「虚構で作ったコンテンツは見向きもされない」:80万人の女の子が集まる「iQON」のデジタルマガジン編集長、澄川恭子さん【後編】

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「「女の子を可愛くしてあげたい」という原点に戻り、ELLEgirl編集長からITスタートアップ「iQON」に参加した澄川恭子さん」の後編をお届けします。前編はこちら

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7年前、「やらせられた」ELLEgirlオンラインの立ち上げで得たもの

三橋:iQONへの参加は、これまでのキャリアで一番のターニングポイントになるんでしょうか。それとも、今の自分がいることに影響している体験って他にありますか。

澄川:それは、ELLEgirlの編集長代理となった7年前ですね。自分が携わった初の号を出すか出さないかという時に、現ハーストの社長からオンラインの立ち上げを命じられて。当時は「サイトマップって何ですか?」というくらいデジタルを理解していませんでしたから、正直「は?」って感じでした。ブログとか流行りだしていたけれど、自分にとっては遠い人の話くらいに思っていたので(笑)

三橋:そっか、7年前ですもんね。

澄川:でも、オンラインの立ち上げをミッションとして与えられたので、もうやるしかなくて。その時に、紙とデジタル、その2つをつなげることを否応無しに考えさせられました。その時は、「させられた」っていう感覚だったんですけど。紙には載せきれなかったネタをオンラインで見せたり、それぞれの活かし方が見つかっていって。

三橋:デジタルにも理解がある今の澄川さんがいるのは、その時の経験が大きいんですね。

澄川:その後、さらにSNSの時代がやってきて、読者とより強くつながれるようになったことで、人を動かす楽しさみたいなものも知ることができました。世の中の潮流がまだデジタルメインじゃない頃に触れて勉強していたので、デジタルへの理解が生まれたんだと思います。あの経験がなければ、今ここにいないと思います。

三橋:これまでずっと女の子、女性向けのコンテンツを作ってきて、一番印象に残っている特集とか取り組みってなんでしょう。

澄川:印象的な号って難しいですね、いっぱりあり過ぎるし、わりと過去を捨てちゃうタイプの人間なので忘れた部分も…。でも、ELLEgirl LABOの立ち上げは新しかったと思います。読者の中から選んだ15人の子達に誌面を作らせたり、リアルイベントをプロデュースさせたり。発信力を持った子達を一緒に育てていくというか。

三橋:iQONでも、ただ可愛いファッションを着るっていうことを越えて、そんな取り組みをしていくってことですね。楽しみですね。

澄川:そうですね。ELLEgirl LABOは15人でしたけど、iQONではもっと大勢に向けて、みんなが参加できる形にしたいなって考えています。

編集者に求められるのは、「適応力」

三橋:編集っていう仕事に必要なスキルとか性質みたいなものってありますか。

澄川:適応力かな。自分が行きたい雑誌の編集部に配属されないかもしれないこともある。だからといって、つまんないって思いながらやっていたら、それが誌面にも表れちゃうでしょ?適応力を持って楽しんでいる人の周りには、人が集まるし、助けてくれる。自分が楽しんでるかどうかかな。

三橋:編集だけじゃなくて、仕事全般に言えることかもしれないですね。

澄川:そうですね。楽しむ力がなかったら、私自身ここにいません。人生論になってしまいますけど、人生なんて誰も同じように辛くて苦しいものだと思うんです。でも生きていかなきゃいけない。私の命が365日だとして、それを泣いて暮らすのか、笑って暮らすのか。私はやぱり笑って暮らしたいと思うので。

三橋:最初にも伺ったんですけど、女の子とはこういう生き物だってことを、澄川さんならどう表現しますか。

澄川:女の子は、一生可愛くいたいと願っている生き物だと思います。可愛いのか、素敵なのか、その方向性は一人一人の心の中にあるものだと思うんですよ。AKBみたいになりたいなのか、ミランダ・カーみたいになりたいなのか、人それぞれ。でも、いつまでも「あの人素敵よね」って言われ続けたい。それは顔立ちだけじゃなく、洋服だったり体系だったり、雰囲気だったり。何かが素敵になる要素を持ち続けたいと思っている生き物だと思います。

虚構で作られたコンテンツは見向きもされない

三橋:以前から不思議に思っていることがあって。男性誌の女性版みたいなものって物足りなくて、結局男性版を読んでしまったりするんですけど、あれってなんでしょう。

澄川:私の個人的な意見ですけど、女ってこういうもんだよね的な、作られた虚構の中で人が作っているような気がします。女の脳って、そんなにウェットじゃないし、実はけっこうドライです。面白いもの、辛辣なものだって全然好きだったりする。そこを理解しないで、一般的な虚構をベースに思い込みで作っているんじゃないかな。

三橋:なるほど。女性とはこういうものだっていう虚像をもとに作られているから、ですか。

澄川:女性は可愛く、従順で、みたいな。そこが、実際に働いていたり、自分をしっかり持っている女性には何一つ響かなかったのでは?むしろ女性のほうがオヤジの部分もあるじゃないですか(笑)実は男子のほうがロマンチストだし。それを男子目線で、女の子ってこうあってほしいっていうところで作ってしまったのかもしれない。実際にはそんな女性一人もいないから(笑)

三橋:なるほど。納得しました(笑)最後に、女の子に向けてコンテンツを作っている人たちにアドバイスをいただけますか。女子に刺さるコンテンツを作るには、どこに気をつけるべきか。

澄川:デジタルだからといって、今の話じゃないですけど、虚構で作らないことです。私は、しょっちゅう若い子を呼んで、彼女達が使うもの、見ているもの、興味があるものを聞くようにしています。きっと○○だろうな、で作らない。自分が若い子のものを作らなきゃいけなかった時も、自分が20歳くらいの時にどういう気持ちでいたかをすごく掘り起こしました。何になりたくて、どう思って、何に悔しくて、何を魅力的に感じたのか。それって時代が変わっても感じることだから。

三橋:ユーザーの声をちゃんと聞くって、サービス作りにも全く同じことが言えますね。

澄川:結局、デジタルにしても雑誌にしてもツールでしょ?だから、使う人たちが本当にどう思っているのか、なんでそれを読みたいのか、使いたいのか。そこを見極めて落とし込んでいかないと、見向きもされないものになってしまう。勝手に暴走しないで、生きた人間を見て、その距離をどうデジタルで便利に埋めるかを考えていきたいと思っています。

三橋:今日はどうもありがとうございました。