共創で実現した「手数料無料化」、クラウドファンディングCAMPFIREはどう動いた Vol.1

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CAMPFIRE代表取締役、家入一真氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載

コロナ禍にあって多数の人たちの助けとなった共創がひとつある。クラウドファンディングだ。

この未曽有の災害は小さな事業者たちを直撃した。政府による支援で一時的な補填は実現したものの、継続的な支援となると別の方法を模索しなければいつかは財源が底を尽きてしまう。

この課題に立ち向かった仕組み、それがクラウドファンディングだった。小さな支援の輪をインターネットで広げ、困っている人たちの助けとなる。2月28日から開始されたコロナウィルスサポートプログラムは幾度かの終了・再開を経て、現在までに約4,000件の事業者をサポートした。結果、支援の輪に加わった人たちは延べ77万人、金額にして89億円もの資金を困っている事業者の手元へと送ることに成功している。

現在なお進行中のこの事態に企業は何ができるのか。CAMPFIRE代表取締役の家入氏を直撃した。

どうしても必要な「手数料」という葛藤

手数料を無料にするコロナウィルスサポートプログラムは、感染症拡大が顕著になった2月末から実施しました。イベントの中止や自粛が増えてきて、アーティストやイベント事業者は悲鳴を上げていました。予約キャンセルの声も多くなって、飲食店や宿泊施設の経営に大きな支障が出始めた頃です(CAMPFIRE代表取締役、家入一真氏)。

クラウドファンディング「CAMPFIRE」を展開する家入一真氏は当時の様子をこう振り返る。年始から勃発した感染症拡大は2月末にイベントの中止または規模縮小の要請へと発展。3月にWHOがパンデミックであると公表してから約1カ月後の4月7日、49日間にも渡る全国的な緊急事態宣言へと繋がっていった。

困っている人を助けたい、けれどもこの状況でビジネスをやっていると勘違いされたくもない。一方で、自分たちにも体力の限界がある。ーー支援側に回ることのできる仕組みを持った多くのスタートアップ、事業者は同じような葛藤を抱えたのではないだろうか。

家入氏たちCAMPFIREのチームもその葛藤を抱えたひとつだった。そもそも家入氏はクラウドファンディングで手数料の高さを伝えてきた経緯がある。支援する人と支援を受ける人が直接繋がれば無駄がない。今回のサポートプログラムで彼らはまず、最初に自分たちが手にするはずの手数料12%をカットした。

問題は決済手数料だ。これは彼らにとっても持ち出しとなってしまう。結果、2月28日に開始した第一弾のサポートプログラムでは、クラウドファンディングを利用した起案者はこの決済手数料を負担しなければならなかった。平均して230万円ほどの支援金が集まったというから、5%とは言え、12万円ほどの手数料が必要になってしまう。決済インフラを維持するための必要なコストであることは理解しつつも、1円でも多く手渡したい側からするとなんとかならないかという思いも出てくる。

当時は完全に無料というわけではなく、サービス手数料の12%を免除する形でどうしても決済手数料の5%は負担をお願いしないといけなかったんです。そんな時、KDDIとして何かできることはないかというお話があって。決済手数料をKDDI側で負担してもらえれば完全に無料で直接、支援者と困ってる人が繋がることができます(CAMPFIRE、家入氏)。

取り組みの反響は予想を遥かに超えていた。2月末に開始したサポートプログラムは期間延長を発表した4月24日時点で10万人が利用、10億円を送金するまでに拡大していた。4月単月の流通総額も昨年同月の4倍となる22億円に跳ね上がった。全て、声を上げた人たちとそれを助けたいと考えた人たちの行動の結果だった。

「77万人と数字で言うとそうなんですが、これってひとつひとつのプロジェクトで困っている人たちの集まりなんですよね。飲食店や宿泊施設、一軒一軒は金額はそこまで多くないです。10万円とか30万円の悲痛な叫びの積み上げなんです」ーー家入氏はこう振り返る。

そして7月、KDDIとCAMPFIRE両社の準備が整い、サポートプログラムの手数料は完全な無料化が発表された。KDDIが決済手数料分の5%を負担することで「支援者と困った人が直接繋がる」仕組みが完成したのだ。10月9日にこのプログラムは再開が決定され、今も両社の支援活動は継続している。

いつかやってくる未来

BASEも分かりやすい成長をしたんですが、これっていつかやってくる未来だったんじゃないかなと思うんです。まさか感染症拡大という形で来るとは思っていなかったけど、日本中の飲食店さんや宿泊施設さん、お土産屋さん、作家さんと言った方々の、これまでオンライン化されてなかった物語や魅力が、一気にデジタル化されてしまった。そもそもスタートアップって構造を変えて、行動・態度変容を起こそうっていうものじゃないですか。でもやっぱり大きな出来事がないと変化は起こせないんじゃないかっていう反省もあります(CAMPFIRE、家入氏)。

CAMPFIREにとって忘れられない出来事がある。

2011年3月の東日本大震災だ。実は彼らのデビューはその直後の6月だった。海外で広がるクラウドファンディングという仕組みをいち早く日本に持ってこよう、そう考えた若かりし頃の家入氏ら数名がこのサービスを立ち上げた。震災のインパクトはあらゆるものの価値観を変えた。日本にもし寄付や互助の文化、デジタル化が始まった起点を示せというならば、間違いなくこの年が選ばれるだろう。しかし、当時のCAMPFIREはまだ無力だった。

いつか必ず互助を必要とする時代がやってくる。実際、その後に国内で発生する自然災害や地域の問題、子供たちの未来、こういった社会課題にクラウドファンディングは活躍してきた。そして今回の感染症拡大だ。家入氏はあの日から約10年の時をかけてこのプラットフォームをどう成長させたかったのか。

大きな視点では、金融包摂を実現する、ということを言い続けています。包摂、つまり包み込む。落ちこぼれさせない。実はKDDIさんから出資をいただく際、最初のアイデアって共に新しい奨学金の仕組みを作ろうというものだったんです。学生や声を上げることが難しい、そういう人たちのために何かできることはないか、と。今回はKDDIさんが大きな支援をしてくれて無料化が実現しました。けど、本当に必要なのは持続可能な仕組みの方です。一部の人がお金をばら撒いても続かないじゃないですか。

クラウドファンディングって新しい再分配の仕組みなんだと思ってるんです。これまでは社会全体が右肩上がりで出版もそう、芸能もそう、例えばヒットした楽曲があって、その垂直に吸い上げたお金を使って新たなタマゴを育成したり、周辺でサポートする方々を支えることができた。各業界でそれぞれ再分配の仕組みができていたんです。けど、少子高齢化による人口減少などで経済が小さくならざるを得ない中で、この再分配の仕組みが崩壊しはじめている。結果的に、従来の金融システムからこぼれ落ちる人がたくさんではじめているんです(CAMPFIRE、家入氏)。

家入氏はそのためにも、CAMPFIREは新しい役割を見つける必要があると語っていた。インタビューの続き、次回はKDDIと共創して渋谷を舞台に展開したクラウドファンディングの話題をお届けする。

関連リンク:MUGENLABO Magazine