「起業家たるもの、ハードワーカーたれ」−ファッションシェアリングや見守りサービスなどがプレゼンを行った全国Startup Day in 中四国

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全国各地の起業を促進するため、トーマツベンチャーサポートとサムライインキュベートが企画している「全国Startup Day」。大阪、札幌、中部、九州と、これまでに全国各地の会場でイベントを開催してきた。イベントの内容は、VCらによるトークセッションと、各地域から選ばれたスタートアップたちによるピッチが行われる。3月には、各地域でグランプリを獲得したスタートアップたちによるファイナルプレゼンが行われる。

今回は、先日行われた中四国エリアによるイベントの内容をお届けする。

起業家たるもの、ハードワーカーであれ

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まず始めに行われたパネルディスカッションでは、地方ベンチャーが成功するためには何が必要か、といったテーマで議論された。ゲストには、さくらインターネット田中邦裕氏、フューチャーベンチャーキャピタル愛媛事務所長の宮川博之氏、Draper Nexus Venture Partners,LCCの中垣徹二郎氏、司会にトーマツベンチャーサポートの権哲基氏が登壇した。

これまでに、いくつもの企業のIPOを達成し、企業の成長をサポートしてきた宮川氏。「起業家たるもの、ハードワーカーたれ」というキーワードこそが、投資において最も重要な点だという。

「事業について24時間考えて、熱い思いをもって行動できる人。さらに、サービス改善のためのPDCAをしっかりと回し、投資後もサービスについて色々と議論できる人。きちんと事業に誠実に向き合っている人かどうかが大切」(宮川氏)

サンフランシスコと日本を往復している中垣氏は、「中長期のビジョンを持っている人」と語る。投資家は、大雑把に言えば事業計画書と起業家との対話を担保に投資する存在だと語る同氏によって、短期の利益だけではなく、長期の目線で何をみているのか、そこに向けて人を巻き込んでいける人に投資をしたい、と語る。

投資は、資本政策が最も重要

宮川氏(左)と田中氏(右)
宮川氏(左)と田中氏(右)

学生起業で現在までネット業界の最前線で活動している田中氏。経営者にとって必要なものとして、「ハードワークだけではなく、そのサービスやモノゴトが好きかどうか」が大切だとし、「自分はいまだにサーバーが好き」と田中氏は語るほどだ。そんな田中氏に、投資を受けるメリットについて伺った。

「投資を受けることのメリットをよく聞かれるが、基本的に投資はうけないに越したことはない。株式会社は株式ものでしかありえない。増資を受けると、株主は簡単に変えられない。大株主が売りたいって話が出てくると、事業に対してモチベーションが下がったりとさまざまなところに影響を及ぼす。きちんとした資本戦略を組んでおかないとあとで後悔する」(田中氏)

しかし、投資を受けたことによるメリットもある。「増資を受けることで、経営に携わってくれる人が増え、更に優秀な人がサポートしてくれる」と田中氏。どんなに優秀なベンチャーでも、創業直後に優秀な人を雇うために必要なお金は用意できないからこそ、増資をもとにさまざまな人たちの力を借りながら、事業を成長させることができる、と語る。

独自の課題を設定し、視野を海外にまで向けて行動すること

たびたび議論される、地方と東京の違いについても議論された。中垣氏は、地方でスタートアップすることで、目立ちやすい、ということが大きなメリットだという。

「できたてのスタートアップは、何も実績がないが、地方だと起業していることが一つのアドバンテージになる。まだまだ東京に多くの起業家が集まっているが、逆に言えば地方は人が少ないからこそ、一歩抜きん出ればそこに人もモノもお金も集まりやすくなる。地方から一つでも多くの成功を作るためには、起業家を増やすことも大切だが、成功事例をすぐにつくり上げること。そのためにも、抜きん出て目立つスタートアップになれば、大きく周囲が動く可能性は高い」(中垣氏)

