スタートアップの祭典DLDで訪れた起業大国イスラエル【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2015.9.21

shota-morozumi_portrait本稿は、サムライインキュベートのアライアンス・ディレクターである両角将太(もろずみ・しょうた)氏による寄稿である。

両角氏は、起業家特化型インタビューブログの運営がきっかけでサムライインキュベートに大学生インターンとして参画、その後正社員として入社。

コワーキングスペース「Samurai Startup Island(SSI)」の立ち上げから運営に携わり、主に、イベントの運営および大企業とのアライアンスを担当している。年間200イベントを開催し、そこで形成した繋がりから20以上の企業とアライアンス関係を構築している。社内での新規事業立ち上げを担当し、海外展開中。


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9月初旬、イスラエルのテルアビブでは、DLD Tel Aviv という大規模なスタートアップの祭典が開催された。期間中には、世界からスタートアップや事業会社の関係者が2万人以上、この国をを訪れた。日本からは、 ソニー、ソフトバンク、朝日放送、ネクスト、ニフティを始め、総勢20社ほどの日本企業がイスラエルを訪問した。私は〝日本使節団〟の代表者として、このレ ポートを残したいと思う。

イスラエルが「STARTUP NATION」と呼ばれる理由

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これまでの報道でご存知の方も多いと思うが、イスラエルは起業大国だ。国の面積は四国程度と小さく、人口がたったの800万人であるにも関わらず、 年間800社ほどのスタートアップが生まれており、世界一の起業率を誇る。また、海外からのスタートアップ投資額(国民一人当たり)は世界一で、 M&AやR&Dをイスラエルで行う大企業が圧倒的に多い。

この国から生まれた有名スタートアップの成功事例には、USBメモリを初めて開発した M-Systems(SanDisk が買収)、ファイヤーウォールを開発した Checkpoint、Kinect の技術を開発した PrimeSense(Apple が買収)、Facebookの顔認識システムで使われているFace.com(Facebook が買収)などが挙げられ、彼らは数多くの技術を生み出してきた。

スタートアップの祭典「DLD Tel Aviv」

DLD Tel Aviv の期間中は、テルアビブ市内のいたる所で、ミートアップや著名経営者によるカンファレンス、パネルディスカッションなどが行われている。テキサスで毎年3 月に開催されるSXSWに似ていると言えるだろうか。テルアビブの中心街にあるロスチャイルド通り(Rothschild Blvd)では、屋外であるにも関わらず、スタートアップの出展ブースが数百社ほど立ち並ぶ。雨があまり降らないイスラエルならではの取組みだ。

そのロスチャイルド通りでは、IoT、ロボティクス、人工知能、VR、生体認証、画像認識などの事例を紹介するブースが多く見られた。また、イスラエルは、ドローンの分野では世界最先端の国であり、それらのプロダクトもいくつか出展されていた。

一方、カンファレンス会場では、Fintech、セキュリティ、アドテク、ビッグデータなどをテーマとしたものが多かった。これらは、いずれもイスラエルが強いと言われる分野である。

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Open Startup

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DLD期間中、テルアビブ中心部に位置するスタートアップのオフィスへは、自由に出入りできるようになる。イベントとあわせて実施される「Open Startup」という企画だ。弊社の Samurai House も2日間 Open Startup をしていたが、予想以上に多くの参加者が訪れ、23時以降になっても見学に来る人が途絶えなかった。

テルアビブ市内を歩く家族やカップルなど、一般市民までもがスタートアップの技術に興味を持ち、スタートアップと触れ合っていた。これがスタートアップ大国であるイスラエルの強さなのかもしれない。国民全体がテクノロジーに対して感心を示しているように感じた。

欧米大手主導のイスラエル・スタートアップ包囲網に、アジア企業も参入

多数の欧米大企業が DLD にスポンサードしており、テルアビブ市内各地でイベントを開催していた。特に、イスラエルでのオープンイノベーションとして Acceleration Programを実施している IBMVISAMasterCardGoogleMicrosoft などは、ピッチイベントやミートアップを開催するなどして、より多くのスタートアップを取り込むべく存在感を誇示していた。

これまで、大企業はM&Aや投資を繰り返すことで、イスラエルのスタートアップに関わってきたが、大企業にとって、自らソーシングを行い、スタートアップと交渉し、意思決定に至るまでのステップを繰り返すには、相当な労力が必要である。

そこで、大企業は Acceleration Program という形で、インバウンドでスタートアップを集めるようになった。イスラエルで優秀なスタートアップを集める鍵は、ユダヤ人同士のネットワークであり、欧米の大企業はプログラムの実施を通じて、強固なコミュニティを形成し始めている。

最近では、イスラエル政府がアジア各国への呼びかけを強化しており、Samsung が Acceleration Program を始めるなど、イスラエルでのオープンイノベーションを検討する韓国や中国の企業が増加傾向にある。

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日本企業とイスラエルのスタートアップの交流を深めることができた

今回、イスラエルツアーを企画した理由は、日本企業とイスラエルのスタートアップ間の交流が非常に少なかったからだ。欧米の大手企業によるイスラエル・スタートアップ買収が続々と起きているのとは対照的に、イスラエルのイノベーションを日本は取り込めていない。実際に現地に足を運んでもらわないと、日以交流は生まれないのではないかと考えていた。

交流の少なさは、日本人のいくつかの誤解にも起因している。まず「イスラエルが危険な国」だというものだ。紛争が起きているのは一般人が行かない一部地域のみであり、テルアビブは日本と同じくらい安全である。また、「パスポートにイスラエルのスタンプが押されてしまい、アラブ諸国に行けなくなるのではないか」というのも無用な心配で、実際のところ、最近の出入国審査では、パスポートにイスラエルのスタンプは押されなくなっている。

これらの理由が重なり日本人がイスラエルに赴くことは非常に少なかったので、今回ほど日本企業群が一同にイスラエルへ訪れたことはほとんど例がなく、現地でも話題になっていたようだ。

<参考記事>

DLDに参加して感じたこと

イスラエルのスタートアップは、シリコンバレーのそれとは少し方向性が異なる印象を受けた。シリコンバレーではビジネスモデルを元に起業することが多いが、イスラエルはテクノロジーベースの起業が多いようだ。

また、DLD に来ているスタートアップたちと話してみると、ビジネスモデルやサービスのレベル感としては、日本のスタートアップと大差は無いように思える。一方で、「危機感の差」が大きいと感じた。イスラエルをはじめ、スタートアップの国として取り沙汰されるトルコや韓国などは、そもそも人口が小さく、グローバル市場に出ないかぎり、シュリンクしていく市場の中で成長を続けるのは困難だ。スマホの普及により、質の高いアプリはどの国でもインストールされるような時代になった今、もはや国境は関係なくなっている。日本のスタートアップも国内市場だけを見ているのではなく、早急にグローバル進出すべきだと感じた。

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10月1日に、両角氏が Samurai Startup Island で DLD に関する報告会を開催するとのこと。関心のある方は、こちらにも足を運ばれたい。

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