「女の子を可愛くしてあげたい」という原点に戻り、ELLEgirl編集長からITスタートアップ「iQON」に参加した澄川恭子さん【前編】

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Kyoko-Sumikawa-iQon

私の強み。考えたことがなかったけど、マスの目を持っているってことかな。大衆の目。かっこいいものは好きだけど、同時に若い子たちと同じように憧れとかミーハーな部分も持っているというか。そこを今の若い子たちと何ら変わりなく共有できることですかね。

以前にTHE BRIDGEでもお伝えした、「iQON」への強力な新メンバーの参加。ELLEgirlの前編集長の澄川恭子さん。ハースト婦人画報社(旧婦人画報社)の女性誌の編集部でキャリアを積んできた、女子向けコンテンツを作るプロフェッショナル。

 ただ、女の子を可愛くしてあげたい。出版社に入社した当時から変わらないその想いを原動力に、デジタルマガジンという新しいチャレンジに挑む澄川さんへのインタビューです。お話を伺っていくうちに、サービス作りとコンテンツの編集にある共通点が見えてきました。

可愛くなりたい女の子の悩みやコンプレックスを解決してあげたい

三橋:今日はよろしくお願いします。一ヶ月程前にiQONにジョインしたということですが、澄川さんの今までのご経歴を教えていただいても良いですか。

澄川:婦人画報社という出版社で、今はもうなくなってしまった雑誌「Vingtane(ヴァンテーヌ)」の編集部にいました。その後、「ELLE」へ移動し、「ELLEgirl」の編集長に。

三橋:では、ずっと編集をされてきて、会社を変わるのは今回が初めてなんですね。

澄川:そうですね。ただ、まるっきり日本の会社だった婦人画報社が、フランス、アメリカの会社に買収されたことで、企業文化や雰囲気に変化がありました。そういう意味では飽きることはなかったですし、面白かったですよ。

三橋:iQONに入ってみて、女の子って実はこうなのか!っていう発見はありましたか。

澄川:やっぱり、女の子ってみんなおしゃれになりたいと思っているし、可愛くなりたいっていうのは永遠のテーマだと思うんですよね。それが特に強いのが20代で、30歳を過ぎるとライフスタイルの変化で視野も広くなるし、コンプレックスも少しずつ手放される。でも20代って、隣に座ってる人と自分を比べてしまう。それを例えば、ファッション、コスメというもので解決できるなら解決してあげたいと思っています。

三橋:誰かのために何かを解決してあげたいっていうところが根幹にあるのは、サービスも、雑誌の編集も、作り手の想いに共通するものがありますね。

澄川:今までは、その解決を提供できる場が雑誌だと思っていたんです。でも、ELLEgirlで、雑誌だけじゃなくWebサイト、SNS、ELLEgirl LABOという新しい取り組みをやってきたことで、いろいろな届け方があるんじゃないかなって思うようになって。今の世代に伝える方法の一つとして、iQONのデジタルマガジンがあると考えています。

三橋:その時代ならではの、発信の形があるっていうことですね。ITスタートアップに入社してみてどうですか。

澄川:カルチャーショックの連続ですよ。コピーなんかしてるの私くらいですし、社内の情報共有の仕方も違うし。でも、世界がすごく広がりました。優秀なエンジニアが常にそばにいて、これってできるの?っていう疑問にすぐ答えが返って来る。「想像できることは実現できます」って言ってくれる彼らと隣り合わせに仕事ができることはすごく心強いです。ワクワクしますね。

三橋:iQONのデジタルマガジンはいつ頃のリリースになりそうですか。

澄川:今のところ4月末を予定しているので、今、急ピッチで動いています。デジタルマガジンでコンテンツを提供するだけではなく、リアルな女の子達が参加する方法を模索していきたいと思っています。今は私一人なので、早急にスタッフを揃えるのが先ですが。

若い子が抱く憧れやミーハー心にいつまでも共感できること

三橋:最近はネットでも女性をターゲットにしたコンテンツ系サイトが増えてますけど、iQONならではのコンテンツってどんなものをイメージしていますか。

澄川:ただファッションが好き!っていうiQONの80万人の女の子たちに、日本に留まらない、男性目線や局地的に偏らない情報を伝えていきたいと思っています。例えば、デザイナーの想い、世界のトレンド、世界中の女の子たちの着こなしなど。デジタルの世界では情報もボーダーレスです。それはファッションそのものがボーダーレスになることを意味すると思うので。

三橋:澄川さんのおっしゃる、デジタルな情報発信に留まらないものっていうのは具体的にはどんなものでしょう。

澄川:今って、アプリとかゲームとか、何となく使いこなして終わりっていうことが多いですよね。そうじゃなくて、もっとリアルな体験をさせてあげられる場を作ってあげたいんです。例えば、ファッションの悩みを打ち明けてみんなで解決したり、コーディネートのスキルアップができるちょっとしたゲームを仕込んだり。そうやって、もっとおしゃれになった彼女達が、行く行くはファッション業界で働くようになるかもしれない。ただ着ることの楽しみを越えて、違う形でファッションを身近なものにしていきたいですね。

三橋:ファッションが、一方的に発信されるものではなくなる感じがしますね。澄川さんは、ご自身の強みってどこだと思われますか。

澄川:私の強み。考えたことがなかったけど、マスの目を持っているってことかな。大衆の目。かっこいいものは好きだけど、同時に若い子たちと同じように憧れとかミーハーな部分も持っているというか。そこを今の若い子たちと何ら変わりなく共有できることですかね。

三橋:発信者でもあるけれど、向こう側にいる受け手の心も忘れないこと、ですか。

澄川:私だって、特におしゃれでもない普通の女子大生だったわけですよ。あんな業界で働きたいな、あんな風になりたいなって夢を描いていた。そんな自分が、女の子が憧れる編集長という立場になれる。今度はそれを次の世代に体験してほしいっていう熱い想いがあります。

三橋:もともと雑誌が作りたかったんですか。編集者になりたかったとか?

澄川:別に雑誌が作りたかったわけじゃなくて、ただ女の子を可愛くしてあげたかったんです。それを大勢の人に提供できる場って?と考えた時に、当時はそれが雑誌だったので。わたしの原動力とか強みは、まさにその想いかも。

女の子を可愛くできるなら、ツールはなんでもいい

三橋:そんな雑誌を離れて、今回iQONに来た最大の決め手ってなんだったんですか。

澄川:やっぱり時代の変化ですね。例えば、ELLEgirlってどの雑誌よりも先にトラベルサイズを出したんです。8年くらい前ですけど、当時は最新号が出る度に書店からサイズを他誌と同じサイズに戻せってクレームがありました。でも、世界的にはトラベスサイズが流行していたし、これからはそういう時代だと思っていたし、実際、電車の中でもトラベルサイズを持っている女の子達を見かけました。でもここ1年で、外で雑誌を持っている女の子が消えてしまいました。みんながスマホに乗り換えて、これから全然違う時代が来るんだろうなって。

三橋:でも、紙の雑誌はなくならないですよね?

澄川:みんな雑誌が好きだし、雑誌がなくなることはないと思います。でも、それと同時並行で違う物もくるかもしれない。書店に行って、立ち読みして、レジで買うってすごくハードルが高いですよね。もっと近いところで違う形で提供できるかもしれないと思うようになりました。

三橋:ルーツに帰ったんですね。

澄川:そうですね。女の子を可愛くしたいという原点に立ち返った時に、だったら、ツールは何でもいいのかもしれないと思いました。次の時代に向けた表現の仕方があるなら、出版社にこだわらず、時代の流れに乗っていこうという気持ちです。

後編につづく。

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