中垣氏
中垣氏

同時に、地方にいることのデメリットとして、情報の格差はあるという。どんなにネットが浸透しても、やはり情報として伝わってくるものは、実際のリアルの現場や直接見聞きした情報量には劣る。だからこそ、地方にいる人こそ渇望感をもって能動的に情報を取りに行ったり、積極的に東京や都市部、シリコンバレーなどの場所に行き、さまざまな人と会って話すようにしなければいけない、とアドバイスを行った。

宮川氏は、地方の起業家は目立つことで行政や金融機関からの集中支援で成長することができる、と話をつなげた。それを踏まえつつ、地方ならでは課題を見出し、その課題解決のためのビジネスを行うことでチャンスがあるという。

田中氏は、地方ならではなビジネスのあり方があるのでは、と提案する。例えばさくらインターネットでは、北海道にデータセンターを配置し、雇用を生んでいる。それは、給料が安いという人件費の問題ではなく、コンピュータを冷やすために北海道にあることに利点があるからだ。もちろん、北海道のデータセンターの社員も、東京となんらかわらない給与体系であり、給料や賃金の格差という問題は、あまり考えるべきではない、と語る。

「その土地の優位性を生かしたり、潜在的な強みで地方で活動すれば、東京以外でも十分にビジネスは成り立つ」(田中氏)

さらに、長い間一箇所にとどまって仕事をしている人よりも、地方都市や海外も含むさまざまな地域を経験してきている人のほうが、アイデアの発想や行動力が違う、とも田中氏は語る。さらに、事業はその地域だけではなく、広く多くの人に届けるものだからこそ、事業に郷土愛を持ち込むべきではなく、地方に固執しない柔軟な人のほうが、地方で成長しやすいのでは、と語った。

最後に、中四国からベンチャーが生まれるために必要なことや期待することは、という質問がなされた。中垣氏は、「成功のイメージを持つこと」とアドバイスする。そのためにも、成功した人のところに行き、五感を通して成功に必要な所作や考え方を学ぶことの大切さを説いた。さらに、近年では海外のスタートアップの多言語化のスピードを指摘。日本において、日本だけを市場にしている間に、世界では急速に事業を成長させてきているスタートアップがいる、と中垣氏。

「500 Startupsは、日本のスタートアップに15社程度出資しているが、実はブラジルのスタートアップにはすでに25社も投資をしていると聞いている。始めから、視点をグローバルにもつことで、世界のVCからも注目してもらいやすくなる。地方や日本、といったスコープだけではなく、もっと世界を視野に入れていかないと、気がついたら海外のスタートアップに日本市場自体もシェアを取られてしまう可能性がある。ビジョンを大きくもって事業にとりくんでもらいたい」(中垣氏)

 

中四国出身スタートアップによるピッチ

パネルディスカッションが行われた後は、中四国地方のスタートアップ6社によるピッチが行われた。登壇したなかから、注目のスタートアップをいくつか紹介する。

ファッションシェアリングプラットフォーム「Laxus」(グランプリ)

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Laxusは、月々6800円で、1000以上ものブランドバックを無制限で使えるファッションシェアリングサービスだ。多くの女性のファッションキーアイテムの一つであるバック。ここぞ、というシーンにおいて色々な種類のバックを使い分けたいが、全部を自分が持つには部屋のスペースの問題やコストの問題がのしかかってくる。そこで、Laxusが運営元となり、数十万円もする高級ブランドバックをレンタルビデオ店舗のようにユーザに自由にレンタルしてもらう仕組みを提供する。

もちろん、それぞれのバックにはRFIDタグが仕込まれており、盗まれたり偽物との交換による偽造を防ぐことができる。バックは利用シーンがある程度限定されているため、衣服のように幅広い個人の好みに対応する必要もない。さらに、メンテナンスの手間も容易のため、回転率を高めることで利益を保つことができる。

