2年経過後も、40パーセント以上のユーザーが利用を継続しています。減量したい、見た目の自信をつけたいといったきっかけがあるようですが、中には出産後、体重が増加したため減量したいといった特定のニーズを持っているユーザーもいます。

Q.ユーザーがNoomを選ぶべき理由は?

A. Noomは、他のヘルスケア製品とは異なります。Noomは高い情報処理能力による栄養・運動面でのコーチングに加えて、ユーザーのやる気の部分もサポートします。一日中ポケットに入れてもかさばらないサイズです。長期的に継続可能な製品なのです。

また、私たちは記録をつけることが大切だと考えています。一方で、記録をつけ続けることは大変です。そのため、Noomはユーザーのデータを解析し、積極的にコーチングを提供します。私たちが提供するものは実現がとても難しいものです。人工知能をつくることを目指しているのですが、それは簡単ではありません。私たちはユーザーの行動から日々学習し、製品に改良を加えています。

Q.プロダクトへの譲れないこだわりは?

A. 「結果」です。ユーザーに良い結果をもたらす製品であること。より良い習慣とライフスタイルを提供します。結果を重視することが、サービスやUIを改善する原動力となっているのです。

スピード重視、ローカル市場に100%耳を傾けること

適切なローカライズで、世界中のユーザーが使われるNoom。言語のローカライズは大前提。ヘルスケアという分野だからこそ、国別のライフスタイルへの注意が鍵となる。今後、日本の企業やサービスとの連携も十分ありえそうだ。

Q.機能やデザインのローカライズは?

A. 機能やデザインはどの国でも同じです。私たちの強みはテクノロジーとデザインにあるからです。私たちは今のところ、素晴らしい才能をもったエンジニアとデザイナーの仕事に心から満足しています。一方で、タスクの内容や食事のデータベースといった面は、日本のユーザーに合わせてローカライズしています。

Q.他国市場への展開で気をつけるべき点は?

A. 私たちはスタートアップですので、早く行動します。決断を早く下し、マーケットに参入する時には根気強さが求められます。適切なスケジュールを立てることがとても重要です。

また、ローカルの声に100パーセント耳を傾けることも重要です。あるマーケットのユーザーに向けて発するメッセージの言語は、完全にローカルな言語でなければなりません。私は日本人のライフスタイルを大切に思っています。私たちは適切なテクノロジーをもたらすことを得意としていますが、だからといって「米国製テクノロジー企業」という存在でいたくはありません。韓国には「消費者は王様」という言葉がありますが、同様のことが日本人ユーザーにも当てはまります。私たちはニューヨークを拠点にしていますが、サービスに不満を抱いているユーザーがいれば耳を傾けます。これは製品を開発する上で大事にしてきた考え方で、製品を改良する際にも重視していることです。

Q.Noomのプロモーション方法は?

A. 常に意識しているのは、ダイエットサービスを提供している多くの企業とは異なり、マーケティングをし過ぎないということです。 米国では、ユーザー獲得のためのコストは全くかかっていません。逆に、サービスのクオリティーとユーザーとの対話を重視しているのです。私たちのメンバーは皆、ユーザーが何をさらに必要としているかに注意を払います。しかし、世界最大のフィットネスクラブチェーンであるCurvesや、韓国で有名なコスメブランドのAmore Pacific、アメリカ国立衛生研究所、国連といったグローバルなパートナーもいます。こうしたパートナーとの連携は、確実にブランドの信頼性を高める効果を果たしていますので、引き続き、食生活と運動によって人々の生活を改善するという目的を共有しながら、連携をしていきたいと思っています。

Q.日本企業やサービスとのタグはありえる?

A.  日本国内の組織とタグを組むやり方としては、さまざまな方法が考えられます。既に私たちのテクノロジーが使われている医療機関と連携するというのも、そのひとつです。より幅広い視点で見れば、食生活の改善や運動を通じて、より健康的な生活の実現を支援するサービスに注力を入れている組織であれば、提携の可能性が考えられます。健康、食生活、運動、生活習慣、ライフイベントといった幅広い分野での提携が可能でしょう。どの分野から着手すべきか、検討している段階です。

Noom、そしてモバイルウェルネス市場の未来

ハードウェア業界に大きな変化をもたらし始めたウェアラブルデバイス市場。Fitbitのようなウェアラブルを作る企業だけでも、その数は既に100社を超えている。これからどんなエコシステムが形成されていくのか。

Q.同じ領域で注目するサービスは?

A.  同じ領域で注目しているのは、フードスキャナーです。これは2年後には販売されるでしょう。飲食物をスキャンしてカロリーを示すものです。ウェアラブルデバイスのGalaxy Gear。これは業界を変化させるものになるでしょう。

Q.今後モバイルウェルネスやフィットネスはどうなる?

着用可能なウェアラブルデバイスは、ハードウェア業界に大きな変化をもたらすと思います。ラップトップがハードウェアを大きく改良したように(CPUの速度が上がるなど)。スマートフォンも半年毎に改良されています。ハードウェア業界では常に熾烈な競争が繰り広げられており、ソフトウェア企業がそれに追随するといった状況が見られます。例えば、プレイステーション4が最近リリースされましたが、対応しているソフトウェアはまだ十分ではありません。

ここ最近、ウェアラブルデバイスを目にするようになり始めましたが、安く、耐久性が高く、軽く、速いといった特徴をもつこうした新しいデバイスは大きな変化をもたらします。ソフトウェアメーカーとして、これらの変化をチャンスだと捉えています。ソフトウェアメーカーはより楽しく、面白いサービスをつくり、エコシステムをつくるようになるでしょう。Fitbitのようなウェアラブルデバイスを作る企業は、既に100以上あるのです。私たちは、より軽く、安く、速いソフトウェアエクスペリエンスを提供します。似たような製品がより一般的になっていくでしょう。マーケット全体がかつてない速さで成長していくはずです。

Q. Noomが思い描く3年後の未来は?

A.  Noomはヘルスケア分野のエコシステムにおいて、どんどん多くのことを成し遂げていきます。食生活の改善と運動だけで、健康を改善していくというのはすごいこと。この2つだけで、健康をあらゆる側面で劇的に改善していけます。糖尿病や心臓疾患の予防、全体的なエネルギーレベルの向上、健康的であることでもたらされる精神面の気分の良さなど。Noomのもたらすメリットは計り知れないほど大きく、素晴らしいものです。

 

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