「日本以外の選択肢があると分かった」世界のスタートアップを取材旅行中の大学生姉妹にベルリンで取材

by Yuki Sato Yuki Sato on 2015.6.22

ベルリンでインタビューに応じてくれた松井姉妹。
ベルリンでインタビューに応じてくれた松井姉妹。妹の松井絵里奈さん(左)と姉の友里さん(右)(筆者撮影)

今年2月に日本に一時帰国した際、スタートアップ関連イベントを通して多くの起業精神あふれる大学生と出会ったのだが、その中でも特に印象に残っていた大学生の姉妹がいる。「ベルリンにも行って、スタートアップを取材します!」と声をかけてくださった松井友里さん、絵里奈さん姉妹だ。

当時、二人はちょうどクラウドファンディングサイトで旅の資金を募集していた頃だった。自分が大学生のときには想像すらしていなかった方法で資金を集め、やりたいことを実現しようとする若い方が今はいっぱいいるんだなあと驚いたのを覚えている。

その後、松井姉妹は無事に目標額の資金を集め、4月には世界のスタートアップ取材旅行を開始。バンコク、クアラルンプール、シンガポール、ジャカルタ、バンガロール、テル・アビブへの取材旅行を経て、6月中旬にベルリンにたどり着いた二人に再会することができた。そんな二人に、改めてクラウドファンディングの件、これまでの旅で感じたことなどを聞いてみた。

クラウドファンディングは「自然な選択」だった

ー今年の1月にクラウドファンディングサイトの READYFOR で資金調達キャンペーンを立ち上げて、80万円という目標金額も無事に達成されていましたよね。クラウドファンディングで資金を集めようと思ったのはどうしてですか?

友里:クラウドファンディング自体は、私にとって身近なものでした。友人がクラウドファンディングを開発する会社でアルバイトをしていたり、NPOで働いている友達がキャンペーンを立ち上げていたのを近くで見ていたので。私の知っている友人で、3人がクラウドファンディングキャンペーンで成功していました。ですので、クラウドファンディングで資金を集めるというのは自然な選択でした。

ー実際にキャンペーンを始めてみて、どうでした?

友里:思ってたりよりも大変でした(笑)。最初はFacebookでシェアしたりすれば資金が集まるかなと思っていたのですが、まず個人的なプロジェクトだったのと、サポートしてくれる知り合いが少なかったので、なかなか資金が集まらなくて。キャンペーン期間は2カ月間だったのですが、最後の二週間はスタートアップ関連のイベントに行きまくって知り合いを広げて、支援者を増やすべくがんばりました。その甲斐があって、なんとか目標金額を達成することができました。

ー旅について聞かせてください。事前にたくさん下調べをしてから訪問されていたと思うんですけど、実際に現地を見て改めて驚かれたことはどんなことですか?

絵里奈:タイに行ったときは、事前に調べていてもスタートアップ関連のイベントが少なく、またイベントがキャンセルになるなど、本当に取材できるのか不安になることもありました。ですが、実際に行ってみるとしっかりコミュニティが活動していてほっとしました。バンコクではHUBBAというコワーキングスペースに行ったのですが、とても盛り上がっていました。

友里:私は、海外はリスクをとることを恐れない人ばかりがスタートアップに参加しているというイメージがあったのですが、意外とシンガポールやインドなどは安定志向が強いと感じました。

たとえば、インドのバンガロールはテック都市だけれども、若者がスタートアップを始めようとすると親に反対されるケースもあるそうです。リスクテイカーばかりがスタートアップに参加しているわけではなく、政府など権威によるサポートが充実しているからこそ、親の理解も得られるのかなと感じました。

ー日本のスタートアップエコシステムと海外のそれとを比べて感じた大きな違いはどのあたりですか?

友里:アジアもイスラエルも強い危機感が常に生活の中に存在すると感じました。アジアは生活を良くしたいという強い思いがあって、そこから強いエネルギーが生まれています。イスラエルも常に戦争に対する危機感が存在します。

それから、イスラエルやシンガポールは、国としてスタートアップをサポートすることで自国を成長させたいという意欲が大きく、政府も積極的に投資をしています。また、マレーシアは現場と政府の連携がうまくとれている印象を受けました。たとえばシリコンバレーの起業家が政府に雇われて、現地の起業に関わるといった例もあります。

絵里奈:日本のスタートアップイベントですと日本語で開催されて、日本人でないと参加しづらい雰囲気があります。でも訪問した都市はどこもイベントでは英語が使われていて、外国人でも参加しやすいインターナショナルな雰囲気があったのが私は印象的でした。

訪問先で偶然出会ったスタートアップにも直撃取材を開始する松井姉妹
訪問先で偶然出会ったスタートアップにも直撃取材を開始する松井姉妹(筆者撮影)

「なぜ日本なのか」をしっかり考えたい

ー今回の旅を始めるきっかけとなった個人的な動機も読みました。すごく強い気持ちに突き動かされて、旅を始められたのだなと感じました。まだ旅の途中ですが、これまで自分の中で得た気付きや起こった変化はありますか。

友里:私にとっては日本がとても居心地が良かったので、これからも日本を拠点に頑張っていこうと思っていました。ですが今回外に出てみて、もっと多くの選択肢があるんだなと気付かされました。今後もし日本で働くとしたら「なぜ日本なのか」という点を突き詰めて考えてみたいと思いますし、それぞれの場所のメリット、デメリットを検討した上で考えたいと思います。

たとえば、シンガポールで起業すればアジア全土をマーケットとして狙えますし、イスラエルだったらアメリカやグローバルなマーケットを目指せます。ですが、そういうレベルの展望を日本にいるとなかなか描きにくいと思いました。

絵里奈:私は日本にいたときは、姉ほどスタートアップ業界に入っていませんでした。むしろ、NGOとかNPOに興味があって、スタートアップはビジネスに過ぎないと思っていました。ですが、今回の旅を通して色んな起業家と話して、スタートアップも結局のところ「問題解決」を目指していることに気付いて、よりスタートアップが身近になりました。

友里:海外のコワーキングスペースだと、そこで活動しているチームはNPOやスタートアップがごっちゃになっているんです。たとえば、マレーシアの政府支援プログラムは、同じアクセラレータプログラムでスタートアップ何十社、ソーシャル何十社と同時に募集をかけたりもします。

ですが、日本は両者のコミュニティがそれほどかぶっていません。アメリカで生まれたソーシャルベンチャーという考えが他の国にも普及しつつあると感じるのですが、日本だと社会起業はイコールNGOと捉えられがちで。社会起業自体は注目されてますが、スタートアップとは別に捉えられる傾向にあると思います。

ー最後に、まだ旅の途中ですが起業のアイデアは得られました?

友里:実は起業のアイデアはいつもノートに書き留めていまして、そのメモがかなり溜まってきました! 色々なビジネスモデルの話を聞いたり、また各国の生活における不便な点なども感じて、たくさんヒントを得ることができています。

絵里奈:私は今回の取材を通して、起業よりオペーレションが向いているなと気付きました。自分だからこそできる役割を得られるベンチャーに入れたらいいなと思います!

ーありがとうございました。

*二人はこのインタビューの翌日、次の目的地ニューヨークへと旅立って行った。これまでの取材、また今後の取材の成果は、二人のブログ『Girls Hack the World』と日経BP上の連載で見ることができる。

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