エスは、英会話教材「エブリデイイングリッシュ」を長い間提供している企業で、通販経験豊富な企業だ。そのため、Laxusにおける配送コストも独自のルートによって安く抑えることができるという。2月から3月でテストマーケティングを行い、4月から5月に正式リリースを行う予定だ。さらに、正式リリースに合わせて資金調達も視野にいれており、数年規模でユーザ数を一気に拡大していくという。

beaconを使った見守りサービス「OTTA」(トーマツ賞)

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見守りサービスの「OTTA(オッタ)」は、スマートフォンのBluetoothとbeaconタグを使い、子供の見守りを助けるサービスだ。

小型の端末を、見守りをしたい子供やペットに持たせるだけで、OTTAのアプリをインストールしている人が見守り人となり、小型端末から発信されるデータをもとに居場所を感知することができる。つまり、アプリをインストールしている人が増えれば増えるほど、見守りの精度が高くなり、普段に生活の中で異変が起きた時に察知しやすくなる。

端末料金は0円だが、月々の利用に際して300円の課金を行っている。beaconを活用したサービス自体がまだまだ少なく、さらに子供の見守り向けの市場自体は今後成長の見込みがある市場といえる。大手のコンビニやモールなど、子どもやファミリーが行き交う場所にbeaconを読み取る端末などがあることで、見守りしやすくなるかもしれない。

現在、複数の自治体で実証実験を行っている。さらに、事業会社との提携なども視野にいれており、OEM提携などテクノロジーを活用したサービスの普及を目指している。

otta PV from otta on Vimeo.

企業内英語保育園運営サービス「リノヴェ」(サムライ賞)

子育て問題を解消するために、企業内に保育園を設置し、運営しているリノヴェ。さらに、この保育園はインターナショナルスクールとして、英語教育ができる保育園でもある。外国人講師を保育園に呼び、保育士に対して英語研修を行うことで、バイリンガルの保育士を常駐させることができる。保育士をバイリンガルに育成することで、保育士自体の単価を向上させ、優秀な保育士を育てながら、企業内保育施設を充実させていくのが狙いだ。

保育施設は、クライアントの企業の遊休設備を間借りするため、施設費用も安く抑えることができる。さらに、クライアントからウエイ委託費も請け負うことでき、リノヴェ自体のコストも下げている。もちろん、クライアント側は国からの補助金や助成金などを活用することができ、国の施策としての子育て支援にも一役買っている。保育と英語教育を合わせ、かつ施設運営を担う新しいビジネスと言えるだろう。

オンライン合コンサービス「合コン戦国時代」(サムライ賞)
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リノヴェと同率でサムライ賞を受賞した、斬が提供するには、オンライン合コンサービスの「合コン戦国時代」だ。オンラインゲームにログインするのと同じように合コン相手を全国から探し、マッチングを行う。利用時には、ウェブカメラなどを通じて遠隔で映像と音声を互いに送信しあう。会場として、カラオケ店で実施することで、身分確認を行い実名制や不正利用を防止対策も行っている。

特徴的なのは、映しだされた画面上に、いいね!ゲージや話題に困ったときのための情報を調べる項目がある。また、いいね!ゲージが増えたり減ったりすることで、相手のいまの気持ちの状態を把握することができる。また、ゲージがある一定上下がると、強制的に終了となる。

さらに、合コン終了後にはいいね数や相手に対するフィードバックを行うことができ、次回の反省点として活かすことができる。「恋愛におけるPDCAを回すことで、効果的な合コンを開催することができる」と、斬代表の小田氏は語る。

他にもも、イメージコンサルタントのノウハウをスキーム化し、その人個人に似合った洋服をアテンドする外見診断システムの「パルブライト」や、パノラマ画像を撮影し、パノラマ画像の上にエアタグのように写真や動画、テキストなどの新しい情報レイヤーを乗せて、バーチャルツアーを行うことができる「めでぃパノ」がプレゼンを行った。

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