安さと利便性で旅行業界をディスラプトするBORDER、日本人ビジネスマンの海外出張需要を取り込めるか?

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今週はジャカルタに来ている。来週は台湾だ。なんとなくこんな日々が続く中で、毎度のことながら、飛行機のチケットと宿の手配は面倒なものだ。以前、THE BRIDGE 英語版で取り上げた Kaori-san のような秘書サービスを使えばいいと、アウトソースを勧める友人もいるが、フライトやホテルに対する自分の好みを定量的に伝えるのは難しいし、旅程が意としたイメージと異なる内容だった場合、おそらく手配してくれた人に不満をぶつけてしまうだろう。

それで結局、自らオンラインでフライトやホテルを手配することになっているのだが、このジレンマを解消してくれるであろうスタートアップが現れた。ビジネス出張に特化して、ツアーオペレータがフライトとホテルの手配をしてくれるサービス「BORDER」だ。

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旅の予約をする場合の商流を表すと上図のようになる。今までの旅行予約では、旅行代理店、ツアーオペレータ、フライト・ホテルの順でオーダーが流れる。Expedia などに代表される、オンラインの安売チケットサイトでも、この商流は変わっていないので、そういう観点では Expedia とてディスラプティブな存在ではない。営業店舗の設置コストが不要で、ツアーオペレータや飛行機会社/ホテルの営業努力によって、安い料金を生み出しているに他ならないのだ。

一方、BORDER では商流において、旅行代理店をスキップする。代わりに、BORDER を通じてフライトやホテルの好みを伝えると、複数のツアーオペレータが案を提示してくれるしくみだ。この点においては、自分の好みを伝えると、複数の不動産業者から新居の提案が得られる「ietty」に近い。

ここでいうツアーオペレータはすべて日本の会社で、日本の旅行業法の免許を持っているだけでなく、世界主要都市に現地オフィスを持っています。その現地オフィスの担当者が直接、日本語で対応してくれるので、安売チケットサイトにはできないフライトやホテルの提案が実現できるわけです。

ツアーオペレータは通常、卸売的な位置で旅行代理店とビジネスをしていますが、旅行業務取扱管理者もいるし、直接、旅の予約を受けられるんです。そこで彼らに BORDER を通じてビジネスをしないかと持ちかけたところ、東南アジア、アメリカ、南米に強い7社が協業してくれることになりました。(代表・細谷智規氏)

出張だけでなく、一般消費者の観光旅行も対象にしていいのではないかと考える読者もいるだろうが、ユーザ〜旅行業者間のやりとりが、出張は平均2往復で済むのに対し、観光では平均10往復必要なのだそうだ。また、観光の場合は旅に対するニーズも多様化しているため、サービスを平準化すべく、BORDER は出張需要にフォーカスすることにした。

PurpleCow の designclue などにもみられるように、サービスを平準化することで、ウェブサイトを通じて発注側は日本語でありながら、受注側は現地語でオーダーを受け取れるようなインターフェースを作ることも、ネットサービスにおいては可能だ。仮にユーザが海外のツアーオペレータと直接取引する場合、日本の旅行業法の対象にはならないため、将来的には日本企業以外のツアーオペレータも BORDER に参加する可能性は考えられるだろう。

大手企業は出張手配において既に取引関係のある旅行代理店が存在することが多い。日本の海外ビジネス出張市場は年間1兆円、そのうち、アジアへの出張需要は6,670億円に上ると言われており、BORDER では特に、中小企業やスタートアップなどのアジア出張にフォーカスしてサービスを展開していきたい、としている。

BORDER を創業した細谷智規(ほそたに・ともき)氏はシンクタンク日本総合研究所出身で、今年 UCLA で MBA を取得して帰日。アメリカでも起業していたが、その事業を一度クローズし、主戦場を日本に移しての一念発起だ。BORDER の投資家の中には、名前は明かせないが大手旅行代理店の OB なども名前を連ねており、旅行業界をデイスラプトしようとする本気度の現れが見てとれる。

BORDER は想定顧客を集めるべく、海外カンファレンス参加や出張に便利なオウンドメディアを開設しており、今後はオンライン・タクシー配車サービスなどと協業でプロモーションの強化を図る。

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BORDER 代表 細谷智規(ほそたに・ともき)氏

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