本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏の寄稿を翻訳したものです。オリジナルはこちら。

日本の多くのスタートアップは、秋の到来と共にプロダクトやサービスを一斉に展示し始める。日本中でメジャーな展覧会が数多く開催されるからだ。今年の特徴は異業種間の協力や協業だ。世界中でネットワークが拡大していることにより、かつてのニッチは克服できるのかもしれない。特に日本のスタートアップにとっては。

例えば10月2日には、東京都の支援により「江戸・TOKYO 技とテクノの融合展」が東京国際フォーラムで開催された。これまでは、東京の工業地域からニッチな企業が数多く集まっていたが、今年は他の都道府県や海外からの企業と協力している事例が見受けられた。中でも顕著なのは、東京モーターショーでプロダクトを展示する超小型電気自動車の開発企業や、大阪大学の支援を受けたヒューマノイド・スタートアップがセンターステージを飾っていたことだ。
展示ブースで興味深かったのは、農業製品のプロバイダーと小規模な貿易会社間の協力を拡大しようとする福島に特化した企業グループ、あらゆる貿易支援を一括提供する埼玉の企業、横須賀リサーチパークの YRP-IoT が他社と協業し、同社の技術を使った実用例を作り出そうとする試みなどだ。
10月の第2週には、日本の電子産業界が支援する家電イベント CEATEC が開催される。今年の CEATEC は初めての試みとして東京モーターショーと密接に協力しており、また、スタートアップによる挑戦を刺激し IoT アプリケーションを実現することを意図して、野村総研とハッカソンも共催している。電子産業界の協力が得られる宇宙開発を念頭に「Space Robot Contest」も開催している。
一方、日本からは La French Tech Tokyo に参加しているスタートアップもいた。La French Tech Tokyo はフランスのスタートアップを多数日本に招き、彼らの製品を紹介してもらうというイベントだ。参加した日本企業は、健康やスポーツ、環境、そして言うまでもなく製造分野関連の企業によるビジネス拡大への協力に、大きな関心を示していた。フランスの企業は依然として、各社が個別にマーケティングしたがる傾向があり、このような展示会の機会に参加する企業は例外的な存在と言えるだろう。

特に目を引いたのは、東京に CEO Emmanuel Laubriat 氏が足を運んでいた BeAM(Be Additive Manufacturing の略)だ。Laubriat 氏は、自社のエンジニアが数週間後の東京モーターショー参加で来日するのに先立ち東京入りしていた。同社の強みは、3D プリンター用の金属レーザー技術が使えること。風力発電機浮体基礎を販売する IDEOL のような企業や、ロスチャイルドの元バンカーが始めた Natural Grass のようなスポーツ競技・ビル緑化向けの人工芝を販売する企業に積極的にマーケティングをしたいとしている。
イギリス、アイルランド、ノルウェーなどのヨーロッパの企業は、CEATEC を自分たちのプロダクトの実験台と捉えているようだ。IoT はイギリスやアイルランドにとって将来有望な分野であり、ファブレス半導体企業 Nordic Semiconductor に話を聞いたところでは、日本における実地調査は、彼らのアジア太平洋戦略で最優先事項なのだそうだ。アメリカ企業については、業界企業や IEA(国際エネルギー機関)が電気製品の効率向上を実現すべく取り組む(IEA 4E)、低電力消費に関する CPS(サイバーフィジカルシステム)および IoT 基準が、この分野に参入しようとするベンチャー企業に刺激を与えているようだ。
Emotion Intelligence、インクリメンツ、Repro などの日本のスタートアップが La French Tech Tokyo に参加していた。読者への参考情報として、2015 年は「日本フランス・イノベーション年」で、フランス政府は精力的にフランス企業と日本企業のコラボレーションを支援している。
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