本稿は、イスラエル・テルアビブの Samurai House を拠点に事業展開している、Aniwo 共同創業者兼 COO 植野力氏による寄稿である。Aniwo は2014年8月の創業、2015年1月にサムライインキュベートからシードラウンドで10万ドルを資金調達していることを明らかにしている。
Aniwo は現在、イスラエルのスタートアップと投資家のマッチングプラットフォーム「MillionTimes」を運営。月に一度、異なるテーマのイスラエルスタートアップを紹介する「Pitch Tokyo」を開催している。
イスラエルでスタートアップが盛んだということは、日本でもニュースなどで頻繁に報じられるようになったので、ご存じの方は多いかもしれない。
今回は年に一度イスラエルの商都テルアビブで行われる DLD Tel Aviv Innovation Festival(以下、DLD Tel Aviv と略す)の状況についてお伝えしようと思う。
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イスラエルのスタートアップ概況

イスラエルは「スタートアップ大国」と言われる。
年間1,000社近くのスタートアップが創業、5,000億円程度のスタートアップ投資が国内外から集まり、2015年の年間M&A総額は62件で約7,000億円、そのうちの約50件が海外企業に買収されている。
人口約800万人の小国イスラエルが、世界から「スタートアップ大国」と言われる理由は、数値からも見て取れる。
DLD Tel Aviv とは…
そんなイスラエルの商都テルアビブで年に一度、世界中から企業や投資家、政府関係者を集めて開催される〝スタートアップの祭典〟が DLD Tel Aviv だ。Aniwo にとっては、二年前にテルアビブで創業して以来、今回で3度目となる当カンファレンスの模様をお伝えしたい。
開催されたのは9月24日〜29日。地中海の東端に位置するイスラエルは3月から10月まではほぼ雨が降らないため、快晴のもと DLD Tel Aviv は幕を開けた。当カンファレンスは大別すると、メインカンファレンスとそれに関連するサブイベントの二つに分けられる。
メインカンファレンスは、メイン会場である Hatachana Compound という、イギリスの統治下にあった時代の古い駅を改修した野外のショッピングエリアを二日間貸し切って行われる。会場内には、スタートアップ企業のブース出展はもちろん、毎年 Google やMicrosoft、Intel、Facebook といった企業が自社の取り組みやテクノロジーの展示を行っている。今年も同様、Intel や Samsung などの多国籍企業がイスラエルのスタートアップとの交流を目的として、テントやブースでの展示を行っていた。
また、企業だけでなく、スタートアップの誘致や自国の市場の魅力を伝えることを目的として出展している、フランス・ポーランド・ハンガリーといった国々の政府系機関のブースが昨年に比べて増加していた。
メインカンファレンスの他には、以下のようにさまざまな分野でのオープンミートアップやクローズドでのパーティーが開催される。

このようなミートアップイベントは、テルアビブ市内の有名なバーやクラブを貸し切って開催されることが多く、ほぼすべてのイベントがアルコールを交えながらのイベントなので、起業家や投資家などがピッチやざっくばらんな意見交換を行っていた。

夜になると、テルアビブ市内の目抜き通り「ロスチャイルド通り」が、ハードウェア系スタートアップやデザインカレッジの作品展示で埋め尽くされ、DLD Tel Aviv のために集まった人たちだけでなく、地元の家族や子ども、軍人なども未来感あふれる展示に触れていた。
過去最大人数となった日本人ビジネスパーソンの訪問
昨年以前と比べて特筆すべきことの一つは、日本人ビジネスパーソンの訪問が過去最大規模だったことである。2015年の安倍首相のイスラエル訪問以来、イスラエルのスタートアップ企業の日本進出や、日系企業によるイスラエル企業への投資・買収が増えたことにより、日本国内でもイスラエルに対する印象や姿勢が変わってきている。
数は多く無いものの、以前から商社や製造業、投資家を中心に、日本企業はイスラエルでビジネス活動を行っていたが、今年の DLD Tel Aviv には、特に IT や製造業、インフラや金融などさまざまな業界から100名以上の日本人のビジネスパーソンを迎えることができた。大阪市や横浜市、在イスラエル日本国大使館の連携で、日本の起業家と現地ビジネスパーソンの交流イベントが開催されたり、イスラエルを訪問した日系ビジネスパーソンの交流パーティーが在イスラエルの大使公邸で行われたりするなどした。我々が二年前に活動を始めて以来、最大人数の日本人をイスラエルで目にすることになった。
IoT や機械学習、セキュリティやヘルスケア、農業などの領域で高い技術を保有し、世界を圧巻するスタートアップを多く輩出するイスラエルと、多くの企業資産や産業インフラを保有する日本。これまで縁の遠かった両国間のビジネスの連携がより進むよう、Aniwo も活動を続けていく。
来年の DLD Tel Aviv では、本稿をお読みのあなたのことも、イスラエルで「ようこそ」とお迎えしたい。
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