AI業界のハンドルは中国が握っているのか?(WebSummit創業者Paddy Cosgrave氏による寄稿)

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Paddy Cosgrave 氏は、Web Summit、RISE、Collision、Surge、Moneyconf、f.ounders の設立者である。

技術革新の競争が洋の東西を問わず繰り広げられているが、こと人工知能(AI)はその最前線だと言える。そしてこの分野では、中国の影響が高まっている。

ビッグデータと IoT(モノのインターネット)の力を最大限に引き出す上で、AI は鍵を握ると見られている。AI の力を借りることで的確な判断を素早く下せるようになり、IT を活用したスマートシティ、自動運転車、パーソナライズされた医薬などをはじめ、様々な商業用途での利用がまもなく可能になるだろう。AI は地球規模で多様な問題を解決する能力を秘めている。

現在 AI 分野は急成長期の真っ只中で、プロセッサの設計改良のほか、マシンラーニング、ディープラーニング、自然言語処理といった技術が日々進歩している。2013年以降、中国は AI の研究に多額の投資を行っており、努力が報われる形で素晴らしい成果が生まれている。AI のコア分野において、中国のパイオニア AI 企業らはすでに著しい発展を見せている。

ほんの一例を挙げよう。中国の大手テック企業(Baidu、Didi、Tencent)は、各社独自の AI リサーチラボを立ち上げている。とりわけ Baidu は、ディープラーニングにおいて世界レベルでの指導的影響力を持つよう努めており、その地位を確固たるものにすべく、歩を進めているところだ。Baidu はシリコンバレーに AI ラボを持ち、そこでは200人の開発者がライバルとなるアメリカ企業各社に対抗すべく、自動運転車、物体認識のライブラリ、表情や自然言語の認識ソフトなど先駆的な開発を行っている。

Tencent も似た形で、いくつかの中国トップレベルの科学技術大学に対して奨学金を提供している。学生らが WeChat の膨大なデータベースにアクセスできる一方で、Tencent 側としても優れた研究成果や優秀な卒業生らを確保できるメリットがある。

政府レベルでさえ、研究への投資額は年を追うごとに倍増している。中国は数十億米ドル規模のイニシアチブを準備していると言われており、壮大なプロジェクト、スタートアップの資金調達、そして学術的な研究の分野において、国産 AI の優位性を高める狙いがある。例として、中国湖南省のあまり名の知られていない湘潭市という市は、AI に20億米ドルを支出すると宣言した。蘇州と深セン市は、合計で最大100万米ドルとなる AI の助成金を共催している。こうした投資を含め、AI 開発の奨励の目的で数十億米ドルが投じられている。

失墜するアメリカ

初期の AI 研究の大部分をリードしてきたアメリカだが、こうした事態の進展に無知だったわけではない。オバマ政権もあと数ヶ月という時期に、アメリカ政府は2つのレポートを発行した。アメリカの AI 革命の世界的リーダーとしての地位に揺らぎが出ているとし、この領域で中国が一大勢力として台頭しつつあることを憂慮する内容だ。

AI のポテンシャルを解き放つべく、これらのレポートではマシンラーニングの研究費用を増補し、同時にアメリカ政府とテック業界の代表企業らとのコラボレーションを拡充するよう提言している。だが、こうした努力も虚しく、2017年5月にニューオーリンズで開催されたテックカンファレンス Collision で、会議に出席したテック企業設立者、CEO、投資家、そして開発者ら1,268人を対象として行われたアンケートでは、アメリカのエコシステムに広がる AI の影響について、政府が「致命的に準備不足」だとした人は91%に上った。

トランプ政権は2018年度予算で、米国科学財団からの AI 開発プログラムへの出資について、10%の削減を盛り込んだ。前政権が支出額の増大を約束したにも関わらずだ。

対照的に中国ではアメリカの AI スタートアップへの興味が高まっている。リサーチ企業の CB Insights の調査では、アメリカのスタートアップの投資ラウンドに対して中国国内から拠出される額は、2016年には100億米ドルに迫る数字になっている。AI 分野でも、最近の調査は中国企業は51社ものアメリカの AI 企業に投資しており、合計額は7億米ドルに及ぶ。

東洋と西洋が出会う場所

海外からの投資はアメリカ企業への信任票と受け取ることもできるだろう。しかし、テック業界をアメリカが独占しているという自信は明らかに揺らぎを見せている。

今月香港で開催された RISE 2017 に先駆け、我々は投資家を対象にアンケートを実施した。アメリカのテック業界への対抗馬を尋ねたところ、中国だとする回答が28%に上った。これは注目に値する割合であり、中国の影響力が継続的に高まっていることを示している。さらに驚くべきことに、回答者の50%は、テック業界におけるアメリカの独占的な地位がたった5年以内に中国によって覆されるだろうと答えた。

ともあれ中期的には、アメリカで起こるイノベーションに対しては用心するのが賢明であろう。アメリカが歴史上強みを見せてきたのは、彼らが軌道修正に長けているからだ。私個人としても、彼らが新しい進路を見つけると信じている。しかし現在のところ、ハンドルを握っているのは中国なのだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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